いとなみ

春秋花壇

文字の大きさ
上 下
109 / 1,108

エンテレキーが枯れる街

しおりを挟む
 わたくし、ミシェル・ド・マチュー 20歳は、

ピエール・ド・デュラン様 32歳から、

婚約破棄されました。

理由は、わたくしが植物や動物と遊んでばかりいて、

魔法を覚えようとしない。

聖女にはなれないということでした。

最近、ピエール・ド・デュラン様のおそばには、

美しくてかわいいカトリーヌ・ド・マチューさま 26歳が

いつも一緒に寄り添っていらっしゃいます。

彼女はとてもあざとかわいいひとです。

賢いのです。

殿方がどんな女をかわいいと思うかをよくご存じなのです。

婚約破棄されたわたくしは、この国にはもう必要ないようで、

本日、国外れの深い森に捨てられてしまうらしいのです。

7歳の時にこの国にもらわれてきて、

13年間ずっと目立たないように働いてきたのに、

ぼろ雑巾のように捨て去られるのです。

この国には、たくさんの魔物がいます。

でも、くに民は有り余るエンテレキー(生命力)

自然治癒力を得ることで何とか対処してきました。

この国の美しい自然は、このエンテレキーによって

きらきらと輝く躍動感とみなぎる光を放ち、

人々の必要を満たすことができていました。

わたくしは、遊んでばかりいたわけではありません。

この生命力を調整していたのです。

暴走しないように、過不足のないように

神様と心を一にして一人でも多くの人たちが

感謝を感じることができるようにする。

それがわたくしの生まれ持っての大きなお仕事でした。

それによって、温暖な気候と豊潤な雨。

稲妻、空気、陽光、月のしずくなどがこの土地に降り注いでいたのです。

了解しました。

わたくしはわたくしを必要としてくれる人たちのために

共存することにいたします。

さようなら、ありがとうございました。

あれから、1年。

ピエール・ド・デュラン様の国は、

風の噂では、雨も一滴も降らず、

大変な飢饉に見舞われているようです。

最初は、国の財宝と食料を交換したりしていたようですが、

あっという間にそれも尽きたようでございます。

ピエール・ド・デュラン様やカトリーヌ・ド・マチューさまが

どんなに祈っても頑張って雨ごいしても、

雨粒一つ、降ることはなかったそうです。

わたくしの引っ越してきたところは、肥沃な土地に代わっています。

きらきら光る湖のほとりには、匂やかな水仙が咲き誇り、

蝋梅や梅や山茶花が咲き誇っています。

人はこの国をいつしか生命力のみなぎる国と呼ぶようになっています。

海のものも山のものも小ぶりですが、

味が濃く、噛み応えのあるしっかりしたお味。

お口の中がパラダイスなのです。

皆ニコニコ笑顔で、元気がよく、

助け合って暮らしています。

鰆の塩焼きの香ばしい香りが鼻をくすぐります。

タラの芽の天ぷらもおいしいですよね。

菜の花のお浸しはいかがでしょうか。

たっぷりと鰹節をかけてお召し上がりください。

なまこのこのわたも珍味ですよね。

牡蠣に、カタクリをまぶし、さっと湯煎いたしました。

ぷりぷりの触感をご堪能ください。

あんこうの肝に紅葉卸とポン酢はいかがでしょうか。

もちろん、地鶏の卵もアツアツのご飯におすすめです。

白いご飯もつややかです。

炊き立てのおかまのふたを開けると、

カニの穴がぷつぷつとできて本当においしそう。

至福のひと時をプレゼントしたい。

貴方もご一緒に、この国の自然を楽しみませんか。

無生の創造物だけでなく,有生の創造物もすべて,

その存在と命を最初の生き物を造り出した神の精霊に満たされているのです。

そうです。

すべてのものは全能者の息によって命を与えられているのです。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

生意気な女の子久しぶりのお仕置き

恩知らずなわんこ
現代文学
久しくお仕置きを受けていなかった女の子彩花はすっかり調子に乗っていた。そんな彩花はある事から久しぶりに厳しいお仕置きを受けてしまう。

おむつオナニーやりかた

rtokpr
エッセイ・ノンフィクション
おむつオナニーのやりかたです

女子高校生集団で……

望悠
大衆娯楽
何人かの女子高校生のおしっこ我慢したり、おしっこする小説です

同僚くすぐりマッサージ

セナ
大衆娯楽
これは自分の実体験です

意味がわかるとえろい話

山本みんみ
ホラー
意味が分かれば下ネタに感じるかもしれない話です(意味深)

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

処理中です...