いとなみ

春秋花壇

文字の大きさ
上 下
184 / 1,511

お届け物の娘です。ご賞味ください。5

しおりを挟む
夜、婚約者の平川 祐介さま 27歳のご実家に到着。

大きな敷地に手入れの行き届いたお庭、

まさに金持ちの家という感じ。

テーブルに着くと、早速、食事が運ばれてくる。

前菜、コンソメのスープ、柔らかな牛のステーキ。

鹿鳴館時代を思わせるようなインテリアに

躾けられたメイドさんたちの行儀のいいこと。

まるで、三ツ星レストランかと思うような雰囲気と料理の数々。

わたくし、福留 洋子 15歳は、まだ子供だけど、

ゆき届いた心のおもてなしを堪能していた。

食事も終わり、みんなは飲み物を楽しんでいた。

祐介様のお父様が、

「今日のテーブルの装花の担当は誰だ」

と、言うと

30歳くらいの男性が近づき、

「わたくしです」

と、答えた。

「フム。彩はいい。草花の背丈も低めに設定してあって

ひっくり返したり袖に引っかからないようになっている。

それもオーケーだ。頑張ったな」

「ありがとうございます」

「だが……」

お義父さまはここで言おうか、個人を呼んで注意しようか迷っているようだ。

「わたしは、できるだけ人前で注意したりしないように気を付けてきた」

「何もここで言わなくてもとか今言わなくてもと、

主旨が理解できなくなるからだ」

「でも、今日は洋子さんにも知ってほしいから、

あえてここで今言います」

洋子は聞き耳を立てる。

注意を注ぐ。

お義父さまからの初めての訓戒だからだ。

「デンドロビウムは、花もちもいい。

花びらがパラパラ散ってテーブルを汚したりもしない。

花粉も気にならない。

においもきつくない。

廊下やちょっとしたエンドテーブルに生けるには

かまわないと思う」

「しかし、お招きの食卓は別だ」

「ここに生ける花は、姿かたち、色、香り、質感、花言葉。

主賓へのおもてなしだ」

「あ」

小さく、男の人は声を上げた。

彼は花言葉までは考えていなかった。

デンドロビウムの花言葉と由来
「わがままな美人」の花言葉は、ときには驕慢とさえ思えるような圧倒的な美しさにちなむといわれます。 デンドロビウムの英語の花言葉は「selfish beauty(わがままな美人)」です。

「本日の主賓は洋子さんだ。それを踏まえて選ぶべきだった」

洋子は初めて、お義父さまの人となりにふれた気がした。

どうしてこの人が、お金持ちになったのかもわかるような気がした。

彼は、TPOを常に意識し、気遣う人なのだろうと。

そして、平川御殿とも呼ばれるこのハーレムで、

どうして女たちが彼に群がるのかも垣間見た気がしたのだ。

話が終わると即座にテーブルの上の装花は白いバラに替えられた。

主賓洋子を心からもてなす花に変わったのである。

白薔薇の花ことばは、

「永遠の愛」 真っ白なバラは、「純粋さ、無邪気さ、若さ」が花言葉です。 また、「若者の愛」や「永遠の忠誠心」を表すことから、ブライダルローズと呼ばれることもあります。 「新たな始まり」と「永遠の愛」を象徴する白薔薇は、荘厳で静かな美しさを持ち、愛を伝える結婚式にふさわしい人気の花
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

季節の織り糸

春秋花壇
現代文学
季節の織り糸 季節の織り糸 さわさわ、風が草原を撫で ぽつぽつ、雨が地を染める ひらひら、木の葉が舞い落ちて ざわざわ、森が秋を囁く ぱちぱち、焚火が燃える音 とくとく、湯が温かさを誘う さらさら、川が冬の息吹を運び きらきら、星が夜空に瞬く ふわふわ、春の息吹が包み込み ぴちぴち、草の芽が顔を出す ぽかぽか、陽が心を溶かし ゆらゆら、花が夢を揺らす はらはら、夏の夜の蝉の声 ちりちり、砂浜が光を浴び さらさら、波が優しく寄せて とんとん、足音が新たな一歩を刻む 季節の織り糸は、ささやかに、 そして確かに、わたしを包み込む

注意欠陥多動性障害(ADHD)の日常

春秋花壇
現代文学
注意欠陥多動性障害(ADHD)の日常

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

感情

春秋花壇
現代文学
感情

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

陽だまりの家

春秋花壇
現代文学
幸せな母子家庭、女ばかりの日常

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...