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86 子育て失敗
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富子視点。
沼田 和俊(ぬまた かずとし)45歳。
母 小宮 富子(こみや とみこ)68歳。
二人は別々な処に住んでいる。
自転車で15分くらいの距離だ。
息子、和俊はここ一カ月以上、食欲がなくて、
病院から経腸栄養剤を処方してもらっている。
250mL/缶で375kcal。
1日に7本飲めば、必要なカロリーを摂取できる。
最近、彼は母の作った料理をほとんど食べない。
富子は何とか食べてもらいたいと、ご飯を炊いたり、
お鍋にしたり、煮込みうどんを作ったり工夫するのだが、
食いつくし系かと思うほど、食欲旺盛だった和俊はまるで別人のように
食事を拒む。
彼は今、発達障害の処方を始めたようで、どんどん薬は増やされて行く。
そして、前よりも寝てる時間が増えてしまった。
歯も磨かなければ、お風呂にも入らない。
一週間に一度はいればいい方だ。
真夏の暑い日にさえそういう状態なので、涼しい季節には1カ月に一度のこともある。
子どものころには、お風呂が大好きで、買った家にソーラーシステムを付けるくらい
お風呂好きだったのに。
温泉やキャンプやサイクリング、ハイキングなどもよく行っていたのに、
いつのまにか、外に出ることさえなくなって、散歩に行くこともラジオ体操に誘っても
買い物さえ行くことはほとんどない。
そんな息子の変貌に富子は、
(できない事ばかり探しちゃダメ)
と、ポジティブにとらえようとするのだが、
そもそも発達障害の薬を飲まなければいけない程の状態なのだろうか。
アルファポリスで、一緒に小説を書いているのだが、
彼の集中力は素晴らしい物だった。
処方が変わったここ2週間は全く書いていない。
せっかく、小説投稿サイトで彼にしか書けない物を
アウトプットできるようになったのに、どうして潰すのかな?
それにしても彼の発想はとても奇異だ。
サイコパス?ソシオパス?
例えば、鰤のあらを入れたお鍋を二人で食べていたのだが、
目の周りのコラーゲンたっぷりの部分が彼の丼の中に入った。
彼は、それを気味の悪い言い方で表現する。
富子は食べ終わっていたから、その話を眉をひそめながら聞いていたのだが、
食事中だったら多分一緒にいる事さえいやだっだろう。
誰かに食事を作ってもらう時、絶対的な信頼が必要なんだね。
そんなこと考えもみなかった。
だって、ほら、お肉だって何のお肉なのか全くわからないのだから……。
流行りの三ツ星レストランだって、毎日一人のお客様が消えたなら
ほらね……。
馬を水飲み場まで、連れていくことはできる。
でも、水を飲むか飲まないかは馬が選び決めるのだ。
40代は男の踊り場だと思う。
一人の男として、花になれる時期。
(かあさんは、君を信じて待つ)
共依存で、一時はお茶を一緒に飲む事も会うことも禁じられていた二人である。
富子が今、子育て失敗と息子の事ばかり気にし過ぎるのも、
自分自身の事が出来ていないからなのかもしれない。
前の方が楽しかったな。
プルーンをあげても、蜜柑をあげても美味しい物を美味しいねとは食べられないのだ。
富子が83歳。和俊が60歳になった時、
「最近、息子が年を取って心配で心配で……」
と、いってそうな感じがするよね。
和俊は、アスペルガー症候群。
富子は、注意欠陥多動性障害。
世界の片隅で、少しでも社会にお返しができたらと今日も生かされている。
ありがとうございます。
沼田 和俊(ぬまた かずとし)45歳。
母 小宮 富子(こみや とみこ)68歳。
二人は別々な処に住んでいる。
自転車で15分くらいの距離だ。
息子、和俊はここ一カ月以上、食欲がなくて、
病院から経腸栄養剤を処方してもらっている。
250mL/缶で375kcal。
1日に7本飲めば、必要なカロリーを摂取できる。
最近、彼は母の作った料理をほとんど食べない。
富子は何とか食べてもらいたいと、ご飯を炊いたり、
お鍋にしたり、煮込みうどんを作ったり工夫するのだが、
食いつくし系かと思うほど、食欲旺盛だった和俊はまるで別人のように
食事を拒む。
彼は今、発達障害の処方を始めたようで、どんどん薬は増やされて行く。
そして、前よりも寝てる時間が増えてしまった。
歯も磨かなければ、お風呂にも入らない。
一週間に一度はいればいい方だ。
真夏の暑い日にさえそういう状態なので、涼しい季節には1カ月に一度のこともある。
子どものころには、お風呂が大好きで、買った家にソーラーシステムを付けるくらい
お風呂好きだったのに。
温泉やキャンプやサイクリング、ハイキングなどもよく行っていたのに、
いつのまにか、外に出ることさえなくなって、散歩に行くこともラジオ体操に誘っても
買い物さえ行くことはほとんどない。
そんな息子の変貌に富子は、
(できない事ばかり探しちゃダメ)
と、ポジティブにとらえようとするのだが、
そもそも発達障害の薬を飲まなければいけない程の状態なのだろうか。
アルファポリスで、一緒に小説を書いているのだが、
彼の集中力は素晴らしい物だった。
処方が変わったここ2週間は全く書いていない。
せっかく、小説投稿サイトで彼にしか書けない物を
アウトプットできるようになったのに、どうして潰すのかな?
それにしても彼の発想はとても奇異だ。
サイコパス?ソシオパス?
例えば、鰤のあらを入れたお鍋を二人で食べていたのだが、
目の周りのコラーゲンたっぷりの部分が彼の丼の中に入った。
彼は、それを気味の悪い言い方で表現する。
富子は食べ終わっていたから、その話を眉をひそめながら聞いていたのだが、
食事中だったら多分一緒にいる事さえいやだっだろう。
誰かに食事を作ってもらう時、絶対的な信頼が必要なんだね。
そんなこと考えもみなかった。
だって、ほら、お肉だって何のお肉なのか全くわからないのだから……。
流行りの三ツ星レストランだって、毎日一人のお客様が消えたなら
ほらね……。
馬を水飲み場まで、連れていくことはできる。
でも、水を飲むか飲まないかは馬が選び決めるのだ。
40代は男の踊り場だと思う。
一人の男として、花になれる時期。
(かあさんは、君を信じて待つ)
共依存で、一時はお茶を一緒に飲む事も会うことも禁じられていた二人である。
富子が今、子育て失敗と息子の事ばかり気にし過ぎるのも、
自分自身の事が出来ていないからなのかもしれない。
前の方が楽しかったな。
プルーンをあげても、蜜柑をあげても美味しい物を美味しいねとは食べられないのだ。
富子が83歳。和俊が60歳になった時、
「最近、息子が年を取って心配で心配で……」
と、いってそうな感じがするよね。
和俊は、アスペルガー症候群。
富子は、注意欠陥多動性障害。
世界の片隅で、少しでも社会にお返しができたらと今日も生かされている。
ありがとうございます。
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