老人

波乗りしようぜー!!

波乗りしようぜー!! 

70歳の小林健二は、一人暮らしをしているが、彼の生活は活気に満ちていた。毎朝5時に目覚めると、日課のラジオ体操をこなし、軽い朝食を取る。そして、彼の一番の楽しみである波乗りの準備を始める。

健二がサーフィンを始めたのは50年前、20歳の若者だった頃だ。当時はただの趣味だったが、年を重ねるにつれて、サーフィンは彼の生きがいとなった。60歳を過ぎた頃からは、地元の若者たちと一緒に波乗りをするようになり、彼らからは「波乗りじいちゃん」と呼ばれて親しまれている。

ある夏の朝、健二は特に楽しみにしていた。今日は天気が良く、波の状態も最高だと予報が出ていたからだ。彼はサーフボードを車に積み込み、ビーチへと向かった。到着すると、すでに多くのサーファーが集まっていた。

「おはよう、健じい！」と、若者の一人が声をかけた。

「おはよう、みんな。今日もいい波が来てるぞ！」と健二は答えた。

彼はウェットスーツを着て、ボードを抱えながらビーチへと歩いて行った。波の音が心地よく耳に響く。海に入ると、健二は若い頃と変わらない軽やかな動きで波を捉え、ボードに乗った。風を感じながら滑るその感覚は、何物にも代えがたいものだ。

数時間後、健二は疲れを感じ始め、ビーチに戻った。彼はボードを砂浜に置き、少し休むことにした。波の音を聞きながら目を閉じると、これまでの人生がフラッシュバックした。愛する妻との思い出、子供たちの成長、そしてサーフィンを通じて出会った仲間たち。すべてが彼の心を温かく包み込んだ。

突然、遠くから聞こえる声に目を開けると、一人の若者が近づいてきた。「健じい、ちょっといいですか？」

「どうした？」と健二は尋ねた。

「実は、今日は特別な日なんです。僕たち、サーフィンの大会を開いているんですが、ぜひ健じいにも参加してほしいんです」と若者は言った。

健二は驚いたが、すぐに笑顔を浮かべた。「そうか、じゃあ参加させてもらうよ！」

大会が始まると、健二は若者たちと一緒に波乗りを楽しんだ。彼の技術は衰えることなく、観客たちはその姿に感動していた。結果は二の次だった。大切なのは、70歳という年齢を超えても、挑戦し続けるその姿勢だった。

大会が終わり、健二は表彰台に立った。周りの若者たちが拍手を送り、「健じい、最高！」と叫んでいた。彼は誇らしげに笑いながら、「ありがとう、みんな。これからも波に乗り続けるぞ！」と応えた。

その日、健二は一人で家に戻ったが、心は満たされていた。彼は自分がまだまだ現役であることを実感し、これからもサーフィンを続ける決意を新たにした。そして、いつか再び若者たちと一緒に波乗りを楽しむことを楽しみに、次の朝も早起きして海へと向かうのであった。