老人

篠おばあちゃんのガーデニング

篠おばあちゃんのガーデニング

70歳の篠おばあちゃんは、ガーデニングを心から愛していた。彼女の庭は、色とりどりの花々と香り高いハーブでいっぱいだった。毎日朝早くから花の世話をし、草木に話しかけるのが彼女の習慣だった。だが、近年の体調不良で、彼女はこの楽しみから遠ざかっていた。病院の診察や薬の処方が日常となり、かつてのように元気に庭仕事をすることができなくなっていた。

「元気になりたいな、そうすれば、また都立公園でガーデニングができるようになるのに。」篠おばあちゃんは、しばしば呟いていた。彼女の夢は、毎週ボランティアとして公園のガーデニングに参加することだったが、体調が許さず、その夢は遠いものとなっていた。

ある日、篠おばあちゃんは決心をした。勇気を振り絞り、自分の体調を少しでも整えるために、何か一つだけでもやってみることにした。都立公園には、ガーデニングのボランティアが集まっており、その場で篠おばあちゃんができることをやってみようという考えが彼女の心に芽生えた。

「今日は水やりだけにしよう。無理をして体を壊してしまうより、できることを少しずつやるほうがいいわ。」篠おばあちゃんは、心の中でそう決めた。公園のボランティア活動が行われている日に、彼女はいつものように早起きし、軽く支度をしてから出かけた。

公園に到着すると、すでにたくさんのボランティアが作業をしていた。花壇の手入れや草むしり、木々の剪定など、忙しそうな様子が広がっていた。篠おばあちゃんは、スタッフに挨拶をし、「今日は水やりだけさせていただきたいのですが。」とお願いした。

スタッフは優しく微笑みながら、篠おばあちゃんに水やりの道具を手渡してくれた。「もちろんです。お手伝いありがとうございます。無理をなさらず、少しずつやってくださいね。」

篠おばあちゃんは、小さなじょうろを持ち、ゆっくりと花壇に水をやり始めた。彼女は一株一株を丁寧に扱いながら、心の中で小さな喜びを感じていた。何もできないと諦めるのではなく、自分ができる範囲で手助けすることで、少しずつまたガーデニングの楽しさを取り戻していった。

その日、篠おばあちゃんが公園で水やりをしている姿を見たボランティアたちは、彼女の努力と熱心さに感心した。彼女が花々に水をやりながら、少しずつ力を取り戻していく姿は、周りの人々にも良い影響を与えた。

次の週、篠おばあちゃんはまた公園に行き、今度は草むしりを手伝うことに決めた。彼女は体調に無理をせず、一度にたくさんの作業をしないように心がけた。少しずつ、彼女は自分のペースでできることを続けていった。

こうして、篠おばあちゃんは自分の限界を理解しながらも、ガーデニングを再び楽しむことができるようになった。彼女は無理をせず、慎み深さを身につけることで、自分の体調と向き合いながら、また公園のボランティアとしての役割を果たしていった。

篠おばあちゃんの姿は、多くの人々にとっての励ましとなり、またガーデニングの楽しさを共有する喜びをもたらした。彼女の小さな一歩が、周りの人々にも希望と勇気を与え、ガーデニングを通じて生きる力を取り戻していくのだった。