老人

秋の窓辺

風邪をひいてしまいました
鼻風邪がこんなにつらいとは
熱はありません
改めて健康のありがたみが身に沁みる
蜂蜜と生姜に救われています
のどの痛みを取る蜂蜜柚子大根

紅葉の季節を楽しむことができますように
幸せを感じられますように

いつもありがとうございます


秋の窓辺

一人暮らしをしている和子さんは70歳。つい最近、気温が急に下がったせいか、鼻風邪をひいてしまった。熱はないが、鼻が詰まり、少し喉も痛むため、夜もなかなか眠れない。鼻風邪がこんなにもつらいものとは思わず、和子さんは改めて「健康であることのありがたさ」を感じていた。

そんな時、娘から電話があった。「風邪をひいたなら、すぐに薬を飲んでね」と心配してくれたが、和子さんはいつものように「大丈夫よ、少し休めば治るから」と答えた。それでも、ひとりで過ごす家の中での風邪は寂しさを感じさせるものだった。

和子さんは少しでも体を温めようと台所に向かい、蜂蜜と生姜をお湯に溶かして作る「生姜蜂蜜湯」を口に含んだ。熱いお湯が喉を通り抜けると、鼻の奥や喉がじんわりと温まり、つかえていた気持ちが少しだけ和らいだ。

「こうして、何とかなるものね」と小さく呟いた和子さんは、ふと若い頃に母親が作ってくれた「蜂蜜柚子大根」を思い出した。秋になると母が台所で大根を薄切りにし、そこに柚子と蜂蜜を合わせて喉薬を作ってくれたのだ。大根の柔らかい辛さと柚子の香りが混ざり合ったその味は、体が温まるだけでなく、不思議と心がほっとする記憶を伴っていた。

「今度は私も蜂蜜柚子大根を作ってみようかしら」

そう思った和子さんは、さっそく冷蔵庫の中を探し、余っていた大根と先日買ったばかりの柚子を取り出した。薄く切った大根に柚子と蜂蜜をたっぷりとかけ、しばらく置くと、甘酸っぱくて爽やかな香りが漂ってきた。その香りは、まるで過去の思い出と繋がっているかのように和子さんの胸を温めた。

「これなら、喉の痛みも少し和らぎそうね」

そう言って、和子さんはゆっくりと蜂蜜柚子大根を口に含んだ。すっきりとした味が喉を潤し、風邪で重かった気持ちが少し軽くなるようだった。風邪をひいて、寂しい思いをしていたが、こうして自分で心を癒す方法があることに改めて気づかされた。健康でいることがどれほどありがたいことか、改めて身に沁みるような気持ちだった。

和子さんは台所で作業を終えたあと、リビングの窓辺に移動し、ゆっくりと椅子に腰かけた。窓の外はすでに紅葉が始まっており、色とりどりの葉が秋の光を受けて鮮やかに映えている。

「早く良くなって、紅葉を見に行けるといいわね」

一人で呟いたその声は、秋の静かな空気に溶けていった。和子さんは少し目を閉じ、静かに祈るように「どうか、また紅葉を楽しめるように、そしてこの秋も幸せを感じられるように」と願った。

毎日、こうして季節の移り変わりを感じられることが何よりもありがたいことだと感じる。そして、それを一緒に分かち合える家族や友人がいなくても、自分自身でその喜びを噛みしめられるというのは、一人暮らしの中で見つけた小さな幸せだった。

その晩、和子さんは窓辺で静かに過ごした時間を思い出しながら布団に入った。蜂蜜と生姜、そして蜂蜜柚子大根のおかげで、少し体が楽になり、風邪も少し和らいだ気がする。夜が深まると、秋の冷たい空気が窓の外から伝わってくるが、それも今は心地よく感じた。