50 / 1,479
寝坊
しおりを挟む
世の中には信じられないような人がいる。
まして、それが自分の一生の伴侶に選んだ人だったら……。
僕の名前は、藤原 克彦(ふじわら かつひこ) 29歳。
婚約者の名前は、副島 志保(そえじま しほ) 23歳。
二人は今日、結婚式の予定だった。
ところが、10時から始まる結婚式に彼女は9時過ぎても顔を出さない。
僕はだんだん、心臓がどきどきしてくる。
このまま、彼女が顔を出さなかったら。
何かあったのだろうか。
向かう途中で交通事故にでもあったのだろうか。
それとも、風呂場で倒れていたりするのだろうか。
義理の父母に聞いても、ただおろおろしているだけで
要領を得ない。
何度も、電話、メール、LINEしているのだが、
返答はない。
ああ、どうしよう。
来客者は双方で70名。
それでも、減らしに減らして厳選した人数だった。
10時10分前、やつと彼女が電話に出た。
「もしもし、大丈夫?」
「お・は・よ・う」
なんか寝起きのような声。
まさかねー。ありえないよねー。
「気絶したりしてた?」
「ううん、普通に二度寝してた」
「はあー?」
「どした?なにかあった?」
心の中で怒鳴りそうになる。
なにかあった?じゃねえだろう。
あーあ、結婚式始まっちゃったよ><
僕は自分がこれほど、怒り狂ったことを覚えていない。
もう、ひん握って、ねじって、つねって、お尻ペンペンして。
それでも、多分収まりがつかないだろう。
自分でも自分の感情が制御できないほど、
いらだちあせりふつふつと沸いてくる怒りを抑えられないでいた。
「あのさー、今日、何の日だかわかってる?」
「ん?なんだっけ」
あーあ、もうだめだ。
僕はこいつと二度と口を聞きたくない。
「今、結婚式場にいるんだけど、君との婚約は破棄する」
「えええ、なんでー」
「そんなこといわなきゃわからないのか」
たぶん、目は釣りあがり、仁王のような恐ろしい形相をしていると思う。
「ちょっと、寝坊しただけじゃない」
「ごめん、君とはもう無理」
電話を切ると、義理の父母、自分の両親の元に行き、
連絡は一応取れたこと。
二度寝したとのこと。
これ以上、彼女と話すのは自分の感情が制御できないので、
無理だと伝えた。
それとともに、来賓の皆様にも司会者に連絡を入れてもらった。
当然、式も披露宴も二次会もキャンセル。
皆様に深々と頭を下げ、お詫びをした。
人生なんて、こんなもんさ。
どんなにがんばっても、どこかで抜けたり倒れたり壊れたりする。
この期に及んでも、謝ることさえしない彼女を選んだことを僕は深く恥じた。
キャンセル料は義理のご両親が支払った。
ああ、結婚式のウエルカムボードも色あせて見える。
ぴえんこえてぱおん。
ぴえんこえてぱおんこえてぽかん。
ぴえんこえてぱおんこえてぎおん。
器が小さくてごめんな。
僕は君をフォローできない。
まして、それが自分の一生の伴侶に選んだ人だったら……。
僕の名前は、藤原 克彦(ふじわら かつひこ) 29歳。
婚約者の名前は、副島 志保(そえじま しほ) 23歳。
二人は今日、結婚式の予定だった。
ところが、10時から始まる結婚式に彼女は9時過ぎても顔を出さない。
僕はだんだん、心臓がどきどきしてくる。
このまま、彼女が顔を出さなかったら。
何かあったのだろうか。
向かう途中で交通事故にでもあったのだろうか。
それとも、風呂場で倒れていたりするのだろうか。
義理の父母に聞いても、ただおろおろしているだけで
要領を得ない。
何度も、電話、メール、LINEしているのだが、
返答はない。
ああ、どうしよう。
来客者は双方で70名。
それでも、減らしに減らして厳選した人数だった。
10時10分前、やつと彼女が電話に出た。
「もしもし、大丈夫?」
「お・は・よ・う」
なんか寝起きのような声。
まさかねー。ありえないよねー。
「気絶したりしてた?」
「ううん、普通に二度寝してた」
「はあー?」
「どした?なにかあった?」
心の中で怒鳴りそうになる。
なにかあった?じゃねえだろう。
あーあ、結婚式始まっちゃったよ><
僕は自分がこれほど、怒り狂ったことを覚えていない。
もう、ひん握って、ねじって、つねって、お尻ペンペンして。
それでも、多分収まりがつかないだろう。
自分でも自分の感情が制御できないほど、
いらだちあせりふつふつと沸いてくる怒りを抑えられないでいた。
「あのさー、今日、何の日だかわかってる?」
「ん?なんだっけ」
あーあ、もうだめだ。
僕はこいつと二度と口を聞きたくない。
「今、結婚式場にいるんだけど、君との婚約は破棄する」
「えええ、なんでー」
「そんなこといわなきゃわからないのか」
たぶん、目は釣りあがり、仁王のような恐ろしい形相をしていると思う。
「ちょっと、寝坊しただけじゃない」
「ごめん、君とはもう無理」
電話を切ると、義理の父母、自分の両親の元に行き、
連絡は一応取れたこと。
二度寝したとのこと。
これ以上、彼女と話すのは自分の感情が制御できないので、
無理だと伝えた。
それとともに、来賓の皆様にも司会者に連絡を入れてもらった。
当然、式も披露宴も二次会もキャンセル。
皆様に深々と頭を下げ、お詫びをした。
人生なんて、こんなもんさ。
どんなにがんばっても、どこかで抜けたり倒れたり壊れたりする。
この期に及んでも、謝ることさえしない彼女を選んだことを僕は深く恥じた。
キャンセル料は義理のご両親が支払った。
ああ、結婚式のウエルカムボードも色あせて見える。
ぴえんこえてぱおん。
ぴえんこえてぱおんこえてぽかん。
ぴえんこえてぱおんこえてぎおん。
器が小さくてごめんな。
僕は君をフォローできない。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる