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冬至と柚子湯

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「なんか暗くない?」

「真っ暗だね、なんだろう」

辺りは黒い雲に覆われて、陰湿な空気が漂っている。

今日は冬至。12月22日。

一日のうちで、一番日照時間の短い日。

でも、日食でもあるまいにこの暗さは……。

明日からは、日照時間も少しずつ伸びる。

ここのところ、金縛りもなく過ごしていたが、

闇の勢力がなくなったわけではないので、

いつまた、襲われるかわからなかった。

そんなものに襲われた日には、

特殊な能力をまったくもたないこの家族は、

どう対処するのだろう。

そんなことを考えながら、

皆既日食のようなこの状態を眺めていた。


僕はもふもふのジュリアーノ。マルチーズなの。

かつてママに飼われていた。

今はお空のお星様。

ママを守るためにそばにいる。


古代では、冬至を境に日が伸びるので、

太陽神の復活とも考えられていた。

この真っ暗な中、何事もなければいいのだが……。

しばらくして、未来お嬢ちゃんの泣き声が聞こえる。

しかも、その声はいつもより激しいものだった。

「どうした?」

ママは慌てて、とんで行った。

「あらー」

見ると、未来おじょうちゃんは血まみれ。

床にもぼたぼたと血の滴り。

「どうしたの、なにがあったの」

未来お嬢ちゃんはびっくりして、声も出ない様子。

ママは、優しく抱きしめている。

頭を撫でている。

少し落ち着いたようなので、濡れたタオルを取りに行く。

顔もかなり血だらけ。

「本当にどうしたの」

「にいにが、にいにが」

「え」

「にいにがどうかしたの?」

「にいにが、にいにが……」

にいにを見に行くと、眠っている。

「にいに、眠ってるけど」

「さっき起きてきて、いきなり蹴ったの」

「ええええええええ」

とりあえず、お嬢ちゃんの顔や手についている血を拭いた。

洋服もかなり、血まみれなので着替えさせる。

「どうしたのかしらね。眠ってるけど」

ママは心配そうに、未来お嬢ちゃんの顔を覗き込んだ。

鼻血のようだ。

どこかが切れたり怪我したりはしていなかった。

「蹴って、すぐに自分のベッドに行ったの」

「何かしたの?」

「ううん、いきなり来て、何も言わないで蹴ったの」

少年はというか、青年は、以前にも夢遊病のようになって、

5階から落ちたことがある。

でも、その時には、自分の処方されている睡眠薬と、

ママの置き忘れたお酒を一緒に飲んだからなのだが……。

何時間かして、青年が起きてきたので、

「未来をどうして蹴ったの?」

と、聞くときょとんとして

「僕、そんなことしてないよ」

「でも、未来はお兄ちゃんがいきなり起きてきて、

何も言わないで蹴ったって」

青年はしばらく静かに聞いていたが、

「僕は朝からとてもいらいらしていて、

だから頓服を飲んだんだけど、

それでも収まらないから、

睡眠薬を飲んで寝たんだけど」

「記憶がないのかな」

「未来は嘘をつくような子じゃないから」

「そうだね」

「謝って来るヨ」

青年は未来お嬢ちゃんのところに行き、

記憶にないけどごめんなさいをした。

未来お嬢ちゃんも病気だとわかると快く許した。

真っ暗だった辺りも少しずつ明るくなり、

普段通りの日中の明るさに戻った。

「日食だったのかしら、不思議ね」


·.̩₊̣.̩✧*̣̩˚̣̣⁺̣‧.₊̣̇.‧⁺̣˚̣̣*̣̩⋆·̩̩.̩̥·̩̩⋆*̣̩˚̣̣⁺̣‧.₊̣̇.‧⁺̣˚̣̣*̣̩✧·.̩₊̣.̩‧


「今日は、冬至だから、パンプキンパイを作りましょうか」

「はーい」

「じゃあ、僕はカボチャのシチューを作るよ」

「あ、ありがとう」

「じゃあ、わたしはパンプキンプリンを作る」

未来お嬢ちゃんは、お菓子作りがとても大好き。

台所で、わいわい言いながら調理を始めた。

夕方にはすっかり出来上がって、準備ができた。

「釣り場に行って、温泉に柚子を入れて、柚子湯を楽しみましょうか」

「わーい」

3人は、スキップしながら楽しそうに釣り場に向かった。

3人が柚子湯を楽しんでいると、

ちらちらと粉雪が降ってきた。

お風呂の中なので、寒くはなかった。

茶色の地面がみるみる真っ白になって、

とても素敵な冬景色になっていく。

風情のあるその光景に、子供たちも圧倒されている。

柚子の香りがほのかに漂っていい感じ。

「きれいね」

「すてきねー」

吐く息も白く、温泉の湯気と雪が心の中まで癒してくれる。

「ずーと入っていられそう」

「でも、おなかすいたー」

「ママ、福島の温泉を思い出すね」

「そうね、楽しかったよね」

「うん、つららでちゃんばらした」

「うんうん」

思い出話に花が咲く。

優しい気持ちになった少年は、

「未来、今日はほんとにごめんよ」

「間違いと基地外はどこにでもいる」

「こらー」

お湯をかけあってる。

仲のいい兄弟でよかった。

ほかほかになって、家路に向かう家族。

どんな時も助け合って、成長しあえるといいね。

変化し続けられるといいね。

心から祈ってます。


読んでくださってありがとうございます。











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