かあさんのつぶやき

春秋花壇

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どうなってんの?

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和俊の部屋は薄暗く、陰鬱な雰囲気が漂っています。窓から差し込む光は少なく、部屋全体が静寂で包まれています。和俊が座っている机は、散らかった書類や電子機器でいっぱいで、その周りにはぼんやりとした光が反射しています。

富子の声が響き渡る中、部屋の中には強い緊張感が漂っています。和俊は机に集中し、富子の叫び声に耳を傾けることなく、無関心な態度を崩しません。その冷たい態度が部屋全体に広がり、空気が重くなっています。

富子の表情は苦痛に歪んでおり、彼女の声は絶望と怒りに満ちています。彼女の叫び声は部屋の中に響き渡り、その声が壁にぶつかって反響しています。しかし、和俊はまるでその声を聞こうとしないかのように、無関心であり続けます。

部屋の中には強い不安と混乱が漂っており、富子の心の中も同様です。彼女は息子の反応に失望し、彼の無関心さに対する怒りと悲しみが心を支配しています。部屋の中の雰囲気はますます暗くなり、深い絶望が漂っています。


どうなってんの?


「いたい、いたいよー、たすけてーー」

富子69歳は、声を限りに叫んでる。

1メートルも離れない所にいる和俊は、座ったまま、パソコンをカチャカチャ。

小説を書いているのだろう。

彼の過集中については、彼の主治医からも説明を受けていた。

だけどこんなにそばにいるのに。

手を伸ばせば届きそうな距離なのに。

こっちを見ようともしない。

「もう、うるさいな、なに」

足を延ばして、皿の上のアジフライを食べようとしたとたんに

まるで地獄の底から手が出てきて、ひっつかまれてるみたいに引きずり込まれていく。

「たすけてー、いたいよー」

「もう、うるさいな、だまれ」

「足がからまってるの、みてー、いたいの」

「うるさっていってんだろう」

自分の足がどうにかなってしまったという驚きと、息子の和俊46歳のあまりにも冷たい態度にどうしたらいいかわからなかった。

さっきまで、富子の訪問看護師さんがギターを持ってきてくれて、

楽しく「オーマイリトルガール♪」とか一緒に歌っていたのに……。

自分の頭の中では、破れたバスタオルが足に幾重にも巻き付いてる感じ。

ところが、体制を変えて足元を見ると何もなかった。

絡みつきそうな太めのひももない。

わたしの頭はどうにかなってるのだろうか。

そして、和俊のこの態度は?

「もう、うるさいんだからー」

相変わらず、痛いといったところを見ようともしない。

立ち上がってこちらに来ることもなかった。

まじ、壊れてる。

じゃなくてー。

それは人間の反応ですか?

って思っちゃう。

どんどんどん、窓をたたく音がする。

「だいじょうぶー?」

「あ、ありがとうございます」

「だいじょうぶですーー」

大家さんがすっとんでくるほど、騒いだんだよね。

しかも、何回も叫んだ。

その度に、和俊は、

「もうーー、うっさいなー」

普通、これだけそばで家族が叫んでいれば助けようとするだろう。

様子を見て、自分が手に負えないと思えば、レスキューとか消防車とか呼ばない?

どうなったんの?

和俊の対応は?

そんな病気があるの?

しかも、終わってからも延々と自己正当化してるし。

彼の言い分を聞いてみよう。

「お父さんから、かゆいって夜中に泣いてもけとばされるだけで優しくなんてしてもらえなかった」

「施設でも、うるさいって怒鳴られるだけだった」

「ママはそんな風にしてないでしょう?」

「覚えてないんだよー。どうしたらいいかわからなかったんだよー」

「和俊と森林公園に行って、スリップしたとき、ママは優しくしなかった?」

「だから、覚えてないんだっってばー」

彼は、統合失調症、ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)。反社会性パーソナリティ障害。

まともな反応を求める富子の方が変なのかもしれない。

まじ、わけわかんねー。

もういいからどっか行けよ。

いればやっぱあてにしちゃう。

「はーーーーーーーーーーーー」

富子は今、要介護1。

訪問看護が週に2回とヘルパーさんが週に1度きている。

要介護2になっても和俊がいるからと思っていたが、

どうやら考えを変えるしかないみたい。

それにしても、なんだったろう?

幻覚でも見たのかな?

とりあえず、いざとなったとき、和俊が助けにならない時もあるということだけを銘記し、主治医と相談してみよう。

事実は小説よりも奇なり。


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