いとなみ

失われた風景 キャンプ場

おらが村にはキャンプ場があるらしい。

しかも、令和3年度は、6月15日（火）～9月14日（火）までオープンしますだって。

あと３日しかないw

稲作の農閑期に営業しているという事なのかな。

とりま、ゆきちゃんと現地に向かう。

色んな人に聞いたけど、結局、どうしてその期間なのか理由が解らなかった。

貸し出し用の寝袋とかも置いてないらしいから、実地踏査だけでもいいかな。

YouTubeの動画の中で、収入になりそうなところを増やす。

というサディッションがあった。

とにかくいろんな人と知り合って、情報を得るしかないよな。

収入だけでは無くて、支出の勉強もしたよ。

田舎の生活には、思ってもいない所でお金が出て行くみたい。

プロパンガス代とか虫の駆除とか、地域との交際費。車もガソリン代。

こんな楽しくない生活の事が多いから、転生とか異世界とかの小説になっちゃうのかな。

だって、ハリーポッターで生活費が無くてなんて話は出て来ないもの。

都会のアパートの壁の薄さで、隣の部屋の生活音が気になるとかはないけどね。

話を元に戻して、キャンプ場。ウイークデイという事もあり、

外部からの人はほとんどいなかった。

俺の家には、囲炉裏があるから、わざわざここで、

施設費を払ってキャンプファイアーする必要もなく、

食糧の買い出しにゆきちゃんと萩市内まで向かう事にした。

どうしても、イカの焼いた奴が食べたくなったんだ。

おばあちゃんが寝たきりだった時、

「イカが食べたい」

って言ってるのに、

「コレステロールが多いから」

って、おばさんが食べさせなかった。

それを見た俺は、

「好きなものも食べられなくて長生きしてもな~」

って思ったんだけど、叱られそうだから何も言わなかった。

今もやっぱり同じように思っちゃう。

その話をゆきちゃんにして

「ゆきちゃんはどう思う?」

って聞いたら、

「もしも、お兄ちゃんが寝たきりになっていかが食べたいって言ったら……」

しばらく考えた後、

「長生きしてもらいたいから、食べさせない」

って><

それが普通の女の人の反応なのかな。

太く短くより、細く長くなのか。

俺はわざとゆきちゃんに

「そうかそうか、じゃあ、ゆきちゃんのぶんはなしだね」

って言ったら、

「わたしもたべたい><」

って、ほっぺをぶっとふくみらませて俺を睨んだ。

その顔がめっちゃかわいくて、思わず抱きしめたいと思ってしまった。

ゆきちゃんは、俺にとって星の王子様の薔薇。

時間と愛情を注ぎたい特別な存在なんだ。

「きみがバラのために費やした時間の分だけ、バラはきみにとって大事なんだ」

今日はゆきちゃんにイカの下ごしらえを教えたよ。

小っちゃかった時、おふくろがイカの口を

「とんび」

と言って白い袋をくれるんだけど、中に入っている尖った軟骨が怖かったな。

かみかみすると、甘くてとってもおいしいんだけどね。

そうそう、東京で初めてイカを買った時、白いのに売ってるからびっくりした。

スーパーでは、イカの刺身しか無かったりしてイカ焼きが食べたいのに

材料がなかなか手に入らなかったりすることに驚きが隠せなかった。

所変われば品変わる。

やっぱり俺は、ゆきちゃんと美味いもんが食いたいな。

このお醤油の香ばしい香りが食欲をそそるよな。

わたでホイル焼きも作ったんだ。

「初めて食べた。おいしい」

って、ゆきちゃんが喜んでくれた。

やっぱり、鮮度が違う。

アスパラのトロロ和え、わかめと豆腐の味噌汁、小松菜のおしたし。

人参と大根のナマスも添えて

「いただきまーす♪」

秋風がそよぐのどかな田園風景には、あぜ道に咲く曼珠沙華が揺れている。

紅く赤く朱く……。

今が一番幸せ。


彼岸花の花言葉は「悲しき思い出」「あきらめ」「独立」「情熱」。