陽だまりの家

小さな愛、大きな愛

「小さな愛、大きな愛」

サクラは、冷たい風が吹き抜ける冬の公園を歩いていた。6歳のハル、4歳のヒナ、2歳のミクの小さな手をそれぞれ繋ぎながら、彼女の心は不安と疲労でいっぱいだった。夫を事故で亡くして2年、生活保護と障害年金で暮らしながら、うつ病と闘う日々は孤独そのものだった。

「ママ、寒いね。」
ヒナの小さな声に気づいて、サクラは少し立ち止まり、子供たちのコートを直した。
「もう少しで帰るからね。」

そう答えながらも、サクラの心は沈んだままだった。夫を失った日から、何かが抜け落ちたように感じている。その「何か」を埋めようとしても、どうしていいのか分からないままだ。

ある日、近所の知り合いである友人のカナが、サクラの家を訪ねてきた。カナはサクラの状況を気にかけてくれる数少ない人だった。

「サクラさん、今度、聖書を学ぶ集まりに来てみない？」
「聖書の集まり？」
「そう。クリスチャンの仲間が集まって、神様の言葉について学んでいるの。とても温かい雰囲気で、きっと気持ちが楽になると思うわ。」

サクラは少し迷ったが、カナの熱意に押され、集まりに参加してみることにした。

その週の夕方、子供たちを連れてカナの家を訪れると、リビングには数人の人たちが集まっていた。男性も女性もいて、皆笑顔でサクラを迎え入れてくれた。子供たちは別の部屋で遊ぶことになり、サクラは大人たちと一緒に座った。

「ようこそ、サクラさん。」
長老として紹介された年配の男性が温かな声で挨拶した。「私たちはここで、聖書を通じて神様の愛を学んでいます。どうぞ気軽に参加してくださいね。」

集まりが始まり、聖書のヨハネ 3:16が朗読された。

「神は世を深く愛してご自分の独り子を与え，だれでも彼に信仰を働かせる者が滅ぼされないで，永遠の命を持てるようにされた。」

その言葉に、サクラは静かに涙を流した。自分が孤独だと思っていたこの世界で、神様が「愛している」と言ってくれる存在があることに、胸がじんわりと温かくなった。

その後、集まりでは誰かが優しく質問に答えたり、自分の経験を話したりしていた。サクラは聞きながら、自分が今まで感じていた孤独が少しずつ薄れていくのを感じた。
集まりの終わりに長老の男性が言った。

「サクラさん、神様はあなたとあなたのお子さんをとても気にかけていらっしゃいます。困難な状況にいるかもしれませんが、一緒に神様の愛を学ぶことで、きっと前を向く力が得られますよ。」

その言葉に、サクラは静かにうなずいた。

その後、サクラは定期的に集会に参加するようになった。聖書を学びながら、周りの人たちの支えに助けられ、少しずつ心が軽くなるのを感じた。長老たちや仲間たちの優しい言葉、子供たちを一緒に見守ってくれる姿に、感謝の気持ちが湧いてきた。

ある日、ミクがサクラの膝に座りながら小さな声で言った。
「ママ、最近いっぱい笑ってるね。」

その言葉にサクラはハッとした。そうだ、あの日、公園で小さな手を握りしめて歩いていた自分が、ここまで来るとは思っていなかった。

サクラは今も夫を失った悲しみを完全に忘れたわけではない。しかし、聖書の言葉と、神様が自分を見守ってくれているという安心感が、彼女を少しずつ変えていった。

「神様、子供たちと私に愛を教えてくださりありがとうございます。これからも、この小さな命を守れるようにお導きください。」

祈りを終えたサクラは、子供たちの笑顔を見ながら、静かに微笑んだ。その笑顔は、神様の愛によって支えられた、新しい幸せの始まりを感じさせるものだった。

解説
この物語は、クリスチャンの集会を通じて心の支えを見つけた母子家庭の女性の再生を描いています。聖書のヨハネ 3:16が示す神様の愛が、主人公のサクラの心を癒し、新しい希望を与えました。神様の愛や人々とのつながりが、どのようにして人生の困難を乗り越える力となるかを伝える物語です。