いとなみ

婚約者は、僕の母の特訓で花嫁修業をしています

婚約者は、僕の母の特訓で花嫁修業をしています

王立学園の入学を目前に控えたある日、僕はアンバーと共に母のサロンに呼ばれた。母は家のしきたりに厳しく、将来の花嫁に対してもそれは変わらなかった。

「アンバー、あなたにはこれから毎週末、花嫁修業を受けてもらいます。」

母は厳しい目でアンバーを見つめながら言った。アンバーは一瞬驚いた様子を見せたが、すぐに落ち着きを取り戻し、頷いた。

「はい、わかりました。」

アンバーは僕の婚約者であり、政略結婚の相手だった。しかし、僕たちの関係は良好で、彼女への気持ちも日に日に深まっていた。

花嫁修業の初日、アンバーは早朝から母の指導を受けることになった。母は料理や家事の基本から始め、次第に礼儀作法や茶道、華道にまで及ぶ厳しいカリキュラムを組んでいた。母はアンバーに対して一切の妥協を許さなかった。

「アンバー、このお茶の淹れ方はこうするのよ。もっと丁寧に、そして心を込めて。」

母の言葉に、アンバーは真剣な表情で耳を傾けた。僕はその姿を見て、彼女の努力を応援したくなった。

ある日、花嫁修業の合間にアンバーと話す機会があった。彼女の顔には疲れが見えたが、その目は決して諦めを示していなかった。

「アンバー、大丈夫？母の指導は厳しいけど、無理しないでね。」

「大丈夫よ、アレックス。あなたのお母様が厳しいのは私を本気で育ててくれている証拠だから。私はもっと強くなりたいし、あなたの期待に応えたいの。」

アンバーの強い意志を感じ、僕は心から彼女を尊敬した。

週末が続く中、アンバーの花嫁修業はますます厳しさを増していった。ある日のこと、母の指導が一段と厳しくなり、アンバーは涙を浮かべながらも努力を続けていた。

その光景を見て、僕は母に抗議することに決めた。

「母さん、アンバーに対して少し厳しすぎるんじゃないか？彼女は一生懸命頑張っているのに。」

母は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに落ち着きを取り戻し、静かに言った。

「アレックス、あなたがそう思うのは分かるわ。でも、アンバーには本当の強さを身につけてほしいの。彼女がこの試練を乗り越えた時、あなたたちはもっと強い絆で結ばれるはずよ。」

母の言葉に、僕は深く考えさせられた。彼女の厳しさには愛情が込められていることに気づいたのだ。

数ヶ月が経ち、アンバーは花嫁修業を立派に修了した。彼女は自信に満ちた姿で、母の前に立った。

「アンバー、よく頑張ったわ。あなたは本当に素晴らしい女性に成長した。これからもアレックスと共に、幸せな未来を築いていってね。」

母の言葉に、アンバーは感謝の涙を浮かべた。僕は彼女の隣に立ち、その手をしっかりと握った。

「アンバー、ありがとう。君の努力に本当に感謝している。僕たちは一緒に最高の未来を築いていこう。」

アンバーは微笑みながら頷いた。

その後、僕たちの関係はますます深まり、婚約者としての絆だけでなく、恋人同士としての愛情も強くなっていった。王立学園での生活も楽しく、僕たちはお互いに支え合いながら成長していった。

そして、母の厳しい特訓を乗り越えたアンバーは、僕にとってかけがえのない存在となった。彼女の努力と強さに心から感謝し、僕たちは幸せな未来へと歩み始めたのだった。


そして、3か月後、僕たちは結婚した。幸せな新婚生活を送っていたのだが、半年後、母が急に他界した。母の死は突然であり、僕たちに大きな悲しみをもたらした。

母の遺品整理をしていると、僕は一冊のノートと手紙を見つけた。ノートには母の料理のレシピがびっしりと書かれていた。手紙はアンバーに宛てられていた。

「アンバーへ

私があなたに対して厳しくしていたのは、あなたが本当に素晴らしい女性だと信じていたからです。あなたがアレックスと幸せになるために、少しでも役立てればと思っていました。

料理のレシピをこのノートに残しました。あなたがこれを使って家族を幸せにすることができるなら、私も嬉しいです。

どうかアレックスと共に、幸せな未来を築いてください。

愛を込めて

アレックスの母」

手紙を読んだアンバーは涙を流しながら、母の愛情を感じていた。

「お母様、ありがとう。私はあなたの教えを胸に、アレックスと幸せな家庭を築いていきます。」

僕も母の手紙を読み、心から感謝の気持ちでいっぱいになった。母の愛情は僕たちを見守り続け、これからも僕たちの心に生き続けるだろう。

アンバーと僕は母の教えを胸に、幸せな未来へと歩み続けることを誓った。