215 / 1,108
埋み火(うずみび) 3
しおりを挟む
小宮妙子84歳。
彼女の顔は、四谷怪談のお岩さんのように青と緑と黄色の痣で鏡の前に立ちたくない程、
痛々しく腫れていた。
新型感染症のせいで、小柄な妙子が顔の半分以上を覆うマスクをして、
薄く色のついたサングラスをすると全くと言っていいほど、
彼女の痣にきずく者はいなかった。
この痣だらけの顔になってからも普通にラジオ体操に行っていた。
点字ブロックは、視力が無かったり、視力が低下している人が安全に移動するために、
地面や床面に設置された四角形の案内表示です。
正式には「視覚障害者誘導用ブロック」といいます。
ブロックには突起があり、目の不自由な人は、
この突起を足の裏や白杖で確認しながら進みます。
その視覚障碍者にとっては命綱の点字ブロックで躓いて転んでしまった。
年を取ると、自分でもびっくりするくらい小さな凹凸で躓く。
足が上がらないのだ。
そして、通常なら、幼児でもあるまいに転んで顔を打つことはほとんどない。
ところが、手は出ていたはずなのに、顔面をもろに打ってしまった。
その結果が、このありさまである。
そして、ラジオ体操から帰ると何故かトイレにも這っていくほど
動けない。
どうして、ラジオ体操だけは行けるのか不思議だった。
たぶん、みんなが心配するからかもしれない。
そして、肋骨も打ち付けてしまったのか思わず呻き声を出してしまっていた。
あの、毎日のように通報のあった呻き声は多分私……。
でも、どうしてわざわざ公衆電話から通報するんだろう。
何時もの仲良しの人たちなら、住所はわからなくても、
名前くらいは知っているだろうに……。
そんな事を考えながら、アルバムを何冊か物置から出してほうじ茶を飲みながら
回想にふけっていた。
彼女と亡くなった夫の間には子供はいなかった。
なので、二人でよく旅行に行った。
オーロラを見に行ったり、エジプトのピラミッド見学、
人もうらやむ仲のよさだった。
たった一つの秘密を除いては……。
彼女は前夫との間に一人の息子がいた。
亡くなった夫と結婚する前に、自分の実家に預けて
一度もあった事がない。
もう半世紀も前の話だ。
息子が元気に生きていれば、とっくに還暦も過ぎている事だろう。
産んだだけで育てる事も無かった息子を思い出すと、
関を切ったかのように涙があふれる。
日本の警察は優秀である。
なんども公衆電話から、彼女がうめいていると通報したのは
この息子であった。
息子は、自分にも妻子供がいて、今更表立って逢いに行けない。
だが、恋い焦がれるは母親は心配で仕方がない。
いつか名乗りを上げて、テレビのご対面番組のように
涙を流し合って抱き合えたら……。
そんな事を夢みていていたのである。
息子は任意の出頭で、警察官にその事を話している。
自分を捨てた母親だけど、世界でたった一人の母親。
一度だけでもいい。
逢って、「ごめんなさい」と言ってもらいたかった。
これが俺の中の誰にも言えない『埋火』……。
親の別居や結婚の解消は児童にも青年にも不利な影響を及ぼす大きな衝撃となると考えて」います。離婚した親の子供は離婚していない家庭の子供に比べ,非行や反社会的行動に走る率が高い; 離婚した親の子供が精神病院に入院する率は,離婚していない家庭の子供の場合の2倍にもなることがある; 子供のうつ病の主な原因は親の離婚かもしれない。
彼女の顔は、四谷怪談のお岩さんのように青と緑と黄色の痣で鏡の前に立ちたくない程、
痛々しく腫れていた。
新型感染症のせいで、小柄な妙子が顔の半分以上を覆うマスクをして、
薄く色のついたサングラスをすると全くと言っていいほど、
彼女の痣にきずく者はいなかった。
この痣だらけの顔になってからも普通にラジオ体操に行っていた。
点字ブロックは、視力が無かったり、視力が低下している人が安全に移動するために、
地面や床面に設置された四角形の案内表示です。
正式には「視覚障害者誘導用ブロック」といいます。
ブロックには突起があり、目の不自由な人は、
この突起を足の裏や白杖で確認しながら進みます。
その視覚障碍者にとっては命綱の点字ブロックで躓いて転んでしまった。
年を取ると、自分でもびっくりするくらい小さな凹凸で躓く。
足が上がらないのだ。
そして、通常なら、幼児でもあるまいに転んで顔を打つことはほとんどない。
ところが、手は出ていたはずなのに、顔面をもろに打ってしまった。
その結果が、このありさまである。
そして、ラジオ体操から帰ると何故かトイレにも這っていくほど
動けない。
どうして、ラジオ体操だけは行けるのか不思議だった。
たぶん、みんなが心配するからかもしれない。
そして、肋骨も打ち付けてしまったのか思わず呻き声を出してしまっていた。
あの、毎日のように通報のあった呻き声は多分私……。
でも、どうしてわざわざ公衆電話から通報するんだろう。
何時もの仲良しの人たちなら、住所はわからなくても、
名前くらいは知っているだろうに……。
そんな事を考えながら、アルバムを何冊か物置から出してほうじ茶を飲みながら
回想にふけっていた。
彼女と亡くなった夫の間には子供はいなかった。
なので、二人でよく旅行に行った。
オーロラを見に行ったり、エジプトのピラミッド見学、
人もうらやむ仲のよさだった。
たった一つの秘密を除いては……。
彼女は前夫との間に一人の息子がいた。
亡くなった夫と結婚する前に、自分の実家に預けて
一度もあった事がない。
もう半世紀も前の話だ。
息子が元気に生きていれば、とっくに還暦も過ぎている事だろう。
産んだだけで育てる事も無かった息子を思い出すと、
関を切ったかのように涙があふれる。
日本の警察は優秀である。
なんども公衆電話から、彼女がうめいていると通報したのは
この息子であった。
息子は、自分にも妻子供がいて、今更表立って逢いに行けない。
だが、恋い焦がれるは母親は心配で仕方がない。
いつか名乗りを上げて、テレビのご対面番組のように
涙を流し合って抱き合えたら……。
そんな事を夢みていていたのである。
息子は任意の出頭で、警察官にその事を話している。
自分を捨てた母親だけど、世界でたった一人の母親。
一度だけでもいい。
逢って、「ごめんなさい」と言ってもらいたかった。
これが俺の中の誰にも言えない『埋火』……。
親の別居や結婚の解消は児童にも青年にも不利な影響を及ぼす大きな衝撃となると考えて」います。離婚した親の子供は離婚していない家庭の子供に比べ,非行や反社会的行動に走る率が高い; 離婚した親の子供が精神病院に入院する率は,離婚していない家庭の子供の場合の2倍にもなることがある; 子供のうつ病の主な原因は親の離婚かもしれない。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
“5分”で読めるお仕置きストーリー
ロアケーキ
大衆娯楽
休憩時間に、家事の合間に、そんな“スキマ時間”で読めるお話をイメージしました🌟
基本的に、それぞれが“1話完結”です。
甘いものから厳し目のものまで投稿する予定なので、時間潰しによろしければ🎂
ずっと女の子になりたかった 男の娘の私
ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。
ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。
そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。
微熱の午後 l’aprés-midi(ラプレミディ)
犬束
現代文学
夢見心地にさせるきらびやかな世界、優しくリードしてくれる年上の男性。最初から別れの定められた、遊びの恋のはずだった…。
夏の終わり。大学生になってはじめての長期休暇の後半をもてあます葉《よう》のもとに知らせが届く。
“大祖父の残した洋館に、映画の撮影クルーがやって来た”
好奇心に駆られて訪れたそこで、葉は十歳年上の脚本家、田坂佳思《けいし》から、ここに軟禁されているあいだ、恋人になって幸福な気分で過ごさないか、と提案される。
《第11回BL小説大賞にエントリーしています。》☜ 10月15日にキャンセルしました。
読んでいただけるだけでも、エールを送って下さるなら尚のこと、お腹をさらして喜びます🐕🐾
言の葉でつづるあなたへの想ひ
春秋花壇
現代文学
ねたぎれなんです。書きたいことは、みんな、「小説家になろう」に置いてきてしまいました。わたしに残っているものは、あなたへの思いだけ……。
何で人が涙を流すと思う? それはな悲しみを洗い流してもっと強くなるためだ
だからこれからも私の前で泣けつらかったらそして泣き終わったらもっと強くなるよ
あなたのやさしい言葉に抱かれて
私は自分を織り成していく
低学歴 高脂肪
暗黙 了
現代文学
低学歴高脂肪な田舎町のスナックのマスターが自分の人生について思い出していく。綺麗事が嫌いで冷めてるわけじゃなく無関心なわけでもないが、少し人と違った感性をもっている。そう、100円のガチャガチャのカプセルにいつも入って世の中をふわふわ浮いているようなそんなマスターの人生、彼は幸せだったのか?
よせあつめ ─詩集─
古部 鈴
現代文学
大体暗めか暗いかと思います。
ポエム、短文etc.をざっくりまとめたらいいかなで。
現代文学というカテゴリーで書くにはおこがましい気はしますがジャンルよくわかりません。
需要はないでしょうけれど、思いついたものを思いついたまま、言葉にしています。
他で重複掲載幾らかあります。
愛する彼には美しい愛人が居た…私と我が家を侮辱したからには、無事では済みませんよ?
coco
恋愛
私たちは仲の良い恋人同士。
そう思っていたのに、愛する彼には美しい愛人が…。
私と我が家を侮辱したからには、あなたは無事では済みませんよ─?
太陽と龍の追憶
ダイナマイト・キッド
現代文学
昔、バンドを組んでいた時に作詞したものや、新しく書いたものも含め
こちらにて公開しております。
歌ってくれる人、使ってくれる人募集中です
詳しくはメッセージか、ツイッターのDMでお尋ねくださいませ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる