いとなみ

春秋花壇

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お届け物の娘です。ご賞味ください。4

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「あ、そうだ。さっき、父から電話で夜、家に寄るように言っていたよ」

「お父様のところにですか」

「うん」

「何時にですか」

「夕食を一緒にと言っていたから19時くらいかな」

「了解、ぴっ」

洋子は敬礼をする。

わたくし、福留 洋子 15歳はいま、

婚約者の平川 祐介さま 27歳とガーデニングを楽しんでいる。

彼の下宿の空いた花壇に

クリサンセマムノースポールと、勿忘草、花簪を植えようとしていた。

あと1か月で、洋子は祐介様の花嫁になる。

それまでに、なんとしても彼の考え方生き方が知りたかった。

もしも、祐介様のお父様のようにハーレムを作るのが

人生の目的なら、家出も辞さない覚悟でいた。

洋子は、洗礼こそ受けていなかったが、

クリスチャンとして生活したかったのである。

「不釣り合いにも不信者とくびきを共にしてはなりません」。

(コリント第二 6:14)

妻は夫が生きている間はつながれています。

しかし,もし夫が死の眠りに就くことがあれば,

望みの人と自由に結婚できます。

ただし,主に従う人とだけです。

コリント第一 7:39

だって、そうじゃありませんか。

それぞれ生活のための時間があり、

二人で過ごせる時は限られているのに

それを他の女性と奪いあい共有しなければいけないなんて。

むり、ムリ、無理。

必要以上の摩擦、寂しさが予想されるのは

洋子みたいな何も知らない15歳の子供でも予測できた。

「祐介様は洋子のことがお好きですか」

単刀直入に聞いてみた。

「そうだな。逢う度に好きになっていくな」

少し照れながら、それでも洋子の目をしっかり見て答えてくださる。

誠意が感じられる。

よくわからないけれど、洋子も祐介様のことを会うたびに好きになっている。

二人は、幼いころからの許嫁。

なのに、二人で何かをしたり、意見の交換をしたりすることさえなかった。

海のものとも山の物とも皆目見当がつかない状態でいた。

それがいきなり、お弁当を持たされて、

「お届け物の娘です。ご賞味ください。」

のお墨付き。

どう考え、どう対処していいのか全く分からなかったのである。

用意したお花たちを定植し、水を上げて

ふっとため息一つ。

この花たちは、植えられたら最後、ここから動くこともできない。

命の限り、生命を全うする。

雨風をしのぎ、よほどの愛好家でない限り、

添え木や寒冷紗さえしない状態で、

自然と折り合いをつけ虫や菌の害に耐え、

真っ向勝負をするのだ。

「お花は強い」

「そうだな、不平も不満も言わず、命の限り咲く」

一緒にガーデニングを楽しみ、

経験の分かち合いができたことがとても誇らしく思えてきた。

ひょっとしたら、祐介様はわたくしを大切に扱ってくださるかも。

そんな淡い期待に胸を膨らませながら、

シャワーを浴び、夜のお招きに備えていると、

祐介様がそっとハグしてくださった。

胸がときめく。

恥ずかしさで目がウルウルになってしまう。

「15歳には刺激が強すぎます」

「後悔はさせない」

少しずつ、祐介様色に染まっていく。

心のどこかでもっと融合することを望んでいる。

「洋子のえっち」

心の中でそっとつぶやいた。

風がそよぐ。

彼は誰時(かはたれどき)の夕暮れはうっすらとほほを染め、

ベールのような薄絹を流した雲が流れる。

二人をやさしく包んでくれる。

地球を感じよう。

今を楽しもう。

明るい未来が待ってるのだから。

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