いとなみ

オンラインの距離感

「オンラインの距離感」

それからしばらく、結菜と大地の距離は自然と少し開いた。彼がログインする頻度は減ったが、たまに顔を見せては軽く挨拶を交わす程度で、以前のように過剰に絡むこともなくなった。結菜はホッとした反面、少し寂しさも感じていた。しかし、この一件がきっかけで、彼女の心に新たな変化が生まれていた。

ギルドメンバーとの関係も、少しずつ深まっていく。今まで以上に自由に話せるようになり、彼女は以前よりも積極的にギルドのイベントやボイスチャットに参加するようになった。中でも、リーダーのカズヤやサポート役のミカが結菜のことを気にかけてくれ、彼らとの距離が縮まっていくのを感じていた。

ある日のイベント後、ミカがボイスチャットでふと尋ねた。
「結菜、大地とはどうなの？なんか前よりも距離できてる気がするけど…」

結菜は少し戸惑ったが、正直に答えることにした。
「うん、前はすごく近くて頼りにしてたんだけど、ちょっと独占的すぎる部分があってね…。今は少し距離を置くようにしてるんだ」

ミカは優しく頷き、アドバイスをくれた。
「オンラインって難しいよね。でも、結菜ちゃんが心地よく楽しめるのが一番だと思うよ。無理に誰かに合わせる必要はないし、みんなと楽しめる時間を大事にすればいいんじゃないかな」

その言葉に、結菜は心が軽くなった気がした。自分のペースで楽しむことが大切だと、改めて感じたのだ。

それから結菜は、ゲームを通じて他のメンバーとも積極的に関わるようになり、気さくなリーダーのカズヤとはよくコンビを組んでダンジョンに挑むようになった。彼は大地とは違い、穏やかで誰に対しても平等な態度を貫いていた。そんなカズヤと一緒に遊ぶ時間が増えるにつれ、結菜は自然体でいられる心地よさを覚え始めていた。

しばらくして、大地がまたログインしてきた。彼は結菜に対して前よりも控えめな態度を取っており、時折チャットで軽く会話を交わす程度で深く干渉することはなくなっていた。

「久しぶりだね、大地」
「うん、ちょっとリアルが忙しくてさ」

彼のメッセージには、以前のような執着の影は感じられず、どこか落ち着いた雰囲気が漂っていた。彼もまた、少しずつ自分の感情を整理していたのかもしれない。

その後も、結菜と大地の関係は自然体で続き、ギルドのメンバーと楽しむ時間が結菜にとっての新しい日常となっていった。結菜は、オンラインの世界での「距離感」を学びながら、友情や恋愛に対する考え方も少しずつ変わっていった。

この関係の変化が、二人の未来にどのような影響を与えるのか、そして結菜が本当の意味で信頼できる仲間たちとどんな冒険を共有していくのか、読者の期待は高まるばかりである。