いとなみ

春秋花壇

文字の大きさ
上 下
73 / 1,108

婚約破棄ですって 楽しいですね

しおりを挟む
「うふふふ」

「今日もまた、楽しそうですね」

「うん、婚約破棄されるみたい」

「あら、またお小遣いが増えますね」

「そうね、そのお金で今度は何をしようかな」

「毒子様、あなたはほんとに悪役令嬢」

「ありがとう」

悪役令嬢 毒子は別にお金が欲しいわけではない。

だって、チートが使えるからお金が無くなれば増やせばいいだけの話。

familyfunds "dokuko" 99999999

これで、毒子の世帯のお金は、99999999になる。

使えば、また同じようにすれば、99999999。

じゃあ、何で婚約破棄をして遊んでいるのかというと、

要するに暇なのだ。

そして、恋をしたことのない毒子は、男の人がどんなことで

女と結婚したがり、どんな理由で別れたくなるのか知りたかった。

さて、今回のお相手がお見えになりました。

坂巻 和人 29歳。

資産家のご子息だ。

「ひさしぶりだね」

「うふふ、そうですね」

「ずいぶん、楽しそうだね」

「はい、とっても幸せですもの」

「その笑顔を一生見ていられる男は幸せ者なんだろうな」

「ありがとうございます」

本当に楽しそうに嬉しそうに、優しい笑顔を浮かべている。

そこにちょうどこのダンジョンの老人たちがガーデニングのために、

集まってくる。

「毒子さん、この前植えたビワが少し大きくなりました」

「毒子さん、蝋梅のお花がきれいに咲いています」

「どくこさん、また、みんなでわらび餅が食べたい」

それぞれ、毒子に話しかけたくて仕方がないようです。

「人気者なんだね」

「はい、家族ですから」

「え?」

「ここは一つの家族です。共同体なんです」

「みんな、幸せそうだな」

「ここは天国じゃからのー」

「ここにいるだけで、生まれてきてよかったと思えるんじゃ」

「ここにこれて本当によかった」

ここにいる老人たちは、東京都の孤独死予定の老人。

そして、ここは、悪役令嬢 毒子が経営する

不親切極まりないダンジョンである。

なんの規則もない。それぞれが勝手に好きなことをしている。

釣りをしたり、ガーデニングしたり、

そして、ここに勤めている人たちも、

自分で上司を選ぶことができた。

「毒子さん、お願いがあります」

「はい」

「婚約してると思うのですが、破棄してほしいのです」

「はい、喜んで」

「え」

「だって、あなたが選んだ道なのだから、

あなたが決めたらいいと思います」

「毒子さん、あなたという人は……」

「破棄していただいたうえで、改めてお願いがあります」

「はい」

「わたしをこの病院で雇ってほしいのです」

「だって、あなたには継がなきゃいけない

立派な病院があるじゃないですか」

「確かに、わたしは外科医ですが、

ここにいる患者さんたちと生きていきたいんです」

「どうして?」

「わたしは、難しいオペをして、延命治療するのが嫌なのです」

「なるほど」

「ここでは、延命治療は禁止と伺っています」

「そうね」

「わたしは、実家とは縁を切ります」

「あら」

「あなたのそばにおいてください」

こうして無事に婚約は破棄された。

そして、優秀な外科医が一人増えた。

今回は、正当事由のない婚約破棄の慰謝料を頂かないことにします。

ありがとうございます。

たのしいねー。







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

生意気な女の子久しぶりのお仕置き

恩知らずなわんこ
現代文学
久しくお仕置きを受けていなかった女の子彩花はすっかり調子に乗っていた。そんな彩花はある事から久しぶりに厳しいお仕置きを受けてしまう。

おむつオナニーやりかた

rtokpr
エッセイ・ノンフィクション
おむつオナニーのやりかたです

女子高校生集団で……

望悠
大衆娯楽
何人かの女子高校生のおしっこ我慢したり、おしっこする小説です

同僚くすぐりマッサージ

セナ
大衆娯楽
これは自分の実体験です

意味がわかるとえろい話

山本みんみ
ホラー
意味が分かれば下ネタに感じるかもしれない話です(意味深)

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

処理中です...