春秋花壇

春雷

春雷

稲妻とは「稲の夫（つま）」の意。稲は稲妻をうけて結実すると信じられていた。

昔の人の知恵は面白い。

雷（稲妻）による放電では、大気中の窒素分子が活性化されて「窒素酸化物」が生じます。この窒素酸化物は「窒素肥料」として機能する。

どこからこんな知恵を得たんでしょうね。

三月も半ばを過ぎ、ようやく春の陽射しが暖かさを増してきた。庭の梅の木は、蕾を膨らませ、もうすぐ咲き始めようとしている。

そんなある日、私は縁側でぼんやりと庭を眺めていた。ふと、遠くの方からかすかに雷鳴が聞こえたような気がした。耳を澄ませてみると、確かに雷の音だ。しかし、空は晴れており、雲一つ見当たらない。

「春雷か…」

私はつぶやくように呟いた。春雷は、春の訪れを告げる風物詩として古くから親しまれてきた。しかし、実際に聞いたことは数えるほどしかない。

雷鳴は次第に大きくなり、やがて頭上を轟かせ始めた。同時に、強い風が吹き、庭の梅の花びらが舞い散る。

私は思わず目を閉じた。そして、雷鳴と風の音に身を委ねた。

しばらくすると、雷鳴は止み、風が弱まった。私は目を開き、空を見上げた。すると、そこには青空が広がっていた。

そして、その青空を背景に、一筋の虹が架かっていた。

私は思わず深呼吸をした。春の息吹が、全身を包み込むようだった。

春雷は、冬の終わりと春の始まりを象徴するような音だった。それは、生命の躍動を感じさせてくれる音だった。

私は、その音に励まされたような気がした。そして、これから始まる新しい季節に希望を抱いた。

数日後

春雷の夜から数日後、私は久しぶりに友人と会うことになった。

友人は、私の家の近くのカフェで働いていた。私は、カフェで友人と待ち合わせ、近況を話しながらコーヒーを飲んだ。

しばらくすると、友人が突然こう言った。

「そういえば、あの日の雷、すごかったね。」

「そうだったね。」

私は、あの日の春雷のことを思い出した。

「あの雷を聞いて、何か心が洗われるような気がしたんだよね。」

友人は、そう言って微笑んだ。

私も、友人の言葉に同感だった。

春雷は、私たちに新しい季節の訪れを告げるだけでなく、心の奥底に眠っていた何かを呼び覚ましてくれるような音だった。

その後

あの日以来、私は春雷を聞くたびに、あの日のことを思い出す。そして、そのたびに心が温かい気持ちになる。

春雷は、私にとって特別な音となった。

それは、希望と生命の象徴のような音だった。

春雷
冬眠の夢覚ます
春雷の音
凍てついた大地を
揺り起こす

雲間から差す光
まだ弱いながらも
確実に春の訪れを
告げる

土中の種芽
雷の音に鼓舞され
芽吹き始め
生命の息吹を感じさせる

鳥のさえずり
風の音
すべてが春を奏でる

春雷
それは希望の音
新しい季節の始まり
未来への期待を膨らませる