いとなみ

ありがとう、13,800円の時代に

ありがとう、13,800円の時代に
1957年、東京の一角に位置する小さなアパート。アパートの一室では、まだ新婚の二人がしばらくの間、貧しいながらも幸せな生活を送っていた。夫、清一と妻、恵子は、そんな時代の中で互いに支え合いながら、一緒に歩んでいた。

清一はその頃、月給13,800円という安月給で働いていた。1950年代の日本では、まだ戦後の復興が続いており、物価も安かったが、それでも生活は決して楽ではなかった。恵子は専業主婦として、家計のやりくりに知恵を絞りながら、夫と共に質素ながらも心温まる日々を送っていた。

「清一さん、これからもよろしくね」と、恵子はしっかりとした声で言った。彼女の目には、未来への希望と、今の苦労を共に乗り越えようという決意が込められていた。

清一は微笑みながら、恵子の手を優しく握りしめた。「もちろんだよ、恵子。君と一緒にいられるだけで、何もかも乗り越えられる気がするよ」と、彼は心からの感謝の気持ちを伝えた。

その日の夜、二人は近くの小さな食堂で晩ご飯を食べた。賑やかな店内で、安いが美味しい料理に舌鼓を打ちながら、清一は思い出を語り始めた。「恵子、覚えてる？ 最初に二人で来たこの食堂。あのときはまだ、仕事が見つからないかもって心配してたけど、君と一緒にいることで、どんな困難も乗り越えられる気がしたんだ」

恵子は笑顔で頷き、「そうだったね。あの頃は何もかもが新しくて、少しだけ不安もあったけど、二人で支え合ってきたから、今もこうして幸せに暮らせているんだよ」と答えた。

二人の生活は決して裕福ではなかったが、愛と信頼に満ちていた。恵子は、節約しながらも、毎日の料理や掃除を心を込めて行い、清一は仕事に専念して家計を支えた。互いに対する感謝の気持ちが、彼らの絆をさらに強くしていた。

年月が流れ、二人は年齢を重ねていった。彼らの子供も成長し、家庭は賑やかになった。清一は仕事で昇進し、恵子も地域のボランティア活動に参加するようになった。生活は以前よりも楽になったが、彼らの心に刻まれているのは、あの13,800円で始まった生活の思い出だった。

ある晩、清一は家族が集まるダイニングテーブルに座り、心温まるスピーチを始めた。「皆さん、長い間、本当にありがとう。私たちが最初に始めた頃は、13,800円という月給でどれだけのことができるか心配していたけど、君たちのおかげで、今こうして幸せに暮らせている」

恵子は微笑みながら、その言葉に頷いた。「私たちは、一緒に過ごす時間が何よりも大切だと思っているよ。どんなに困難な時期も、共に乗り越えられるから、幸せに感じることができる」

子供たちも温かい言葉をかけ、家族全員がその晩の夕食を楽しんだ。笑顔と感謝の気持ちが溢れるそのひとときは、彼らの心に深く刻まれることとなった。

結婚してからの年月を振り返ると、清一と恵子の生活は、多くの試練と共にあったが、彼らは互いに支え合い、愛を深めていった。13,800円で始まった彼らの物語は、やがて家族の絆を築き、幸せな未来を創り上げていったのだ。

「ありがとう、13,800円の時代に」と清一は心から感謝の気持ちを込めて言った。恵子は、その言葉に優しく微笑み、二人は再び、これからの未来へと希望を持って歩き始めた。