日ごとに聖書を調べる

11月23日，土曜日

11月23日，土曜日

皆，思いを一つにしてひたすら祈り続けた。（使徒 1:14）

伝道を行うためには聖なる力の助けが必要です。サタンが私たちに敵対して，伝道をやめさせようとしているからです。（啓 12:17）人間の観点からすれば，サタンに勝つことなどできないと思うかもしれません。でも，私たちは伝道を行うことによって，サタンに勝利を収めています。（啓 12:9-11）どうしてそう言えるでしょうか。サタンを恐れてはいないことを示すことになるからです。それで私たちは，伝道を行うたびに，サタンに一撃を加えていることになるのです。私たちが聖なる力によって強められ，エホバに良いと認められていることの証拠です。（マタ 5:10-12。ペテ一 4:14）聖なる力の助けがあれば，伝道でどんな問題にぶつかるとしてもそれを乗り越えることができる，ということです。（コリ二 4:7-9）では，どうすれば聖なる力を頂くことができるでしょうか。祈り続けることです。エホバが必ず聞いてくださると確信して祈るのです。塔研22.11 5-6ページ10-11節

聖書を毎日調べる 2024


「祈りの力」

11月23日、土曜日の朝。晴れ渡る空の下、玲奈（れいな）は駅前広場で声を張り上げていた。

「おはようございます！こちらの小冊子は、人生の意味を考えるヒントになります。ぜひご覧ください。」

玲奈の手には薄い冊子が握られている。「希望を持つ方法」と題されたその冊子は、彼女が所属する信仰団体が配布しているものだった。

数年前、玲奈は孤独と絶望に苦しんでいた。職場でのパワハラ、家族との不和、将来への不安。そんな時、ふと立ち寄った図書館で一人の女性に声をかけられた。

「何かお困りですか？」

その問いかけが、彼女の人生を大きく変えるきっかけとなった。女性から受け取った冊子を読み、彼女は聖書と祈りを通じて希望を見いだした。

しかし、今日の伝道活動はいつも以上に厳しかった。人々は冷たい視線を送り、そそくさと彼女を避けていく。時折聞こえるのは、皮肉交じりの言葉だった。

「そんなの信じても意味ないよ。」

「現実を見たら？」

玲奈はその言葉に一瞬ひるんだ。けれども、心の中で繰り返し祈る。

「エホバ、私に力を与えてください。」

午後になると、玲奈は近くの公園へ移動した。木陰に腰掛け、一息つくと、祈りの言葉が自然と口をついて出てきた。

「どうか私を導いてください。サタンの囁きに惑わされないように……。」

その時、一人の少年が自転車に乗って玲奈の前を通り過ぎた。しかし、なぜか立ち止まって彼女に話しかけてきた。

「それ、何ですか？」

「これはね、人がどうやって希望を持てるかを書いた冊子よ。」

少年は興味深そうに冊子を手に取った。彼の目は真剣そのものだった。

「お姉さん、これを全部配るの？」

玲奈は微笑んで答えた。

「そう、できるだけ多くの人に届けたいの。今、何かに悩んでいる人がいたら、その人に少しでも希望を持ってほしいから。」

少年はしばらく黙っていたが、やがてこう言った。

「僕、今お母さんが病気で入院してて、ずっと元気が出なかった。でも、この冊子、家に持って帰ってお母さんに読んでもらおうかな。」

玲奈の胸に温かいものが広がった。

「きっと喜んでくれると思うわ。お母さんにも伝えてね、『私たちは一人じゃない』って。」

少年が去ったあと、玲奈は再び静かに祈った。

「エホバ、私にこのような出会いを与えてくださり、ありがとうございます。」

その夜、玲奈は仲間たちと教会で集まり、一日の出来事を報告し合った。誰もが困難に直面しながらも、それぞれの小さな勝利を語った。

「今日は、多くの人に無視されたけれど、一人の少年が私の話を聞いてくれました。その子が希望を持つきっかけになればと思います。」

その話を聞いた年配の信者が、優しく頷いた。

「玲奈さん、あなたが祈りを通して得た力は、確実にサタンを打ち破っていますよ。その少年との出会いがその証拠です。」

玲奈は深くうなずいた。自分が行っている活動は、決して無意味ではない。むしろ、祈りによって支えられた一歩一歩が、希望を広げる力になっているのだと感じた。

伝道活動の背後にあるのは、聖なる力と、それを信じて祈る心だった。玲奈は再び新しい一日を迎える準備をしていた。どんな試練があろうとも、祈りの力でそれを乗り越え、希望を伝え続けるために。

それが、彼女にとってサタンへの勝利であり、エホバへの信仰の証だった。