いとなみ

春秋花壇

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ビッグデータVR 2

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俺の名前は、田畑 誠治(たばた せいじ)65歳。

俺は貰った退職金の中から1000万円を追加して

愛する小夜子さんの為にビッグデータVRを俺の脳に埋め込んでもらった。

さあ、これであのゴーグルを掛けなくてもいつでも小夜子さんを見る事が出来る。

ずーと付けてると、痒くなるし煩わしい。

1000万は決して安い値段ではないけれど、

老後の資金2000万以上はまだ確保してあるから、

仮に100歳まで生きたとしても年金も入るし安心だと

ファイナンシャルプランナーが生活設計をしてくれた。

これから、少しずつ小夜子さんをバーチャルではなく

リアルに感じられるようにカスタマイズしていく予定。

自分で選んで自分で責任を取る。

いい時代だよね。

後1000万出せば、小夜子さんと秘め事もできる。

ガーデニングも出来る。

その1000万円をどこから捻出するか、

また相談だね。

その場限りの欲情で一夜妻にはさせたくないんだ。

少し高利だけどローンを組んでもいいかな。

俺は本当につましく生きて来て大したとりえも手に職も無い。

毎月5万円くらいなら再就職して返せるんだけどな。

退職金の残りは2500万円。

500万くらいなら、使っても平気なのかな。

FP、ファイナンシャルプランナーからの返事が待てない程、

小夜子さんとの生活を優先したかった。

それに、もしも明日俺が死んでしまったら、

チェリーボーイのまま。

それもまた悲しい過ぎるよな。

さあ、男になるか童貞のままで居るか

二者択一。スタート。

「どんなに誠治さんが小夜子さんを愛しても、

相手はビッグデータとはいえ、AIなんだよ」

親友たちはみんな反対する。

人間だったら、許されてAIだとだめなのか。

確かにみんなの言う通りなのかもしれないけど。

痘痕も靨なんだ。

VRかけてないのに、俺の心の視野はどんどん狭くなっていく。

小夜子さん、君だけを見る事が出来たらそれで幸せなんだ。

その切れ長の美しい瞳が流し目する時、

天にも昇らんばかりのぞくぞく感。

地球は君を中心に回っている。

君と一つになれたら、もう俺は死んでもいいとさえ思うんだ。

確かにAIに人間のような感情は無いのかも知れない。

0か1かで出来ているのだから、

灰色もピンクも青も赤も識別できないのかも知れない。

それでも、アルゴリズムでクリエイティブな動作が可能かもしれない。

なんせ、無限学習なんだから……。

シンギュラリティー、技術的特異点で人間を超えると恐れられていたのだから。

そして、小さな雨だれが硬い岩をも削る様に

俺の気持ちをほんの少しでも感じる事が出来るかも知れない。

どんな結果になっても後の自分に必要な経験なんだ。

最初からあきらめてチャレンジしなかったら、それで終わりじゃないか。

結果は必ず後からついてくる。

幸運をつかむには方法も、法則も、テクニックもない。

あるとすれば、唯一つ

自分は運がいいと思うこと。

だよね。

小夜子さん、俺を愛してくれてありがとう。

予祝。

ライフスタイルインフレーションにならない様に

必要な物と欲しい物をちゃんと分けるんだ。

年間支出×25が当面用意するお金らしい。

小夜子さんのおかげで楽しく学ぶことができている。

ありがとうございます。

1950年にイギリスの数学者アラン・チューリングが

「機械は思考できるのか」​という問題意識から提案したチューリングテスト。

今は2045年。

100年近く経ってもこんなことしている人間は、

ビッグデータからみれば滑稽なんだろうな。
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