310 / 1,511
勝手に二世帯住宅
しおりを挟む
俺の名前は、伊藤 武志29歳。
俺には、幼い時に決められた婚約者、
佐藤 慶子23歳がいた。
過去形になっているのは、昨日婚約破棄をしたからだ。
婚約破棄をしたのは、俺の金で何の相談もなしに彼女が家を買ったから。
しかも、彼女の両親と住む為の2世帯住宅。
今年の秋に挙式予定だった。
今日は、6月13日。
6月10日の俺の誕生日にサプライズするつもりだったのだろう。
いきなり、仕事の帰りに待ち合わせをして車で4LDKの一戸建てに連れていかれた。
介護対応のバリアフリー。
「ここが私たちの住むお家」
慶子は、両親とにこにこしている。
広いエントランス。
トイレも一階と二階にある。
収納は、押し入れが3間。
階段の下や台所の床下収納。
子供が生まれたら、玄関わきの作り付けの靴箱に
バットや傘やレインコート入れられるようになっていた。
確かに、使い勝手は良さそうだ。
ベランダも広く、デッキチェアを置いてお茶でも出来そうな感じ。
でも、これいくらなんだろう。
ローンは?
住宅取得税は?
固定資産税は?
頭金を出してもらったことに対して贈与税は?
そして、秘密裏に義理の両親と進めて行ったことにつまはじきにされた感じ。
別にマウント取りたいわけじゃないけどあんまりだよな。
「はー?」
そりゃあ、確かに素敵なお家だけど……。
車2台分の駐車場がある。
「ここなら、子供が生まれてもずっと住める」
ふむ。
「あなたの仕事場からも近いし、近所に大きなスーパーもあるわ」
へー。
「ここにわたくしの両親も住むから、子供が生まれても安心ね」
うーん、何かがずれている。
「ローンや頭金はもう決まっているから、あなたは明日
契約に行けばすべてオーケー」
おいおい、ちょっと違うだろう。
俺はだんだん不機嫌になっていく。
義両親は本当にうれしそうに内覧している。
どうやら、設計から施工までほとんど注文住宅。
それを聞いて、俺の怒りはMaxになった。
確かに俺は、日本でも一流と言われる大学を卒業し、
一流と言われる企業に勤務している。
1位はM&Aキャピタルパートナーズの推計3010万円(前年推計2392万円)だった。 2位は不動産賃貸業を展開するヒューリックで推計1430万円。 3位三菱商事(1251万円)、4位日本M&Aセンター(1217万円)、5位ストライク(1206万円)。
このくらいの家を買うのは、造作も無い事なのかもしれない。
だが、しかーし。
「悪い、二人きりで話したい」
義両親にはとりあえず帰ってもらって、
二人でファミレスに行った。
「ねー、なんでそんなに機嫌が悪いの?」
そんな事も解らないのか。この女は……。
とりあえず、この怒りを何とかしたかったので、
軽い食事を注文する事にする。
モッツァレラチーズのピザ
小エビのカクテルサラダ
ほうれんそうのソテー
冷たいかぼちゃスープ
辛味チキン
ドリンクバー
「足らなけばまた注文すればいいよな」
腹が立ってるのと空腹が手伝って、
何時もより上手いと感じてしまうから不思議だ。
とくに小エビのサラダがめっちゃうまかった。
一通り食べ終わると、ゆっくりと山ぶどうのジュースを口に含む。
渋みがなんともいえない甘さと絡まってさわやかなお味。
「で、君はお家を買うということに対してどう思ってるんだ?」
「両親が頭金を出してくれて、ローンはあなたでわたしとの共同名義で
購入予定だけど何かまずかった?」
はうーー。
「君との婚約は破棄する」
「え、なんで?」
「あのさ、エルメスのバッグを買うのとは違うんだよ」
彼女はまだきょとんとしている。
「家なんて、一生に一回か二回、多くても3回。
長期的な計画を立てて買うものだ。それに俺の両親はどうするんだ?」
「介護が必要になったら、一緒に住むつもりだけど……」
「独りの介護だけでも大変で、本当に大変なのに4人も……」
俺は、小さい時おばあちゃんと一緒に住んでいた。
そのおばあちゃんが在宅介護で5年くも寝たきりだったのだ。
なのに、慶子はニコニコした笑顔で
「案ずるより産むがやすしよ」
なんとまあ、ノーテンキな。
「取り敢えず、しばらく様子をみさせてもらう」
俺がおかしいいのかな。
何の相談も無かった事に俺は怒ってるんだけど……。
それにしてもあの家の裏庭、色んな種類の紫陽花が植えられて、
さまざまなグラデーションが心に沁みていく。
梅雨の後先の季節を体感してみるのも悪くはないのかも知れない。
「武志さんの妻になりたかったな」
ショボーンとうつむいている。
その途端、俺の胸は鷲掴みにされたようにどくんと脈うった。
しばらく、重い沈黙が続く。
耐えられなくなって、俺は思わず
「今度は買い物一緒に楽しみたいな」
彼女は、恥ずかしそうに上目遣いで
「ごめんなさい」
と、素直に謝った。
婚約は破棄したけど結婚式は予定通りでもいいのかも知れない。
こいつとなら、一緒に苦労してもいいと思えたんだ。
秀外恵中という言葉が当てはまると思っていた彼女だが、
学校の勉強ができるのと生活の知恵は違うのかも知れない。
だったら、一緒にいてやらないとな。
お金は身の守りであり,知恵も身の守りである。
しかし知識や知恵の利点は,人の命を保たせることだ。(伝 7:12)
俺には、幼い時に決められた婚約者、
佐藤 慶子23歳がいた。
過去形になっているのは、昨日婚約破棄をしたからだ。
婚約破棄をしたのは、俺の金で何の相談もなしに彼女が家を買ったから。
しかも、彼女の両親と住む為の2世帯住宅。
今年の秋に挙式予定だった。
今日は、6月13日。
6月10日の俺の誕生日にサプライズするつもりだったのだろう。
いきなり、仕事の帰りに待ち合わせをして車で4LDKの一戸建てに連れていかれた。
介護対応のバリアフリー。
「ここが私たちの住むお家」
慶子は、両親とにこにこしている。
広いエントランス。
トイレも一階と二階にある。
収納は、押し入れが3間。
階段の下や台所の床下収納。
子供が生まれたら、玄関わきの作り付けの靴箱に
バットや傘やレインコート入れられるようになっていた。
確かに、使い勝手は良さそうだ。
ベランダも広く、デッキチェアを置いてお茶でも出来そうな感じ。
でも、これいくらなんだろう。
ローンは?
住宅取得税は?
固定資産税は?
頭金を出してもらったことに対して贈与税は?
そして、秘密裏に義理の両親と進めて行ったことにつまはじきにされた感じ。
別にマウント取りたいわけじゃないけどあんまりだよな。
「はー?」
そりゃあ、確かに素敵なお家だけど……。
車2台分の駐車場がある。
「ここなら、子供が生まれてもずっと住める」
ふむ。
「あなたの仕事場からも近いし、近所に大きなスーパーもあるわ」
へー。
「ここにわたくしの両親も住むから、子供が生まれても安心ね」
うーん、何かがずれている。
「ローンや頭金はもう決まっているから、あなたは明日
契約に行けばすべてオーケー」
おいおい、ちょっと違うだろう。
俺はだんだん不機嫌になっていく。
義両親は本当にうれしそうに内覧している。
どうやら、設計から施工までほとんど注文住宅。
それを聞いて、俺の怒りはMaxになった。
確かに俺は、日本でも一流と言われる大学を卒業し、
一流と言われる企業に勤務している。
1位はM&Aキャピタルパートナーズの推計3010万円(前年推計2392万円)だった。 2位は不動産賃貸業を展開するヒューリックで推計1430万円。 3位三菱商事(1251万円)、4位日本M&Aセンター(1217万円)、5位ストライク(1206万円)。
このくらいの家を買うのは、造作も無い事なのかもしれない。
だが、しかーし。
「悪い、二人きりで話したい」
義両親にはとりあえず帰ってもらって、
二人でファミレスに行った。
「ねー、なんでそんなに機嫌が悪いの?」
そんな事も解らないのか。この女は……。
とりあえず、この怒りを何とかしたかったので、
軽い食事を注文する事にする。
モッツァレラチーズのピザ
小エビのカクテルサラダ
ほうれんそうのソテー
冷たいかぼちゃスープ
辛味チキン
ドリンクバー
「足らなけばまた注文すればいいよな」
腹が立ってるのと空腹が手伝って、
何時もより上手いと感じてしまうから不思議だ。
とくに小エビのサラダがめっちゃうまかった。
一通り食べ終わると、ゆっくりと山ぶどうのジュースを口に含む。
渋みがなんともいえない甘さと絡まってさわやかなお味。
「で、君はお家を買うということに対してどう思ってるんだ?」
「両親が頭金を出してくれて、ローンはあなたでわたしとの共同名義で
購入予定だけど何かまずかった?」
はうーー。
「君との婚約は破棄する」
「え、なんで?」
「あのさ、エルメスのバッグを買うのとは違うんだよ」
彼女はまだきょとんとしている。
「家なんて、一生に一回か二回、多くても3回。
長期的な計画を立てて買うものだ。それに俺の両親はどうするんだ?」
「介護が必要になったら、一緒に住むつもりだけど……」
「独りの介護だけでも大変で、本当に大変なのに4人も……」
俺は、小さい時おばあちゃんと一緒に住んでいた。
そのおばあちゃんが在宅介護で5年くも寝たきりだったのだ。
なのに、慶子はニコニコした笑顔で
「案ずるより産むがやすしよ」
なんとまあ、ノーテンキな。
「取り敢えず、しばらく様子をみさせてもらう」
俺がおかしいいのかな。
何の相談も無かった事に俺は怒ってるんだけど……。
それにしてもあの家の裏庭、色んな種類の紫陽花が植えられて、
さまざまなグラデーションが心に沁みていく。
梅雨の後先の季節を体感してみるのも悪くはないのかも知れない。
「武志さんの妻になりたかったな」
ショボーンとうつむいている。
その途端、俺の胸は鷲掴みにされたようにどくんと脈うった。
しばらく、重い沈黙が続く。
耐えられなくなって、俺は思わず
「今度は買い物一緒に楽しみたいな」
彼女は、恥ずかしそうに上目遣いで
「ごめんなさい」
と、素直に謝った。
婚約は破棄したけど結婚式は予定通りでもいいのかも知れない。
こいつとなら、一緒に苦労してもいいと思えたんだ。
秀外恵中という言葉が当てはまると思っていた彼女だが、
学校の勉強ができるのと生活の知恵は違うのかも知れない。
だったら、一緒にいてやらないとな。
お金は身の守りであり,知恵も身の守りである。
しかし知識や知恵の利点は,人の命を保たせることだ。(伝 7:12)
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
季節の織り糸
春秋花壇
現代文学
季節の織り糸
季節の織り糸
さわさわ、風が草原を撫で
ぽつぽつ、雨が地を染める
ひらひら、木の葉が舞い落ちて
ざわざわ、森が秋を囁く
ぱちぱち、焚火が燃える音
とくとく、湯が温かさを誘う
さらさら、川が冬の息吹を運び
きらきら、星が夜空に瞬く
ふわふわ、春の息吹が包み込み
ぴちぴち、草の芽が顔を出す
ぽかぽか、陽が心を溶かし
ゆらゆら、花が夢を揺らす
はらはら、夏の夜の蝉の声
ちりちり、砂浜が光を浴び
さらさら、波が優しく寄せて
とんとん、足音が新たな一歩を刻む
季節の織り糸は、ささやかに、
そして確かに、わたしを包み込む
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる