いとなみ

春秋花壇

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スカイプをしながらゲームの中で他の女とイチャイチャしたらブチ切れられた 128

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2021年06月15日

今日はにいにいの誕生日だ。

夕方には何か買ってお祝いに行きたいな。

ハーハー。

ぜーぜー。

さっきまでのパニック状態もだいぶ収まって来た。

はい、大きく深呼吸してニーと笑ってみよう。

でりしししし。

でりしし。

꒰* ॢꈍ◡ꈍ ॢ꒱.*˚‧


ガチャーン。

箸をステンレスの流しに放り投げる。

どすーん。

ごとーん。

プラスチックのボウルを板の間に打ち付ける。

手当たり次第に投げてもよさそうなもの、

壊れそうにない物を力任せにぶつける。

ひさしぶりのみるく火山の大噴火。

「ばかだーーー」

「ばかー」

「何回おんなじことやってるんだよ」

マジに悲しいほど、思い込みが激しい。

夜中2時過ぎまで、達也さんとスカイプしていた。

5月の17日に課金が切れてから、

みるくは敢えて無課金のままにしていた。

日課を達也さんと熟すわけでもない。

他の人と一緒にパーテイーを組んで遊んでるのが丸見えなこのゲームは、

ヤンデレの元凶であった。

住宅村にいて、装備を脱いでいる事さえ解ってしまうから。

一緒に遊ばないんだったら、お金がないのに課金するまでもないと判断した。

ところが今日の夜中、Skypeしている時に達也さんはゲームのチャットの音を

カチャカチャと響かせていた。

その途端、みるくとSkypeしてるのに

あんすずさんとイチャイチャしていた事を思い出してしまう。

居てもたってもいられなくなって、Skypeを切ってから

ゲームマネーを買いに行った。

にこにこして戻って、仮眠を取り、課金を入力してログインした。

達也さんはログインしているみたいだ。

Skypeしてもでない。

びっくりさせようととびっきりのサプライズを用意できたみたいに

一ヵ月ぶりのデートを楽しみにして、ログインする。

きっと達也さんは、喜んでくれる。

「おお、課金したのか」

ってね。

あの時のみるくは、きっと、期待に胸を膨らませて、

頬まで赤くして長いまつ毛をしぱしぱさせて愛らしい表情をしていた。

「富良野にラベンダーを見に行きたいね」

「札幌に、ライラックを見に行きたいね」

「二人で満天の星空を見たいね」

「天籟が聞こえるのかな」

何時まで待っても、何年待っても

新型感染症のせいでその希望を叶える事は出来なかった。

だから、せめてゲームの中で逢って、

「頭撫でてもらう」

「ハグしてもらう」

「まったりと二人で同じ時を過ごす」



着るお洋服は、水色に白がいいかな。

リアルのお洋服も着替えて、

ガーリーな小花模様の刺繍が施してあるTシャツにしてみた。

スカートは、ロングの薄いデニムにパッチワーク柄。

ナチュラルで動きやすいこのコーデは森ガールっぽくてみるくのお気に入り。

薄化粧もして、淡いピンクのリップも紅筆でつけてみた。

心のおもてなし完了。

これがリアルだったら、一ヵ月ぶりのデートにまともに達也さんの

目を見る事も恥ずかしさで出来ないかも知れない。

まるで、JKのように梅雨の後先のあじさいのような

カラーコンタクトの瞳を潤ませている。

胸ときめかせ、どきどきしながらログインした。

うーん、心臓が脈打っている。

明るい、楽しい、希望に満ちた喜びの一瞬。

「わーい」

達也さんに会える~♪

ばかだよな~

ほんとにおバカだよな

何回、同じことを繰り返せば気が済むんだ。

ログインして、フレンドの欄を開くと

「いたー♪」

パーティーに誘った。

でも、よく見ると誰かと組んでる。

みるくと一緒の時は迷宮、1時間くらいで疲れて止めるのに

もう何時間もたってる。

大丈夫。

大丈夫だよね。

1時間待った。

サプライズだから、いやみいったりしない。

我慢するの。

「誘ったの、誰かと組んでるね」

「うーん」

生返事。

達也さんはみるくがログインしてる事さえ知らなかったという。

それほど、新しい彼女に夢中なの?

2時間たった。

まだ、一緒にいるみたい。

なんで?

みるく、お家で待ってるよ。

7時26分。言い合いになってSkype切られた。

なんで、ゲームするとこうなるの?

さっきまでのわくわく感は、悲しみに色褪せて、まるで萎れた花のよう。

リアルの達也さんは、本当にやさしく食べ物を送ってくれたり、

大和言葉の本を送ってくれたり何度も何度も

プレゼントしてくれたりしてるのに。

「勝手にみるくが楽しみにして期待して絶望して……」

そんなところだろうか。

それでも待ってる。

突然、ブチ切れる。

そして、冒頭の大参事。

ヤンデレ復活。

治っていたはずなのに、再発するのに時間は大して必要じゃなかった。

8時40分。

ようやく頭を撫でてもらった。

達也さん、3時間待ち。

またこれが続くのか。

カサンドラ症候群、ヤンデレから何とか回復したくて、

色々試してみるが達也さんと一緒にいる限りは無理なのかもしれない。

精神呪縛をかけられているように元に戻ってしまう。

ぐるぐる、メビウスの帯のように気がつくと同じことの繰り返し。

プラシーボ効果を期待して自己啓発しても無理、無駄。

暖簾に腕押し。糠に釘。

死亡フラグを折りたいのに……。

はーー。

癇癪起こして色々ぶん投げたから、掃除しないとね。

今日は、訪問看護の人が来る。

お薬ちゃんと飲まないとね。


東京、梅雨入り宣言
からからに乾いていた
心に雨が静かに
滲みいる
愛と潤いを運んでる
色があふれ出す
春のパステルカラー
夏のあでやか色彩
秋のこっくり色
冬のモノトーン
四季折々の調べに
心ときめかせ
あなたと紡ぐ
一時をまったりと
楽しんでいる
和顔愛語
幸せ紡いでいくのです
ありがとうございます pic.twitter.com/DduL4t7dcQ
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