さくらこものがたり

春秋花壇

文字の大きさ
上 下
53 / 122

花泥棒

しおりを挟む
 「うわーー」

心の中で歓声をあげる。

本当は余りの美しさに絶句したまま声も出ない。

春や春。

ほとばしり出る生命の躍動感が、さくらこを喜びにいざなう。

輝き、揺れ、踊り、跳ねる。

リストのラ・カンパネラのように

五感に優しい旋律が軽やかに流れる。

この季節、花に小鳥のさえずりに、水のきらめきに

感動することはとっても多い。

華麗で品があって、すばらしい地球の祭典。

たおやかではんなりとしたその営みに心をゆだねる。


花紅柳緑 かこうりゅうりょく

自然のままの美しさのこと。春の美しい景色のこと。色とりどりの華やかなこと。

花鳥風月 かちょうふうげつ

自然の美しい景色。

迦陵頻伽 かりょうびんが

声の非常に美しいもののや、美しい声のたとえ。

鏡花水月 きょうかすいげつ

はかない幻のたとえ。目には見えるが、手に取ることのできないもののたとえ。

山紫水明 さんしすいめい

自然の風景が美しいこと。山や川の景色が美しいこと。

芝蘭玉樹 しらんぎょくじゅ

才能のあるすぐれた人材や子弟のこと。

晴雲秋月 せいうんしゅうげつ

心に汚れがなく、澄みとおっているたとえ。

「晴雲」は、晴れた空に浮かぶ雲、「秋月」は、秋の澄んだ空の月の意味。

清風明月 せいふうめいげつ

明月と清らかな風の中の静かですがすがしいたたずまい。

雪月風花 せつげつふうか

冬の雪、秋の月、夏の風、春の花ということから四季折々の自然の美しい景色のこと。

また、それを鑑賞して、詩や歌を作ったりする風流な様子のこと。

 千紫万紅 せんしばんこう

色とりどりの花が咲き乱れるている情景。さまざまの色彩のこと。

百花繚乱 ひゃかりょうらん

様々な種類の花が色とりどりにが咲き乱れること。たくさんの優秀な人物が一堂に会する状況。

明鏡止水 めいきょうしすい

曇りの無い鏡と澄んだ水面のように、邪念がなく、安らかに落ち着いた心境のこと。

「明鏡」は一点の曇りもない鏡のこと。「止水」は水が止まって、静かにたたえていること。

落花流水 らっかりゅうすい

落ちた花が水に従って流れるという意味で、過ぎ行く春の景色や物事の衰えゆくことのたとえ。

時がむなしく過ぎ去るたとえ。男女の気持ちが互いに通じ合い、相思相愛の状態にあること。

暮色蒼然 ぼしょくそうぜん

夕暮れになって、徐々にあたりが薄暗くなっていく様子。

「暮色」は夕暮れどきの薄暗い景色のこと。「蒼然」は日暮れどきの薄暗さのこと。

 高山流水 こうざんりゅうすい

高い山と流れる水。すぐれて巧みな音楽、絶妙な演奏のたとえ。けがれのない澄んだ自然のこと。

脣星落落 しんせいらくらく

明け方の星が一つ一つ消えて行くように大切な物が一つ一つ消えて行く哀しさ。

一片氷心 いっぺんのひょうしん

汚れなく、清らかで澄んだ美しい心のこと。

「一片」は、ひとかけら。「氷心」は、氷のように透明な心のこと。

桜梅桃李

桜、梅、桃、李(すもも)のことで、それぞれが独自の能力の花を咲かせること。

 雲外蒼天 うんがいそうてん

試練を努力して乗り越えれば快い青空が望めるという意味。

花天月地 かてんげっち

沢山の花が咲いている大地を月が明るく大地を照らす景色。

雪魄氷姿 せっぱくひょうし

梅の花のこと。 梅の花が雪冬の終わりに、白い花をつけることから、清く澄んだ心を持った人のたとえ。

四季折々の自然の美しい景色のこと。

羞花閉月 しゅうかへいげつ

花も恥じらい、月も隠れるほどの容姿のすぐれた美しい女性のたとえ。

嵐影湖光 らんえいここう

山の精気と湖面の輝きのことで、山水の美しい風景の形容。

柳緑花紅 りゅうりょくかこう

物事が自然のまま、人の手を加えられていないことのたとえで、春の美しい景色のこと。

柳暗花明 りゅうあんかめい

柳は葉が茂って暗く、花は咲きにおって明るいこと。春の景色の美しいことをいう。

さくらこ、12歳。

中学1年生である。

ゴールデンウィーク突入。

まだ一度も授業はない。

「はーい、現代国語の時間終わりってただの国語でいいのか」

なんて、学校ごっこを頭の中で一人でやってみた。

そんな、楽しいさくらこの幻想に、嵯峨のおばあちゃまは

嬉しそうにうなずいている。

昨日の消毒薬のお礼にと、是非にと誘ってくださったのだ。

デモね、今日はね、いつもとちょっと違ったの。

と、いうのも、

ラジオ体操の会場に着く前に、

さくらこは、ハーレーダビットソンをぴかぴかに磨いている人に

出会ってしまったの。

しかもそのバイクは、2pac feat Dr.Dre - California Loveに

出てきそうな妖艶な貴婦人。

ハーレーというよりは、Ducati(ドゥカティ)に似た、

作った人と磨いている人にしか乗れないような気難しいしろもの。

一期一会。

新しい人間関係を作る好い機会。

カメラを持ってきていなかったから、

ラジオ体操が終わって、カメラを取ってくる間も

まだここで磨いているかを確認して、

ラジオ体操が終わるとすぐに家に帰って、

デジカメをとってきたの。

免許のことや運転の仕方、ニュートラの入れ方

色々教わったの。

あのバイクは、彼と作った人しか運転できないそうなの。

バイクのお話も一通り聞かせていただいて、

さくらこの話になり、そのお兄さんは新聞を一年契約で

新しくとってくださることになったの。

もう、すごく嬉しいの。

そしてね、バイク仲間が近くにたくさん住んでいるから、

紹介してくださることになったの。

やっばり、さくらこはついていると思うの。

だってね、新型の感染症が騒がれ始めてからの

さくらこの新聞の拡張の成績は、

何故か倍以上の勢いで増えているの。

おうちにいる人が増えたからなのかな。

そんなルンルンの朝だったの。

で、嵯峨のおばあちゃまが連れて行ってくださった所は、

見事なジャスミンのきめらく滝。

もう、もう、それはそれは、すばらしい香のシャワー。

こんなに幸せでいいのかと思うような

幸せと喜びの香りだった。


燃えたぎる
紅きつぼみに
あなたへの
思いをはせて
ただひたすらに
生命謳歌し
今を彩る
何もたさず
何もひかず
ありのままを受け入れ
純真無垢な
白い花は
むせ返るような
香をまとって
静かに微笑む
雨上がりの雫と共に
キラキラ光る陽光浴びて
穢れなき心
ジャスミンの花
アブソリュート
優雅な時間





すぐそばに、白い藤も咲いていて、

清楚できれいだった。


たくさんのお花の写真を撮って、

にこにこしながら帰ってきたの。

少し、家に帰ってから聖書の勉強をして、

お花を見に、外に出たら、

「えええええええええええええ」

昨日買ってきた培養土がないの。

1000円近くもするものなのに。

しかも、封は空いていたのよ。


培養土
盗まれました><
むごい
何も貧乏人から盗まなくても
お花を盗まないでください
という張り紙もあっちこっちで見るから
多発しているのかも
蒔いた物は必ずその人に帰ってくる
あなたの一番大切にしてるものを
盗まれて
自分の行いの
意味を知るのでしょうか
ぐすん


それを持っていっちゃうなんてすごいよね。

まして、さくらこの家のアパートだって

ほとんどの人は知っている。

「さくらこちゃん、ほんとに幸せになれてよかったわね」

って、ネグレクトされていたさくらこのことを知っている人たちは

口々にみんな喜んでくれるけど、

お花の中にゴミをたくさん投げ入れていく人や

お花を黙って持っていっちゃう人。

ほんとにいろんな人がいる。

許すことが出来ますように。

仕方がないから、とりあえず培養土を買いに行ったの。

かわいいピンクのしゅわしゅわのブーゲンビリアも一緒に買ってきて、

さくらこの機嫌は、何もなかったくらい満たされていたの。

いつもなら、家の前まで自転車を乗って帰るんだけど、

泥棒さんと波長があっていると言うことがいやで、

自転車を降りて神様とお話をしながら帰ったの。

お庭の奥のほうに、男の人が一人入り込んでいるのが見えたの。

何故かここのお花。

黄色の高価なものがなくなるということが何度か続いていたの。

だから、わざと黄色は少し奥においてあったの。

おおぶりのまだポット苗のままのマリーゴールドが置いてあったの。

その男の人は、自転車を止めようとするさくらこには気づかずに、

「ああ、きれい、もらっていこう」

っていったの。

「ええええええええええええええええ」

これどうしたらいい、3鉢のポット苗をその人は手にしたの。

「どろぼうーーー」

っていえばいいの?

公園にはたくさんの人たちがいる。

かわいそうじゃない?

すめなくなっちゃわない?

「神様、知恵をください」

こういう時って、スローモーションになるのね。

時間にすればとっても短い間なんだろうけど、

そして、いつものように切り取ったような情景。

次の瞬間、自分では思ってもいないような言葉を口から発していた。

「お花お好きなんですね」

その男の人は、一瞬、ギクッとしたみたい。

「ああ、まあ」

「今植えようと思ったんですよ、ありがとうございます」

まるで、親切に運んでくださってるみたい。

「はい」

ちゃんとこっちに持ってきてくださったの。

「ありがとうございます」

ニコッと笑って受け取ったの。

男の人はぺこりと頭を下げるとすたすた歩いていってしまった。

「あああああん、こわかったよーーー」






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

同僚くすぐりマッサージ

セナ
大衆娯楽
これは自分の実体験です

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

処理中です...