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春秋花壇

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霜降(そうこう)

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10月23日。

今日は霜降(そうこう)

霜降は、二十四節気の第18。九月中。 

現在広まっている定気法では太陽黄経が210度のときで

10月23日・24日ごろ。暦ではそれが起こる日だが、

天文学ではその瞬間とする。

恒気法では冬至から10/12年後で10月22日ごろ。

期間としての意味もあり、この日から、次の節気の立冬前日までである。

「外に出してある観葉植物も家の中にそろそろ入れないと」

去年は、出しぱなしにして全部枯らしてしまった。

わたくし、本多 彩夏 ほんだ あやか(23歳)

コットンテレコドレープネックトップ

ウールライクツイードミモレ丈キュロット

綿のカーディガンを清楚に着こなしてみた。


今日は、おいしい秋刀魚でも買って

婚約者 小川 和弘 おがわ かずひろさま(29歳)の家に行って

お料理でも作ろう。

栗ご飯もいいな。

茶碗蒸しもいいよね。

お味噌汁は、ねぎとわかめかな。

揚げナスもおいしいかな。

「秋茄子は嫁に食わすな」という言葉がある。

 秋茄子は水分が多くおいしいので、

嫁には食べさせないという嫁いびり説。

茄子は身体を冷やすので、嫁の身体をいたわるためという説。

コインは、円形で長方形である。

結婚式場も決まったし、

後はドレスを選んだり一緒に楽しめたらいいな。

うふふ、わたくし、世界で一番幸せ。

今日は、アポイントとってないけど、

いつも勝手に行ってお掃除したりしてるから

すでに同棲に近い生活。

彼は秋刀魚が好きだから、喜んでくれるかな。

と、大根やカボスも買っていそいそと彼の家に急ぐ。

彼はすでに買った新居に引越し済み。

あとは、わたくしが越してくれば新婚生活がスタートできる。

合鍵で彼の家の鍵を開けると、

玄関に赤いハイヒール。

「ん?」

妹さんかお姉さんでもいらっしゃっているのかしら。

リビングに行ったけど、姿は見えず。

「まだ、寝てるのかな」

とりあえず、台所に行き買ってきたものを置く。

3人分はないから、秋刀魚をした処理したあと、

2つに切って塩を振った。

茶碗蒸しも二個しかないから、わたくしのぶんはなしかな。

お味噌汁は、OKだね。

おかずが足りなさそうなので、卵焼きを作った。

「よし、栗ご飯もたけた」

彼は寝てるのかな。

2階の寝室に向かう。

そーと、そーと。

起こさないように。

ところが、ダブルベッドに二人で寝ているみたい。

このベッド、わたくしと二人で寝るために買ったのに……。

二人ともまだ寝ている。

しかも、布団をめくると寄り添うように寝てる。

洋服はちゃんと着てる。

裸じゃない。それでも、

この家には、まだ客用の布団はない。

……。

「婚約破棄なの?」

「不倫なの?」

「浮気するなら、わからないところでやってよ」

怒りとも悲しみともつかないさまざまな感情が

洪水のように汚泥を運んでくる。

オリオン座流星群の輝く空から、堕天使のように

底知れぬ深みにまっさかさまに落とされる。

さっきまで、世界で一番幸せだと思っていたのに。

世界中のアンラッキーをひとりでしょったような気になる。

深呼吸して、落ち着こう。

短絡的な感情に任せた行動をしないように。

言葉は諸刃の剣。

一生を一緒に歩めるような関係にもそれっきりの関係にもできる。

何があったかじゃない。

どう捉え、どう対処したかだ。

子供じゃないんだから。

彼の伴侶になるんだから。

見なかったことにして、めくった布団をそっと元に戻す。

何もなかった。

何も見ていない。

女は港。

デーんとかまえて……。

そんなにわたくし、強くない。

「まずい。どうする?」まず移動する。

わたくしは、そっと鍵をかけて自分の家に戻った。

「ああ、神様、助けてください」

大きな葉を広げて、石蕗(つわぶき)の花が艶やかに華やかに咲いている。

『謙譲』『謙遜』『愛よ甦れ』『先を見通す能力』

『困難に負けない』 「困難に負けない」という花言葉は、

日陰でも常に緑色の葉っぱを茂らせている丈夫な性質に由来します。

結婚する前は両目を開けて、結婚したら片目をつぶって相手を見ろ。

つむった片目の視線は自分の心に向ければいい。

変えられるのは自分。

少し距離を置こうかな。

帰りに近所の神社の境内を散歩する。

手を洗おうと、柄杓を探すが見当たらない。

新型感染症で、撤去したのかな。

興奮しているのか、渇きを覚える。

両手で竹から流れ出る水をすくって飲めと書かれてある。

よく手をあらい、両手でゆっくりすくって飲む。

ゴクリゴクリと音を立てて。

体の細胞、一つ一つに静かに染み入るように

水分が流れ込んでいく。

ああ、生きてる。

活力が戻ってくる。

少なくとも、軽はずみな行動はしなくてすんだ。

思い描くことができれば、それは実現できる。

わたくしは、彼を信じるの。

幸せな夫婦になるの。

大丈夫ですよね。

赤い糸で結ばれているんですから。


桜の葉が、色を変えて季節を連れてくる。

神主さんは、落ち葉の掃除に余念がない。

嬉しい

楽しい

幸せ

ついてる

何度も何度も言い聞かせる。

変えられるのは自分。

いつでもどこでも心のおもてなしができるように

グレートプレゼンターになるの。

ゆっくりゆっくり玉砂利を踏みしめて歩く。

足の裏が心地よい。

どんな状況でも、考え方一つで幸せでいられるんだね。

どこをフォーカスするかだよね。

自問自答は繰り返される。

涙を覆い隠すようにポツリポツリと降る雨に

潤いと安堵を感じる。

心の中の憂いが飽和状態になると、

涙となって流れ出る。

幾千年にわたって、女たちは恋しい男を思い

涙の雫を流したことだろう。

川となり、大河となり海となるほどに……。

愛着と嫉妬とをともに織り成して。

夜、彼から電話があった。

「飯作ってくれたんだな。ありがとう」

「はい」

「お袋が倒れて入院したんだよ。

それで、妹が泊まったんだが……」

ああ、やっぱり妹さんだったのね。

「お母様は、大丈夫なの?」

「ああ、なんとか助かった。脳卒中らしいが、麻痺は残らないみたいだから」

「そう、助かってよかった」

「びっくりしたんじゃないか?二人で寝ていて」

「あは、あははは」

「ベッドのほかに寝ると来なかったしな」

「うんうん、うふふ」

笑ってごまかす。

「よしよし、お譲ちゃん、昔から、つらいと笑ってごまかすからな~」

「う・ん」

「かあさんにもあってほしいし、見舞いの帰りにうまいものでも食いに行くか」

「はい」

「大丈夫か」

「うん」

良かった。妹さんで。

「旦那の浮気に目をつぶっていれば、そのうちに帰ってくる」

という記事をネットで必死に検索していたのは、内緒の話。
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