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僕はもふもふのジュリアーノ 5階から落ちた少年
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ピンポーン
夜中、突然玄関のチャイムが鳴る?
ママはパパさんと一緒に音楽聞いてたのかな。
ここは池袋のマンションの5階。
ドアの油が切れていて、開けるとギーと音がする。
二つお部屋を借りているんたけど、隣から出てきた音はしなかった。
「誰だろう」
ママは、魚眼レンズからのぞいた。
少年が立っている。
ママは何も知らないでドアを開けた。
「ちょっと話があるんだけど」
少年は、困惑した顔で、ママに言う。
となりの部屋に行き、少年の話を聞こうとした。
「あの、これ」
見ると、血が……。
ズボンを脱がせ、傷を見ると、ぱっくりと割れ、おびただしい量の血が。
バスタオルを敷き、焼酎で消毒。
腿の付け根で止血し、
そのまま、レインコートを着せて、タクシーを拾いに行った。
こんな夜中に、救急車は呼べない。
事件性があるのかないのかもわからなかった。
とにかく病院へ。
「救急車はいらないのですが、外科のある当番医は?」
119番で病院を確かめる。
搬送先が決まった。
少年を載せ、病院へ。
パパさんには、
「なんかよくわからないけど、けがをしているみたいなので、
病院に連れていきます」
報告をして、お嬢ちゃんの世話を頼んでいった。
病院について、医者と一緒に話を聞けば、
「5階から落ちた」
という。
「えええええええええええ」
「ええええええええええ」
少年は、処方を飲んだ後、喉が渇いて、
ママが忘れていった机の上のジュースを飲んだという。
「ああああああああ」
その中には、純という焼酎がジュースで割って入っていた。
ママは、飲まずに忘れていた。
「うわーー」
薬と、お酒の相乗効果。
少年は意識がなくなって、多分ベランダに出た。
そして、そこから落ちた。
それはね、単なる事故に思えた。
ここから、とんでもない戦争が待っているなんて思わなかった。
間違えて、飲んだんだから。
ここからが少年の訳の分からないところ。
少年は歩けないのでしばらく、車いすだった。
ママは、毎日散歩に連れて行き、
少年といろんな話をした。
とりあえず、命があってよかった。
ところが、少年は薬とお酒の混じったあの不思議な感覚を
体が覚えてしまったみたい。
歩けるようになってからも、ちょくちょく乱用を始める。
それはもう、まさにアル中。
どんなに隠しておいても見つけて飲んでしまう。
中2病。
せっかく積み上げてきた、基本的な生活もみじんに砕かれていく。
また、お酒を買いたいために、パパさんのお財布から、
盗んでいく。
パパさんは悲しそうに、金庫を買ってきた。
パパさんと、ママと、少年の分。3個。
そこに、薬とお金を保管するように。
ところが少年は、薬が欲しい。お酒が欲しい。
少年は工具でこじ開けようとする。
パパさんと少年の壮絶な戦いが始まる。
罵声、暴力、いつ殺人事件になってもおかしくない状態。
しかたなく、ママは少年を自助グループに連れていく。
まさか、日本最年少のAAメンバーがわが子なんて……。
それでも少年のお酒は止まらず、パパさんとの仲もどんどん険悪に、
マンションの壁に穴が開く。
泣く、わめく。
「僕なんか生まれてこなければよかった」
「ママを困らせるためにうまれてきたようなもんじゃないかーーー」
悲痛な叫びだった。
かつて、ママも親にそう思っていた。
愛したいのに、産んでよかったとほめられたいのに、
正反対のことばかりしてしまう自分。
どんどん嫌いになっちゃうよね。自分。
ママさんは、AAメンバーと相談して、少年をリハビリ施設に入寮させた。
これ以上、パパさんと一緒にする訳にはいかなかった。
だって、パパさんが少年の頭をマグカップで殴ったから。
それは、ママからすれば絶対に許されないことだった。
しつけのために、鞭を使うならわかる。
キチンと理由を説明して、木刀もありだろう。
しかし、感情に任せて、マグカップは……。
ママは、自分の親からかなりきついしつけを受けている。
一番優しいやつが、正座。
柳のむち。桜の木刀。樫の木刀。
でも、感情に任せて叩かれたのは一度だけ。
ほとんどちゃんと説明されてしつけられた。
感情に任せてそういうことが行われるなら、
物理的にしばらく距離を取ったほうがいいと思ったのだ。
それにしても、少年の運のいいこと。
びっくりするよね。
5階から落ちのに、骨が折れてない。
頭も打ってない。
すばらしい、強運の持ち主。
神様に感謝。
少年が入ったところは、大人の男子ばかりのところ。
ここで、しばらく時を過ごせばいい。
這い上がっておいで。君ならできる。
ママは信じているよ。
読んでくださって有難うございます。
夜中、突然玄関のチャイムが鳴る?
ママはパパさんと一緒に音楽聞いてたのかな。
ここは池袋のマンションの5階。
ドアの油が切れていて、開けるとギーと音がする。
二つお部屋を借りているんたけど、隣から出てきた音はしなかった。
「誰だろう」
ママは、魚眼レンズからのぞいた。
少年が立っている。
ママは何も知らないでドアを開けた。
「ちょっと話があるんだけど」
少年は、困惑した顔で、ママに言う。
となりの部屋に行き、少年の話を聞こうとした。
「あの、これ」
見ると、血が……。
ズボンを脱がせ、傷を見ると、ぱっくりと割れ、おびただしい量の血が。
バスタオルを敷き、焼酎で消毒。
腿の付け根で止血し、
そのまま、レインコートを着せて、タクシーを拾いに行った。
こんな夜中に、救急車は呼べない。
事件性があるのかないのかもわからなかった。
とにかく病院へ。
「救急車はいらないのですが、外科のある当番医は?」
119番で病院を確かめる。
搬送先が決まった。
少年を載せ、病院へ。
パパさんには、
「なんかよくわからないけど、けがをしているみたいなので、
病院に連れていきます」
報告をして、お嬢ちゃんの世話を頼んでいった。
病院について、医者と一緒に話を聞けば、
「5階から落ちた」
という。
「えええええええええええ」
「ええええええええええ」
少年は、処方を飲んだ後、喉が渇いて、
ママが忘れていった机の上のジュースを飲んだという。
「ああああああああ」
その中には、純という焼酎がジュースで割って入っていた。
ママは、飲まずに忘れていた。
「うわーー」
薬と、お酒の相乗効果。
少年は意識がなくなって、多分ベランダに出た。
そして、そこから落ちた。
それはね、単なる事故に思えた。
ここから、とんでもない戦争が待っているなんて思わなかった。
間違えて、飲んだんだから。
ここからが少年の訳の分からないところ。
少年は歩けないのでしばらく、車いすだった。
ママは、毎日散歩に連れて行き、
少年といろんな話をした。
とりあえず、命があってよかった。
ところが、少年は薬とお酒の混じったあの不思議な感覚を
体が覚えてしまったみたい。
歩けるようになってからも、ちょくちょく乱用を始める。
それはもう、まさにアル中。
どんなに隠しておいても見つけて飲んでしまう。
中2病。
せっかく積み上げてきた、基本的な生活もみじんに砕かれていく。
また、お酒を買いたいために、パパさんのお財布から、
盗んでいく。
パパさんは悲しそうに、金庫を買ってきた。
パパさんと、ママと、少年の分。3個。
そこに、薬とお金を保管するように。
ところが少年は、薬が欲しい。お酒が欲しい。
少年は工具でこじ開けようとする。
パパさんと少年の壮絶な戦いが始まる。
罵声、暴力、いつ殺人事件になってもおかしくない状態。
しかたなく、ママは少年を自助グループに連れていく。
まさか、日本最年少のAAメンバーがわが子なんて……。
それでも少年のお酒は止まらず、パパさんとの仲もどんどん険悪に、
マンションの壁に穴が開く。
泣く、わめく。
「僕なんか生まれてこなければよかった」
「ママを困らせるためにうまれてきたようなもんじゃないかーーー」
悲痛な叫びだった。
かつて、ママも親にそう思っていた。
愛したいのに、産んでよかったとほめられたいのに、
正反対のことばかりしてしまう自分。
どんどん嫌いになっちゃうよね。自分。
ママさんは、AAメンバーと相談して、少年をリハビリ施設に入寮させた。
これ以上、パパさんと一緒にする訳にはいかなかった。
だって、パパさんが少年の頭をマグカップで殴ったから。
それは、ママからすれば絶対に許されないことだった。
しつけのために、鞭を使うならわかる。
キチンと理由を説明して、木刀もありだろう。
しかし、感情に任せて、マグカップは……。
ママは、自分の親からかなりきついしつけを受けている。
一番優しいやつが、正座。
柳のむち。桜の木刀。樫の木刀。
でも、感情に任せて叩かれたのは一度だけ。
ほとんどちゃんと説明されてしつけられた。
感情に任せてそういうことが行われるなら、
物理的にしばらく距離を取ったほうがいいと思ったのだ。
それにしても、少年の運のいいこと。
びっくりするよね。
5階から落ちのに、骨が折れてない。
頭も打ってない。
すばらしい、強運の持ち主。
神様に感謝。
少年が入ったところは、大人の男子ばかりのところ。
ここで、しばらく時を過ごせばいい。
這い上がっておいで。君ならできる。
ママは信じているよ。
読んでくださって有難うございます。
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