いとなみ

君への誕生日プレゼント

「君への誕生日プレゼント」

君の誕生日が近づいていることを知ったのは、ふとした瞬間だった。クラスメイトが楽しそうに話しているのを耳にしただけだが、その日が特別だということを強く意識し始めた。今まで、君の誕生日にプレゼントをあげたことはなかったし、そもそも君がどんなものを喜ぶのかなんて考えたこともなかった。でも、今年は違う。何か特別なものを贈りたい、そう思ったんだ。

「女子高生が喜びそうなものって、何だろう？」

僕は放課後、一人でスマホを手に持ちながら、何度も検索画面を見つめた。普段、女の子のプレゼントなんて考えることはなかったから、完全に迷子状態だ。ネットで調べてみると、流行りのコスメやアクセサリー、カフェチケットなんかが候補として挙がってきたけど、どれもピンとこない。

「これじゃあ、他の男子と変わらないじゃないか…」

君には、もっと特別なものをあげたい。そう思うと、何を選んでもどこか不満が残る。

その日の帰り道、偶然立ち寄った商店街の小さなコスメショップで、僕はある商品に目を留めた。それは、カイリジュメイというブランドのリップ・グロス。透明なリップスティックの中に、まるで魔法のように小さな花が閉じ込められていて、光を浴びるとほんのりキラキラと輝く。まるで君の笑顔のように、繊細で美しい。

「これなら、君にぴったりかもしれない…」

女子高生たちの間で人気があると店員さんが教えてくれたが、僕がその商品を選んだ理由は、もっと単純だった。君が笑う時、その笑顔がまるで光に包まれているかのように感じる瞬間があるんだ。だから、このリップも君の手に渡れば、きっと君の魅力を引き立てるだろうと直感的に思った。

購入を決めた瞬間、僕の胸は高鳴っていた。これで、君の誕生日に何をあげるべきかがはっきりと決まったからだ。

誕生日当日、君にプレゼントを渡す時が来た。教室でみんなと談笑している君に、少し緊張しながら近づいていった。いつもは普通に話せるのに、今日だけはなぜか言葉がうまく出てこない。心臓がバクバクと音を立てているのが自分でもわかる。

「えっと、これ…誕生日おめでとう。君に合うと思って選んだんだ」

そう言って、プレゼントの小さな箱を君に差し出した。君は一瞬驚いた表情を見せたけど、すぐに笑顔に変わった。

「ありがとう！ え、何だろう？」君は箱を慎重に開けた。

中から、カイリジュメイのリップが姿を現すと、君の目がキラキラと輝いた。それは、僕がまさに想像していた通りの反応だった。

「すごく綺麗…！ お花が入ってる！ 私、こういうの大好きだよ」

君が本当に喜んでくれたのがわかって、僕はほっとした。少し照れくさくなって、「よかった」とだけ言って、それ以上は何も言えなかったけれど。

その後、君はそのリップを手に取って、何度も光にかざしてみたり、鏡に映してみたりして楽しんでいた。教室の窓から差し込む秋の日差しが、リップの中の花をさらに輝かせていた。その姿はまるで、君そのものが輝いているようで、僕はその瞬間をずっと見つめていた。

それから数日後、君がリップを使っている姿を見かけた時、何とも言えない嬉しさが胸に広がった。君が僕の選んだものを気に入ってくれたという事実だけで、こんなにも満たされるものなのかと驚いた。

「君に喜んでもらえたんだな…」

その瞬間、僕は気づいたんだ。プレゼントを選ぶという行為は、相手のことを思って、何が一番ふさわしいかを考えることだと。君に似合うもの、君が笑顔になるもの、それを探し出して手渡すことで、僕自身も幸せになれるんだと。

君はこれからも、何度もそのリップを使うだろう。そのたびに、僕が君のために選んだということを、少しでも思い出してくれれば嬉しい。

そして、これからも君の笑顔を見るたびに、僕はまた新たな喜びを感じるんだろう。それが、このプレゼントを贈った意味だったのかもしれない。

君への誕生日プレゼントは、リップ・グロスという小さなものだったけれど、それ以上に大きな気持ちを込めたものだ。それは、僕が君の笑顔を見たいと思う気持ち、そして君がいつまでも輝いていてほしいと願う気持ちだ。

だから、これからも君がそのリップを使うたびに、その小さな花と共に、僕の思いも君に寄り添っていることを、少しでも感じてくれたらいいなと思う。