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お届け物の娘です。ご賞味ください。11
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何人もの使用人たちがあたふたと廊下を急ぎ足で動き回っている。
これから、婚姻届けを祐介さまと役所に出し、
そのまま新婚旅行に行くはずなのに……。
洋子はお義父さまの心配よりも自分が得損なう楽しみの方が
気にかかってしまう。
そんな自分を不謹慎で愛がないと自責の念に駆られる。
仕方の無い事ですよね。
毎日看病してるとは言え、この家に来てまだ2カ月。
突然のお義父さまの余命3カ月宣言だったのだから。
そして、一日の休みも無くずーと介護。
15歳の少女には耐えがたい現状でした。
痛みの中でやせ細っていく義理の家族を見ているのは
忍びなかったのです。
あれほどの痛みの中で、生きている意味があるのだろうかとさえ
思ってしまいました。
始めは真剣に毎日、少しでも痛みが
和らぎますようにと祈願、嘆願、懇願しました。
でもそのいのりは聞き届けられる事は無かった。
人生に偶然と言うモノがないんだとしたら、
その痛みを通してお義父さまは何かを学ばなければならないのでしょう。
でも、それは15歳の少女から見たら、この世の地獄。
いっそのこと、安楽死をとさえ思っている自分に何度も身震いした。
「快」が人生の目的であるなら、逸脱しているんじゃないかと……。
まだ抱かれた事も無い夫の祐介さまの夜の散歩に
これ程不安と嫉妬を覚えるとしたら、
何十人もの女に手を付け、子供までなしているお義父さまの
女たちの生霊が怨念となって苦しませているのかも知れない。
因果応報なのだろうか。
先日、ガーデニングのボランティアで知り合った
80歳近いおじいちゃまは同じ膵臓のがんのステージ4なのに痛みはないと言う。
健康は一つだけ、病気は1000もある。
症状も様々なのだろか。
洋子がお義父さまのお部屋に到着するのと同時くらいに
主治医と看護師さんが駆け付けた。
付き添いの物から事情を聴き、問診、聴診、打診をして、
点滴にお薬を注入している。
予定では、あと2週間くらいはということだったのに……。
「今夜が山場です」
「ご家族やご親戚に連絡してください」
こんなとき、どんな言葉を掛けたらいいのか洋子は解らなかった。
途方に暮れて突っ立っている洋子に、お義父さまは
「ありがとう」
と、涙を流して話しかけてくださる。
こけた頬、肌の色も艶もはりも洋子がこの家に来た頃から比べたら
考えられないほどやつれてすい臓がんの痛みと
るいそうがどれ程の激しい戦いだったのかを
物語っている。
「おとうさま……」
「祐介をたのむ」
とぎれとぎれだが、一つ一つの言葉を丁寧にやっと口にしている。
洋子はただただお義父さまのてをさすっていた。
止め処なく流れる涙を拭おうともせずに。
これから、婚姻届けを祐介さまと役所に出し、
そのまま新婚旅行に行くはずなのに……。
洋子はお義父さまの心配よりも自分が得損なう楽しみの方が
気にかかってしまう。
そんな自分を不謹慎で愛がないと自責の念に駆られる。
仕方の無い事ですよね。
毎日看病してるとは言え、この家に来てまだ2カ月。
突然のお義父さまの余命3カ月宣言だったのだから。
そして、一日の休みも無くずーと介護。
15歳の少女には耐えがたい現状でした。
痛みの中でやせ細っていく義理の家族を見ているのは
忍びなかったのです。
あれほどの痛みの中で、生きている意味があるのだろうかとさえ
思ってしまいました。
始めは真剣に毎日、少しでも痛みが
和らぎますようにと祈願、嘆願、懇願しました。
でもそのいのりは聞き届けられる事は無かった。
人生に偶然と言うモノがないんだとしたら、
その痛みを通してお義父さまは何かを学ばなければならないのでしょう。
でも、それは15歳の少女から見たら、この世の地獄。
いっそのこと、安楽死をとさえ思っている自分に何度も身震いした。
「快」が人生の目的であるなら、逸脱しているんじゃないかと……。
まだ抱かれた事も無い夫の祐介さまの夜の散歩に
これ程不安と嫉妬を覚えるとしたら、
何十人もの女に手を付け、子供までなしているお義父さまの
女たちの生霊が怨念となって苦しませているのかも知れない。
因果応報なのだろうか。
先日、ガーデニングのボランティアで知り合った
80歳近いおじいちゃまは同じ膵臓のがんのステージ4なのに痛みはないと言う。
健康は一つだけ、病気は1000もある。
症状も様々なのだろか。
洋子がお義父さまのお部屋に到着するのと同時くらいに
主治医と看護師さんが駆け付けた。
付き添いの物から事情を聴き、問診、聴診、打診をして、
点滴にお薬を注入している。
予定では、あと2週間くらいはということだったのに……。
「今夜が山場です」
「ご家族やご親戚に連絡してください」
こんなとき、どんな言葉を掛けたらいいのか洋子は解らなかった。
途方に暮れて突っ立っている洋子に、お義父さまは
「ありがとう」
と、涙を流して話しかけてくださる。
こけた頬、肌の色も艶もはりも洋子がこの家に来た頃から比べたら
考えられないほどやつれてすい臓がんの痛みと
るいそうがどれ程の激しい戦いだったのかを
物語っている。
「おとうさま……」
「祐介をたのむ」
とぎれとぎれだが、一つ一つの言葉を丁寧にやっと口にしている。
洋子はただただお義父さまのてをさすっていた。
止め処なく流れる涙を拭おうともせずに。
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