憧れから始まった恋

春秋花壇

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贈り物の裏側

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 「贈り物の裏側」

クリスマスの朝、陽の部屋は静寂に包まれていた。白い雪が窓の外に降り積もり、空気はひんやりと冷たく、静かな美しさを保っている。陽は舞に、真っ赤なリボンが飾られた小さな箱を手渡した。その箱には、彼の心の中で「完璧な贈り物」として選ばれたものが詰められている。

舞は微笑んでその箱を受け取ると、リボンを丁寧に解き、箱の蓋を開けた。そこに現れたのは、まばゆい光を放つエルメスのバッグ、バーキン25 エトゥープ ベージュ。舞は目を見開くことなく、その光景をただ静かに見つめた。

「……これが、エルメスのバーキン?」

陽は舞の反応を待ちながら、少し緊張していた。彼はプレゼントを選ぶ際、舞が喜んでくれるだろうと確信していた。彼女が身に着ける姿を想像し、どんな表情を見せてくれるのかと心躍らせながら、そのバッグを選んだのだ。

「ありがとう、陽。とっても嬉しいわ。」舞は優しく微笑んだが、その目にはどこか遠いものが宿っていた。

陽はその微笑みを見て安心したが、どこかで引っかかる感覚があった。舞は常に品のある女性で、どんな高級な物にも冷静でいられる。だが、彼女の反応は何かが違っているように感じた。

舞はバッグを手に取り、軽く触れながら言った。「でも、陽、私、ブランドに興味はないのよ。」その言葉が彼の胸に突き刺さった。舞は心の中でそのバッグが本当に欲しいものではないと感じていた。

陽はその言葉に驚いたが、舞が笑顔を崩さずに続けるので、何も言えなかった。舞はバッグを慎重に箱に戻し、改めて陽を見つめた。「あなたが思う素敵な女性は、このバッグを持って似合うと思ったのよね。でも、私にとっては、このバッグはただの物でしかないわ。もし、私が心から欲しいものじゃなければ、それはただのごみよ。」

陽はその言葉に言葉を失った。彼の中で、舞がどんな女性かというイメージが強く根付いていた。彼女は常に完璧で、完璧なものを求める女性だと思っていた。そして、このバッグこそが、その女性に相応しい贈り物だと信じていた。しかし、舞はそのイメージとは全く違うことを言っている。

舞の目は冷静で、どこか遠くを見つめているようだった。陽はその目に、何か深いものが宿っているように感じた。もしかしたら、舞が本当に求めているものは、物質的なものではないのだろうか。彼は少しだけ胸が痛んだ。

舞はバッグを再び箱に戻し、ゆっくりと立ち上がった。「陽、私は物よりも、あなたの気持ちが大切なの。だから、このプレゼントを無駄にしないように、あなたの思いを込めて、何かもっと意味のあるものをくれると嬉しいわ。」

陽はその言葉をしっかりと受け止め、彼の胸にあった疑問が晴れた気がした。舞が求めているものは、物ではなく、心のこもった本物の思いやりだったのだ。

その後、陽は舞と共にクリスマスディナーを楽しんだ。舞の笑顔は、陽が想像していたよりもずっと輝いていた。それは、ブランドバッグよりもずっと価値のある贈り物だった。

陽はその夜、舞に本当に必要なものが何なのかを理解した。そして、物質的な贈り物にこだわることなく、舞のためにできる最高のことを心から考えることを決意した。舞が求めるのは、物ではなく、心からの温もりだった。

陽は舞を見つめながら、心の中で誓った。これからは、舞が本当に喜んでくれるものを見つけ、彼女にそれを贈ること。物ではなく、愛と気持ちがこもったものを。そうすれば、舞もきっと心から幸せを感じてくれるだろうと思った。







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