いとなみ

春秋花壇

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不妊症の壁

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不妊症の壁

鈴木さんとの関係が少しずつ深まっていく中、俺の心にはある不安が芽生え始めていた。それは、将来子供を持つための重要な問題、不妊症についてだ。結婚相談所で出会ったばかりとはいえ、これからの家族のことを真剣に考えるなら、少しでも不安を解消しておきたいと感じていた。

「とりあえず、自分が不妊症ではないことを調べることにしよう」と決心した。ネットで調べてみると、病院での検査が必要だということが分かる。具体的には、精液検査を受けることで、自分の健康状態を確認できる。これが、今後の家族計画にどれだけ影響を与えるのかは分からなかったが、まずは自分の体を知ることが第一歩だと思った。

次に、鈴木さんにも検査を受けてもらうように頼もうかと考えた。しかし、彼女にそのことを言うのは少し不安だった。相手に負担をかけるような要求をするのは、自分のわがままなのだろうか。まだ交際を始めたばかりで、そんな大きな問題を持ち出すのは心配だ。

一晩、悩んだ末、鈴木さんに連絡を取ることにした。正直に自分の考えを伝え、彼女の意見も聞いてみることにした。カフェでのデートの後、彼女は帰宅している最中だろう。メッセージを送ることにした。

『鈴木さん、少し相談したいことがあります。将来の家族のことを考えると、僕の体が健康であることを確認しておきたいと思っています。それで、検査を受けようと思うんですが、もしできれば、鈴木さんにも一緒に検査を受けてほしいと思っています。どうかな?』

少し心配になりながら送信ボタンを押した。返事が来るまでの数分間、俺の心は落ち着かない。果たして彼女はどんな反応をするのか。これが彼女にとって負担にならなければいいが、と心配でいっぱいになった。

しばらくして、鈴木さんからメッセージが返ってきた。

『圭介さん、心配してくれてありがとう。確かに将来のことを考えると大切なことですね。私も検査を受けることを考えてみます。ただ、少し戸惑っているのも事実です。私たち、まだ始まったばかりなのに、こんなことを考えなきゃいけないのかしら?』

彼女の返事には不安と戸惑いが混ざっているのが伝わってきた。少しほっとしながらも、同時に彼女が感じていることにも配慮しなければと思った。

『そうだよね、急ぎすぎかもしれない。だけど、もしこれからの未来を考えるなら、早めに確認しておいた方がいいと思ったんだ。お互いのことを知るためにも、ぜひ話し合いたいと思っているよ。』

数時間後、鈴木さんからの返事が来た。

『ありがとう、圭介さん。あなたの気持ち、分かります。私もやっぱり未来を考えたいし、できれば一緒に確認しておきたいと思います。でも、少しずつ進んでいきましょうね。焦りすぎないようにしよう。』

彼女の言葉に安堵しながら、俺は嬉しさを感じた。鈴木さんがこの問題に対して前向きに考えてくれていることが、心強い。お互いに支え合って進んでいける関係を築けているのを実感し、未来への期待が膨らんでいった。

その後、検査の日が決まった。鈴木さんと一緒に病院に行くことになり、少し緊張しながらもお互いに笑顔で過ごした。彼女も不安を抱えているようだが、俺たちが共にいることで少しでも安心できることを願っていた。

検査の結果を待つ間、互いに小さな会話を交わしながらリラックスできるよう努力した。待合室には同じように不安を抱えた人々がいた。そんな中で、鈴木さんが俺に言った。

「こうやって一緒にいると、少し気が楽になるね。私もこれからのことを考えると不安だけど、圭介さんがいるから頑張れるよ。」

彼女の言葉が心に響いた。共に不安を抱えることで、より強い絆を感じることができた。検査結果は、俺たちの未来にどれだけ影響を与えるのだろうか。その考えが頭をよぎったが、それと同時に、彼女と一緒に未来を歩むことに意味があると感じた。

ついに名前が呼ばれ、診察室に入る。医者から結果を聞く時は緊張で胸が高鳴った。しかし、鈴木さんが隣にいることで、どんな結果であっても一緒に受け止められると思った。

「まず、結果からお話ししますね」と医者が言った。結果を知る瞬間が迫っている。果たして、これからの未来はどのように変わっていくのか。検査の結果が二人の未来にどんな影響を与えるのか、その期待と不安が入り交じる中、俺は鈴木さんの手を優しく握りしめた。

結果がどうあれ、俺たちの道はまだ始まったばかりだ。お互いの手を取り合い、進むべき道を見つけていこうと決意する。家族の形を築くために、これからも一緒に歩んでいくのだと信じて。






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