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お金目当て
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「富まんと欲する者は,誘惑とわなまた人を滅亡と沈淪とにおぼらす愚にして害ある各様の欲に陥るなり。それ金を愛するは諸般の悪しき事の根なり,ある人々これを慕ひて……さまざまの痛をもて自ら己を刺しとほせり」― テモテ前 6:9,10。
わたくしの名前は尾崎 由美23歳。
少し前まで、母 美智子41歳と一緒に住んでいました。
母は、大手の保険会社勤務。
シングルマザーでわたくしを育ててくれました。
小さい頃は、学童が終わると母の会社によく遊びに行っていました。
同じように会社に勤める人のお子さんと
一緒にアニメを見たりおもちゃで遊んだりとっても楽しい日々を送っていました。
高校から大学や4年制専門学校を出て、看護師になりました。
今年の春、結婚を申し込まれて婚約したんですが、
その後、母が交通事故で身罷って現在は一人暮らしをしています。
母が身罷るまでは婚約者の中島 和彦さんのお母様とお姉さまととても優しかったのですが、
母が身罷ってからは、ちょっと残念な人たちになりつつあります。
新型の感染症で身罷ったわけでもないのに、
婚約である中島 和彦さんもお母様もお姉さまもお葬式にも
お通夜にも49日にも顔を出してはくださいませんでした。
なのに、なのにですよ。
母が身罷ってから2ヶ月くらいたったころ、
「寂しいだろうと思って、遊びに来たよ」
と、突然、アポイントもなしに3人で遊びにこられたんです。
まあ、それだけならよかったのですが、
冷蔵庫は勝手に開けて、
「あら、つましい食生活ね」
とか、
「こんなんで本当に和彦のつまになれるの?」
とか、勝手に寝室やクローゼットを開けるんです。
さすがに、ちょっと、何ナノって感じになっているんですが、
挙句に、
「ここの家は広いから、わたしたちがここに移ってきてもいいわね」
って、おっしゃって、ずうずうしいというか、
あっけにとられてるというか、開いた口がふさがりませんでした。
そして、母の保険金と交通事故の賠償金が1億以上あると知ると、
ものすごく結婚をせかされるんです。
「なんなんですか、いったい」
確かに、中島 和彦さんはとても優しくていい人なのですが、
あのお母様とお姉さまは苦手です。
そして、最近では、3日に一度くらいの割でたずねてきて、
「お金一杯あるんだから、夕飯くらい平気よね」
とか、
「何もったいつけてんの。早くせきいれちゃいなさいよ」
とか、
「婚約してるんだから、もし今、由美ちゃんに何かあったら
和彦が相続するのかしら」
とか、それはもう空恐ろしい発言を。
「新婚旅行は、4人で世界一周、船の旅にしましょうよ」
とか、しまいには勝手にとまっていって、
一週間くらい、住み込んだり。
あうううう。
だんだん、そのずうずうしさに目が点になって行きます。
わたくしは最近、仕事でオペにも携わるようになって、
少し神経質になっています。
母がいなくなってそれでなくてもとても不安定なのに、
この無神経な親子は……。
食べたら食べっぱなし、信じられますか?
本当はぶらり一人旅に行きたいのですが、
仕事の担当が替わったばかりでそうもいきません。
先輩からは、今が修羅場といわれています。
今、きっちり仕事の手順を覚えて鍛えてもらう時期なのだそうです。
母の好きだったさるすべりが艶やかにお庭で咲き誇っています。
しゅわしゅわの花弁。
食べてしまいたいくらい甘くスイートなピンク。
つるつるのその木肌に
「サルもすべるのかな」
と、想像を膨らませて一人楽しんでいたのですが、
突然お友達2人連れてお母様とお姉さまが尋ねてこられて、
「ピザが食べたい。ピザーラ」
はあ?
グルメクォーター3880円とよくばりクォーター3150円、
2枚ずつを頼んだのだけど、頼み方が悪いと叱られる。
13620円です。
全部、わたくしもち。
「5人いるんだから、みんなが同じものを食べれないと
味の分かち合いができないでしょう」
確かに、これがおいしかったとか
これは意外な組み合わせねとか
おしゃべりしながら食べるのはホームパーティーならではだけど。
そもそも、このお二人から、
「ありがとう」
「ごめんね」
「いただきます」
「ごちそうさま」
という言葉を聴いたことがない。
しかたなく、みんなでおしゃべりできるように
野菜スティックと海草サラダを作りました。
そしたら、
「はじめから、こうすればよかったのに。
気が利かないんだから」
はあー?
そして、人の家にきて食べ物を食べるなら、
手ぶらはないでしょう。
と思ってしまうのはわたくしだけかしら。
それも何回も何回も><
お怒りモードですの。
プンスカプン。
この日、白のさらりとした綿のTシャツ、紺色のフレアースカートを
着ていたのですが、夜勤明けだしいきなりだったので着替える暇もありませんでした。
なのに、おかあさまったら
「もうすこし、おしゃれしたらいいのに……」
洋服のまでけちつけて。
わたくしが素直じゃないのかしら。
夜勤明けは、やっぱりゆっくりまったりしたいです。
テーブルの上に飾られたエアープランツが微笑みかけています。
イオナンタ、カプトメドゥーサエ、コットンキャンディ、ハリシー、
ブラキカウロス、アエラントス、ブルボーサ。
少しずつ増えていった身罷った母と一緒に楽しんでいたものでございます。
とても懐かしいです。
小さいけれどとてもかわいい色あでやかなお花が咲くんです。
「ご自分のおうちで召し上がればいいじゃないですか」
と、申しましたら、
「一緒に楽しみましょう」
って、なんでもないことのように……。
いくら和彦さんに伝えても、
「君のことを心配してるんだよ」
って、取り合っていただけません。
あげくに、
「悲しい人だね、人の善意を悪意にしか取れないなんて」
とまで、おっしゃるんです。
そして、お二人の会話の中にしばしば出てくる
「人の不幸は蜜の味よね」
って、それはもう勝ち誇ったような喜びの笑顔。
「どうせ、由美ちゃんのお金は和彦のものになるんだから」
と、わたくしがおトイレに行っている間にささやきあっているのです。
わたくしの被害妄想なのでしょうか。
「この人たちと一緒にいると、いつか殺される」
だんだんそう思うようになったのです。
わたくしは、1ヶ月くらい前から彼女たちが来ると
会話を録音していたのですが、
知り合いの弁護士さんに相談すると、
「早急に婚約破棄にしたほうがいい」
と、言われたのです。
「結婚する前から、この状態だと
結婚したら何されるかわからないよ」
って。
やっぱり、婚約破棄しか手段はないのでしょうか。
和彦さんは、素敵な方なのにとても残念です。
トリカブトの青いお花がとてもきれいに咲いています。
トリカブトの毒成分・アコニチン系アルカロイドのアコニチンや
メサコニチンは現在知られている限り植物界で最強の猛毒。
ヒトの致死量は3~4mg、トリカブトの葉約1gで人を
死に至らしめるだけの毒をもつのだそうでございます。
あなおそろしやー。
自分に勝ってトリカブトの緒を締めよ!
和名の「トリカブト」は、秋に咲く青紫色の花が舞楽の常装束や民俗芸能に
用いる冠の鳥兜(鳥甲、とりかぶと)に似ていることに由来するのだとか。
エンゼルトランペットも大きな木にからいくつもの花をぶら下げています。
夾竹桃は空に向かって誇らしげに顔を持ち上げています。
お母様もお姉さまも見た目はとても上品でおきれいなのに。
お金がお好きなようですね。
きれいな花にはとげがある。
いいえ、毒があるのでしょうか。
それにしても、我が家のお庭は毒植物ばかり。
どうしてこんなことになってるのかしら。
なんとも不思議でございます。
9 しかし,裕福になろうとする人たちは,誘惑とわなに陥り+,多くの無分別で有害な欲望を抱き,破滅と滅びに至ります+。 10 お金を愛することは,あらゆる悪い事柄の根なのです。ある人たちはこの愛にとらわれて信仰を失い*,多くの苦痛を身に招き*ました+。
テモテ第一6章9.10節
わたくしの名前は尾崎 由美23歳。
少し前まで、母 美智子41歳と一緒に住んでいました。
母は、大手の保険会社勤務。
シングルマザーでわたくしを育ててくれました。
小さい頃は、学童が終わると母の会社によく遊びに行っていました。
同じように会社に勤める人のお子さんと
一緒にアニメを見たりおもちゃで遊んだりとっても楽しい日々を送っていました。
高校から大学や4年制専門学校を出て、看護師になりました。
今年の春、結婚を申し込まれて婚約したんですが、
その後、母が交通事故で身罷って現在は一人暮らしをしています。
母が身罷るまでは婚約者の中島 和彦さんのお母様とお姉さまととても優しかったのですが、
母が身罷ってからは、ちょっと残念な人たちになりつつあります。
新型の感染症で身罷ったわけでもないのに、
婚約である中島 和彦さんもお母様もお姉さまもお葬式にも
お通夜にも49日にも顔を出してはくださいませんでした。
なのに、なのにですよ。
母が身罷ってから2ヶ月くらいたったころ、
「寂しいだろうと思って、遊びに来たよ」
と、突然、アポイントもなしに3人で遊びにこられたんです。
まあ、それだけならよかったのですが、
冷蔵庫は勝手に開けて、
「あら、つましい食生活ね」
とか、
「こんなんで本当に和彦のつまになれるの?」
とか、勝手に寝室やクローゼットを開けるんです。
さすがに、ちょっと、何ナノって感じになっているんですが、
挙句に、
「ここの家は広いから、わたしたちがここに移ってきてもいいわね」
って、おっしゃって、ずうずうしいというか、
あっけにとられてるというか、開いた口がふさがりませんでした。
そして、母の保険金と交通事故の賠償金が1億以上あると知ると、
ものすごく結婚をせかされるんです。
「なんなんですか、いったい」
確かに、中島 和彦さんはとても優しくていい人なのですが、
あのお母様とお姉さまは苦手です。
そして、最近では、3日に一度くらいの割でたずねてきて、
「お金一杯あるんだから、夕飯くらい平気よね」
とか、
「何もったいつけてんの。早くせきいれちゃいなさいよ」
とか、
「婚約してるんだから、もし今、由美ちゃんに何かあったら
和彦が相続するのかしら」
とか、それはもう空恐ろしい発言を。
「新婚旅行は、4人で世界一周、船の旅にしましょうよ」
とか、しまいには勝手にとまっていって、
一週間くらい、住み込んだり。
あうううう。
だんだん、そのずうずうしさに目が点になって行きます。
わたくしは最近、仕事でオペにも携わるようになって、
少し神経質になっています。
母がいなくなってそれでなくてもとても不安定なのに、
この無神経な親子は……。
食べたら食べっぱなし、信じられますか?
本当はぶらり一人旅に行きたいのですが、
仕事の担当が替わったばかりでそうもいきません。
先輩からは、今が修羅場といわれています。
今、きっちり仕事の手順を覚えて鍛えてもらう時期なのだそうです。
母の好きだったさるすべりが艶やかにお庭で咲き誇っています。
しゅわしゅわの花弁。
食べてしまいたいくらい甘くスイートなピンク。
つるつるのその木肌に
「サルもすべるのかな」
と、想像を膨らませて一人楽しんでいたのですが、
突然お友達2人連れてお母様とお姉さまが尋ねてこられて、
「ピザが食べたい。ピザーラ」
はあ?
グルメクォーター3880円とよくばりクォーター3150円、
2枚ずつを頼んだのだけど、頼み方が悪いと叱られる。
13620円です。
全部、わたくしもち。
「5人いるんだから、みんなが同じものを食べれないと
味の分かち合いができないでしょう」
確かに、これがおいしかったとか
これは意外な組み合わせねとか
おしゃべりしながら食べるのはホームパーティーならではだけど。
そもそも、このお二人から、
「ありがとう」
「ごめんね」
「いただきます」
「ごちそうさま」
という言葉を聴いたことがない。
しかたなく、みんなでおしゃべりできるように
野菜スティックと海草サラダを作りました。
そしたら、
「はじめから、こうすればよかったのに。
気が利かないんだから」
はあー?
そして、人の家にきて食べ物を食べるなら、
手ぶらはないでしょう。
と思ってしまうのはわたくしだけかしら。
それも何回も何回も><
お怒りモードですの。
プンスカプン。
この日、白のさらりとした綿のTシャツ、紺色のフレアースカートを
着ていたのですが、夜勤明けだしいきなりだったので着替える暇もありませんでした。
なのに、おかあさまったら
「もうすこし、おしゃれしたらいいのに……」
洋服のまでけちつけて。
わたくしが素直じゃないのかしら。
夜勤明けは、やっぱりゆっくりまったりしたいです。
テーブルの上に飾られたエアープランツが微笑みかけています。
イオナンタ、カプトメドゥーサエ、コットンキャンディ、ハリシー、
ブラキカウロス、アエラントス、ブルボーサ。
少しずつ増えていった身罷った母と一緒に楽しんでいたものでございます。
とても懐かしいです。
小さいけれどとてもかわいい色あでやかなお花が咲くんです。
「ご自分のおうちで召し上がればいいじゃないですか」
と、申しましたら、
「一緒に楽しみましょう」
って、なんでもないことのように……。
いくら和彦さんに伝えても、
「君のことを心配してるんだよ」
って、取り合っていただけません。
あげくに、
「悲しい人だね、人の善意を悪意にしか取れないなんて」
とまで、おっしゃるんです。
そして、お二人の会話の中にしばしば出てくる
「人の不幸は蜜の味よね」
って、それはもう勝ち誇ったような喜びの笑顔。
「どうせ、由美ちゃんのお金は和彦のものになるんだから」
と、わたくしがおトイレに行っている間にささやきあっているのです。
わたくしの被害妄想なのでしょうか。
「この人たちと一緒にいると、いつか殺される」
だんだんそう思うようになったのです。
わたくしは、1ヶ月くらい前から彼女たちが来ると
会話を録音していたのですが、
知り合いの弁護士さんに相談すると、
「早急に婚約破棄にしたほうがいい」
と、言われたのです。
「結婚する前から、この状態だと
結婚したら何されるかわからないよ」
って。
やっぱり、婚約破棄しか手段はないのでしょうか。
和彦さんは、素敵な方なのにとても残念です。
トリカブトの青いお花がとてもきれいに咲いています。
トリカブトの毒成分・アコニチン系アルカロイドのアコニチンや
メサコニチンは現在知られている限り植物界で最強の猛毒。
ヒトの致死量は3~4mg、トリカブトの葉約1gで人を
死に至らしめるだけの毒をもつのだそうでございます。
あなおそろしやー。
自分に勝ってトリカブトの緒を締めよ!
和名の「トリカブト」は、秋に咲く青紫色の花が舞楽の常装束や民俗芸能に
用いる冠の鳥兜(鳥甲、とりかぶと)に似ていることに由来するのだとか。
エンゼルトランペットも大きな木にからいくつもの花をぶら下げています。
夾竹桃は空に向かって誇らしげに顔を持ち上げています。
お母様もお姉さまも見た目はとても上品でおきれいなのに。
お金がお好きなようですね。
きれいな花にはとげがある。
いいえ、毒があるのでしょうか。
それにしても、我が家のお庭は毒植物ばかり。
どうしてこんなことになってるのかしら。
なんとも不思議でございます。
9 しかし,裕福になろうとする人たちは,誘惑とわなに陥り+,多くの無分別で有害な欲望を抱き,破滅と滅びに至ります+。 10 お金を愛することは,あらゆる悪い事柄の根なのです。ある人たちはこの愛にとらわれて信仰を失い*,多くの苦痛を身に招き*ました+。
テモテ第一6章9.10節
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