いとなみ

スカイプをしながらゲームの中で他の女とイチャイチャしたらブチ切れられた 154

達也は、ウインリーちゃんを愛していた。

彼女は、達也がオンラインゲームを始めて

チームを作った時から一緒にゲームを楽しんでいた。

彼女は、みるくのように

「試練に連れて行って」

とか、

「イベントに連れて行って」

とか言わない。

達也がストーリーなどで失敗した時にだけ

救世主のように現れ、チャットを飛ばしてくる。

桜を慕う胡蝶のような女だった。

達也がチャットエッチがしたければ付き合ってくれる。

ウエディングもレンタル衣装を借りて一緒に楽しむことができた。

だからこそ、みるくから

「一緒にレンタル衣装を借りてゲーム内結婚式をしたい」

と言われた時断った。

でも、あれからみるくとういんりーちゃんはもめ、

達也の女癖の悪さも彼女にばれてしまって

何となく気まずくなって、彼女は今同じ会社の別ゲームをしている。

そして、どんなに小説を読んで欲しくても

達也の書いた小説を読む事はなかった。

だから、彼女の感想が聞きたくてもそれもできない。

みるくがもし、今、またウエーディングドレスを借りて

挙式をしたいと言われたらなんというだろう。

みるくの記憶がここのところあんなになくなっているのも、

達也がつかささんと遊ぶ事を選んでからだとみるくの主治医からは

言われている。

みるくは保険の仕事をしていたから毎週、水曜日の夜中は定期的にアポイントが取れる。

その、週一度の楽しみの日につかささんはわざと達也を誘って、

「さあ、あなたはどっちを選ぶの」

と、迫ってくる。

そして、つかささんが勝つと誇らしげにTwitterに書くのだ。

ハートマーク一杯つけて、愛されている。

選ばれていると……。

選ばれなかったことを受け入れるだけでも

相当のショックなのに、これ見よがしに書かれた記事に

視野狭窄、声も出なくなる。そして、記憶削除。

解離性健忘。

解離性健忘は解離症の一種で，通常のもの忘れでは一般的に失われることのない重要な個人的情報を想起できなくなる病態である。 通常は心的外傷またはストレスによって引き起こされる。 診断は，健忘を来しうる他の原因を除外した後，病歴に基づいて行う。 治療は精神療法であり，ときに催眠法または薬剤を使用する面接法を併用する。

仕方がないことなんだろうな。

そんな悲しいことは誰だって忘れてしまいたいもの。

達也が、他の女の人といちゃつくたびにみるくの記憶は

若年性アルツハイマーのように途絶えていくのだ。

はじめは、みるくに対して本の遊び心しかなかった。

何度か遊び心でチャットエッチをしてそれで終わりに出来ると思っていたのだ。

ところが、ストーカーのように粘着してくる。

７度もメールの着信拒否をしているねのに、新しいメルアドを作って

連絡してくる。

重いと感じながら、諦めるしかない状態。

達也も女性に対しておかしいけれど、みるくも不思議な存在だ。

舞妓から芸者の仕事をしていたというのに、未だに処女って

あり得るのだろうか。

最近では、みるくが他の男の人のお嫁さんになるような話をすると、

焼きもちさえ焼いている自分の不可思議な支配欲に驚いてしまう。

みるくは、必死で達也から別なことに依存しようと努力している。

ガーデニングだったり、運動だったり、小説だったり。

でも、結局さみしくて毎日のように達也に連絡してくる。

２４時間、全く連絡できないと電報が届く。

周りの女たちはういんりーちゃんにしてもつかささんにしても

結局、離れてしまったがみるくだけは達也の小説の成功を固く信じて

ずっとついて来ている。

拾った子犬が、ちょっと餌をあげたらずっと家までついて来た。

そして、どんなに追っ払おうとどんなに釣れなくしても、

忠犬はちこうのように達也を待っている。

みるくとのSkype中に女を抱こうが、みるくとパーティー組んでいるのに

途中で他の女の所に行こうが、みるくの記憶障害が激しくなるだけで

くっついてくるのだ。

もうあきらめた。

達也のアスペルガー症候群の気紛れや

女癖の悪さを受け入れてくれる女は他にいない。

みるくのメンタルがもう少し安定してくれる事を心から祈っている。

って、原因は私じゃないか><

DEATH NOTEがあったら、みるくの名前を削除したいDEATH!!

殺したいくらい愛している事に気付いていないだけなのかも。

だって、理不尽なのは解っていても、みるくが他の男といるのは嫌なのだ。

「フレ削除しておけ」

ひどいわがままだよな。

みるくは、必死で笑顔になる努力をしている。

「達也さんに楽しんでもらえるように」

「達也さんの喜ぶ顔が見たいから」

けなげだよな。

最近では、みるくは週に一度ヘルパーさんを雇って掃除を教わっているみたい。

親からネグレクトされて育っているから片付け方とかネットで調べてやっていたみたい。

わたしのいい嫁になろうとして努力しているのに放置できないよ。

ここ３日、都立城北中央公園のお花の水やりに行っている。

たかがボランティアと達也は思っていたのだが、

一日に朝夕合わせ４時間以上、この炎天下、重労働だよな。

「沢山のお花を見ていると色んな人がいていいと思えるの」

達也をありのままそのまま受け入れようと切磋琢磨している。

そんな彼女を見ていると、捨てるなんて出来ないよな。

グラジオラスやひまわり、インパチェンスに

葉鶏頭など色んな花が咲き乱れている。

明日、台風だって。

みるくの水やりも少しは楽になるかな。

色々あったけど、幸せになろうな。みるく。