いとなみ

春秋花壇

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冒険者ギルドの恋

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「冒険者ギルドの恋」

カイラは冒険者としての初日、緊張と期待に胸を膨らませながらギルドの扉をくぐった。古びた木製の扉がきしみながら開き、中には活気に満ちた冒険者たちの姿があった。皆、それぞれの装備を身につけ、依頼書を手にしていたり、仲間と談笑していたりと、賑やかだった。

「ここが、冒険者ギルド……!」
彼女は少し圧倒されながらも、憧れの場所に来られたことに感動していた。冒険者として生きること、それがカイラの夢だった。手に握りしめたギルドカードを見つめ、彼女は気を引き締めた。今日から、自分も冒険者の一員だ。

ギルド内を見回していると、突然視線の先に見覚えのある姿を見つけた。金髪で鍛え上げられた体、そして優れた剣技で知られるレオン先輩。彼はギルドでも有名なベテラン冒険者で、カイラが冒険者になりたいと思ったきっかけの一人だった。彼女の目は自然と彼を追い、胸がドキドキと高鳴った。

「レオン先輩……」
小さく呟くと、彼女は無意識に彼に近づいていた。レオンは仲間と談笑している最中だったが、ふと視線を感じて振り返る。彼の青い瞳がカイラを捉えた瞬間、彼女は思わず視線をそらした。しかし、遅かった。レオンは微笑みを浮かべ、彼女に声をかけた。

「初めて見る顔だね。新入りか?」
「は、はい!今日から冒険者になったカイラです!」
緊張で声が裏返りそうになるのを必死で抑えながら、カイラは頭を下げた。レオンは優しく笑いながら、彼女のギルドカードを覗き込む。

「そうか、初めての冒険か。頑張れよ。最初は簡単な依頼から始めるのがいいぞ」
「ありがとうございます!レオン先輩のような立派な冒険者になりたいです!」
言った後、カイラは自分の言葉に顔が赤くなるのを感じた。しかし、レオンはその言葉を真剣に受け止めているようだった。

「そうか、ならまずは初心者向けのダンジョンからだな。ちょうど今日、俺たちもそのダンジョンに行く予定だ。もしよければ一緒に来るか?」
「えっ!いいんですか?」
カイラの目が輝いた。憧れの先輩と初めてのダンジョンに挑む機会なんて、夢のようだった。

ダンジョンはギルドから少し離れた森の奥にあった。初めて足を踏み入れる暗い洞窟の中、カイラは緊張で手が震えていた。しかし、レオンがすぐそばにいることで、少しだけ心が落ち着いた。先輩たちと一緒に進むうちに、カイラの恐れは徐々に興奮へと変わっていった。

「ここが初心者向けって言っても、油断は禁物だ。特に初めてのダンジョンは、何が起こるかわからないからな」
レオンの言葉にカイラは頷いた。周りの先輩たちが手慣れた様子で進む中、彼女も必死でついていった。途中、弱いモンスターとの戦いが何度かあったが、先輩たちのサポートで無事に切り抜けた。

やがて、少し開けた広間にたどり着くと、そこには見慣れない魔物が待ち構えていた。ギルドの依頼書にはなかった種類の魔物だった。カイラは一瞬たじろいだが、レオンの鋭い声が飛ぶ。

「みんな、油断するな!こいつは俺たちが思っていた以上に手強いぞ!」
レオンの剣が閃き、他の先輩たちもすぐに戦闘態勢に入った。カイラも後ろでサポートに回る。魔物は猛スピードで襲いかかってくるが、レオンの見事な剣捌きで次々と攻撃をかわし、反撃していく。その姿はカイラにとってまさに憧れそのものだった。

「私も…!」
カイラは勇気を振り絞り、魔法の詠唱を始めた。まだ未熟だったが、火の玉が魔物に直撃し、わずかだが隙を作ることに成功した。その瞬間、レオンの剣が魔物の急所を貫き、戦いは終わりを告げた。

「よくやったな、カイラ!」
レオンが笑顔で手を差し伸べてくる。カイラはその手を握り返し、胸の鼓動が一層速くなるのを感じた。

「ありがとう、レオン先輩…!」
初めてのダンジョン、初めての戦闘、そして憧れの先輩と共に過ごした特別な時間。カイラにとってこの日が、冒険者としての新たな一歩であり、何よりも心に刻まれた大切な思い出となった。彼女の中で芽生えた恋心は、これからの冒険をより一層輝かせることだろう。







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