憧れから始まった恋

春秋花壇

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無色の選択

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 無色の選択

陽は目の前に立っている自動販売機をじっと見つめた。そこには、どれも同じように見える飲み物が並んでいた。ボタンには名前が書かれていない。だが、陽にはその選択が単なる飲み物の選択以上の意味を持っていることに気づいていた。

彼の目線は、自分の内面を映し出すかのように揺れていた。周りの世界がどれも同じに見え、何を選んでも結局は変わらないと感じていたからだ。色は何でも良い、でも、その色に何かが込められているとしたら、何色が適しているのかを考え始めた。選択肢を前にして、陽の脳裏には一瞬の迷いもなかった。

「透明、あるいは色がついていないもの。」

無意識に彼の目線は、飲み物の中で透明なもの、色が付いていないものに引き寄せられていた。それは、彼自身の深層心理が示す何かだった。

"もし色が無ければ、何も見えない。何も識別できない。それは、誰にも知られず、誰にも影響されない存在として最も安全だろう。"陽は心の中でそう思った。

彼にとって、透明で無色のものは、一番安心できる選択肢だった。見えないということは、警戒する必要がない。無意識に混入物を警戒する自分が、ついにその色を選ぶのだ。

その時、思い出したように舞の顔が浮かんだ。舞は、陽が「色」について深く考え始める前から、すでに彼の本質に気づいていたのだろうか。陽が舞に対して抱いている冷徹さ、そしてその無色の選択肢に隠された理由を、舞は理解していたのかもしれない。

陽が選んだのは、やはり透明なボトルの飲み物だった。彼はボタンを押し、冷たい飲み物を手に取った。その瞬間、無意識の中で一つの結論が出ていた。

「誰にも知られたくない。」

それが、彼が選んだ無色の飲み物に込められた本当の意味だった。







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