さくらこものがたり

春秋花壇

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心のゆとり

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「まだまだだなー」

さくらこは、公園を一人散歩しながら、

一人ごとをつぶやいている。

ラジオ体操でよくご一緒しているおばあちゃんが、

昨日、バスに乗ろうと待っていたら、

顔見知りの小学生の男の子が、おばあちゃんのほうに向かって

自転車をこいていたのだが、降りて帽子を取って頭を下げて挨拶してくれた。

おばあちゃんはそれがとても嬉しかったと話していた。

さくらこも、毎日何十人という人に挨拶をするが、

自転車をわざわざ降りて、挨拶をしたことは一度もなかった。

自分では、一期一会と言い聞かせながら、

一人一人に頭を下げ、丁寧に挨拶しているつもりなのだが……。

今まで、一度もわざわざ自転車から降りて挨拶したことは悲しいことになかった。

この差は積み重なると多分でかい。

この差はどこから来るんだろう。

敬意?心のゆとり?

「うーん」

今日の東京は暖かい。

17℃。ラジオ体操のあとから、ずーと雨が降っていた。

お花屋さんで、ブルーデージー、勿忘草、ネメシスを買ってきたので、

昼間、植え替えたかったのだが、雨が激しくて無理だった。

これから、夏に向けて、青いお庭を目指す。

ブルースター(オキシペタルム)も、少し切り戻しをして、

肥料を上げたので、もう少ししたら咲き始めるだろう。

なんだかわけのわからない芽もたくさん出てきている。

忙しくても、心のゆとりのある人とそうでない人は、

雲泥の差だよね。きっと。

ないねだりばかりしてないで、できているところもちゃんと評価しよう。

公園のむこう川にある、娘さんがたくさんにいる家に行ってみた。

一時、ほとんどのお花はなくなって無残にも枯れかけていたのだが、

今日は、ジュリアン、ビオラ、パンジー、観葉植物のカポックが雨の雫を浴びて、

にこにこと笑っている。

「元気になられたのね」

さくらこも、お花がどんどん増えてきている。

こぼれ種ではえてくるものもあるので、

様子を見ながら増やしていきたい。

さくらこが家に帰ると、ママが

「もう、10時過ぎてるから気をつけてね」

その言葉を聴いて、思わず絶句した。

今まで、そんな優しい言葉をかけられたことは

一度もなかった。

むしろ、ママの彼が来ると家にいられず外に出ていた。

クリスマスの夜は、関口の教会で過ごしたこともある。

さくらこは、ママに抱きついた。

「ママー。ありがとう」

新聞店の奥さんに白雪姫コンプレックスのことを

相談してから、ママはものすごく優しい。

まるで別人のように変わってきている。

怖かったんだね。ママ。

触れ合って、関わって、上手に愛せない自分と

折り合いがつけられなかったんだね。

ママが優しくハグしてくれる。

ママが頭をなでてくれる。

「最高の幸せ」

あふれるほどの幸せで、

わたしもいつか、立ち止まって、

丁寧に挨拶が出来る子になれると心から思うさくらこだった。

ありがとうございます。
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