いとなみ

春秋花壇

文字の大きさ
上 下
1,461 / 1,511

ヨーロッパのクリスマスマーケットの魅力

しおりを挟む
ヨーロッパのクリスマスマーケットの魅力

東京の街が冬の冷気に包まれ、クリスマスシーズンがやってきた。街の灯りがともり始め、イルミネーションが色とりどりに輝く中、私たちは待ちに待った「東京クリスマスマーケット 2024」に足を運ぶことにした。場所は神宮外苑。ヨーロッパのクリスマスマーケットの雰囲気がそのまま再現されていると聞いて、私はワクワクしていた。

「一緒に行こうよ、私。」と彼が言ったのは、数日前のことだった。

彼の名前は翔太。大学時代の同級生で、今は別の会社に勤める忙しい日々を送っている。しかし、クリスマスの時期になると、彼は必ず私と一緒に何か特別な時間を過ごそうと提案してくれる。そんな翔太との約束は、私にとって一番の楽しみだった。

「うん、楽しみにしてる。」私は答えた。

クリスマスマーケットは、ドイツ・ザイフェン村からやってきた高さ14メートルの「クリスマスピラミッド」がシンボルで、すでにその壮大さが目を引いた。市場は、まるでヨーロッパの小さな村に迷い込んだかのような雰囲気で、25の飲食店と30の雑貨店が軒を連ねていた。店々の屋根には雪が積もり、店先には色とりどりのオーナメントが飾られ、香ばしいスパイスの香りが漂っていた。

「すごい…まるで本場のマーケットみたいだね。」私は目を輝かせて言った。

翔太も微笑みながら頷く。「うん、まるでヨーロッパにいるみたいだな。ここまで本格的な雰囲気を感じられるとは思わなかった。」

私たちは手を繋ぎながら、各店を見て回った。ドイツの伝統的な食べ物、グリューワインやソーセージ、焼きたてのアーモンドなどが並んでいて、どれも美味しそうで目移りしてしまう。温かい飲み物を手に、私は翔太と一緒に歩きながら、今のこの瞬間がとても幸せだと思った。

「これ、どうぞ。」翔太が手にしていたグリューワインを私に差し出してきた。

「ありがとう。」私は受け取って、一口飲んだ。甘さとスパイスが口の中に広がり、温かさが体中に染み渡る。寒い冬の夜にぴったりの飲み物だ。

その時、突然、楽団の演奏が始まった。クリスマスマーケットの広場に、金管楽器の音色が響き渡る。生演奏によるクラシックなクリスマスソングが、私たちの心をさらに温かくしてくれた。

「素敵だね。」翔太が言った。

「うん、本当に。」私はその音楽に耳を傾けながら、彼と並んで歩く幸せを感じていた。楽団の演奏をバックに、手を繋いだまま歩く二人。まるで映画のワンシーンのようだった。

その後、私たちは小さな雑貨店に立ち寄った。店内には手作りのオーナメントやキャンドル、ぬいぐるみなどが並べられていて、その一つ一つが温かみを感じさせた。私は棚に並ぶ色とりどりのオーナメントに目を奪われ、翔太と一緒に選んでみることにした。

「これ、どう?」翔太が手に取ったのは、星型のクリスマスオーナメントだった。

「すごく可愛い!お部屋に飾りたいな。」私はそのオーナメントに見入った。

「じゃあ、これを買おう。」翔太は微笑んで言い、私たちはそのオーナメントを購入した。

「これで、私たちの部屋にもクリスマスの雰囲気が広がるね。」翔太が言った。

私はその言葉に頷きながら、心の中で確信していた。翔太との時間は、どんな贈り物よりも価値があると。彼と過ごすこのひとときが、私のクリスマスの一番の宝物だ。

クリスマスマーケットの終わりに近づくと、私たちは「クリスマスピラミッド」の前に立ち止まった。煌めくライトに照らされたその巨大なピラミッドは、まるで幻想的な世界に誘われるような美しさだった。

「すごいね…こんなに大きなピラミッドを見るのは初めて。」私は目を輝かせて言った。

翔太は静かに私を見つめて、少し照れたように笑った。「僕もだよ。でも、こんなに素敵なクリスマスを君と過ごせて、今が一番幸せだ。」

その言葉に、私の胸が温かくなった。夜空には星が輝き、冷たい風が頬をかすめる中、私はただその瞬間を感じていた。翔太と一緒に過ごすクリスマスが、どれほど素晴らしいかを実感しながら。

「私も、翔太と過ごせて幸せだよ。」私は笑顔で言った。

「これからも、ずっと一緒にクリスマスを過ごそうね。」翔太の手が、優しく私の手を握った。

その手の温もりが、寒い冬の夜を忘れさせてくれるような、心温まるひとときだった。クリスマスマーケットの輝きの中で、私たちは互いに愛を誓うように、その瞬間を胸に刻んだ。






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

季節の織り糸

春秋花壇
現代文学
季節の織り糸 季節の織り糸 さわさわ、風が草原を撫で ぽつぽつ、雨が地を染める ひらひら、木の葉が舞い落ちて ざわざわ、森が秋を囁く ぱちぱち、焚火が燃える音 とくとく、湯が温かさを誘う さらさら、川が冬の息吹を運び きらきら、星が夜空に瞬く ふわふわ、春の息吹が包み込み ぴちぴち、草の芽が顔を出す ぽかぽか、陽が心を溶かし ゆらゆら、花が夢を揺らす はらはら、夏の夜の蝉の声 ちりちり、砂浜が光を浴び さらさら、波が優しく寄せて とんとん、足音が新たな一歩を刻む 季節の織り糸は、ささやかに、 そして確かに、わたしを包み込む

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

感情

春秋花壇
現代文学
感情

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

陽だまりの家

春秋花壇
現代文学
幸せな母子家庭、女ばかりの日常

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

生きる

春秋花壇
現代文学
生きる

処理中です...