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目標の34ポイント
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「目標の34ポイント」
朝、目が覚めるとまず確認するのはスマホの画面。アルファポリスのポイント通知だ。ここ最近、雅子はその通知が憂鬱でたまらなかった。新作を投稿するたび、期待を胸にしてポイント欄を開くが、目標の34ポイントには全く届かない。
「またダメか…」
スマホを枕元に投げ出し、雅子は天井を見上げた。書いても書いても、満足のいく結果が出ない。頭の中では、これまでに書き上げた文章が無数に回転している。長編小説や短編、エッセイ風のものまで、アイデアを尽くして文字にしてきた。それでも、投稿インセンティブの24時間ポイントはいつも30ポイント前後で止まってしまう。もう何度目の挑戦だろうか。
雅子は小さく溜息をつき、ベッドから起き上がった。書くことが好きで始めたはずの執筆活動が、いつの間にか自分を追い詰めるものになっていることに気づきながらも、やめることはできない。
二
朝食の準備をしながら、ふと思い出すのは、初めてアルファポリスに投稿した日のことだ。あの時は、ポイントなんて全く気にしていなかった。自分が書きたいものを自由に書き、読者の反応に一喜一憂していた。あの頃の自分は、純粋に書く楽しさを感じていたのだ。
しかし、投稿インセンティブが導入され、評価ポイントが具体的な「数値」として目の前に突きつけられるようになったとき、雅子は少しずつ心を摩耗させていった。34ポイントという目標ができてからというもの、その数字が頭を支配し、書くことそのものが苦痛になり始めた。
食パンをトーストに入れ、雅子はキッチンのカウンターに寄りかかった。
「どうして、あの頃みたいに書けないんだろう…」
ぼんやりとした頭で、過去の作品を思い返す。確かに、最近の自分は何か違っていた。読者のために書くというよりも、ポイントを稼ぐために書いているような感覚が強かった。もっと評価されたい、もっと認められたいという欲望が、彼女の手を縛り、自由な発想を奪っていたのかもしれない。
三
午後になって、雅子はいつものようにパソコンの前に座った。キーボードに手を置くものの、指は動かない。書きたいことが頭に浮かばないのだ。無理にひねり出すように文章を打ち始めても、どこか違和感が拭えない。結局、今日も中途半端なまま、文章は途中で止まってしまった。
「これでまた、34ポイントなんて夢のまた夢だな…」
自嘲気味に呟いたその瞬間、雅子の中で何かが弾けた。
「もう、こんなのやめたい…!」
椅子から立ち上がり、部屋をぐるぐると歩き回る。思考がぐちゃぐちゃで、まとまりがない。こんな自分はダメだ、もっと頑張らなきゃ。でも、頑張っても頑張っても結果が出ない。書けば書くほど、34ポイントが遠ざかる気がしてならない。
四
その夜、雅子は久しぶりに何も考えずに外を歩いた。静かな夜の街。歩道の街灯がぽつぽつと光り、風が心地よく頬を撫でる。普段の喧騒から離れ、頭が少しずつクリアになっていくのを感じた。
「書くことがこんなに苦しくなるなんて、思わなかったな…」
自分にとって、執筆とは本来、表現の喜びであり、心の中にあるものを形にすることで自分を解放する手段だったはずだ。しかし、今はどうだろう。いつからか、ポイントや評価ばかりを気にするようになり、心から楽しんで書くという感覚を忘れてしまっていた。
「あの頃の自分に戻りたい…」
雅子は静かにそう思った。そして、ふと気づいた。
「そうだ、数字なんかじゃなく、自分が本当に書きたいものを書こう。」
ポイントに囚われず、心の中にある本当の思いを自由に表現すること。それこそが、彼女が目指していたものではなかったか。心の中のもやが、少しずつ晴れていくのを感じた。
五
翌朝、雅子は早起きをして、パソコンの前に座った。昨夜の散歩が彼女にとって大きな転機となっていた。今日は、ポイントや評価のことを一切気にせず、ただ自分が書きたいものを書いてみることにした。
ゆっくりとキーボードを叩き始めると、不思議なことに指が自然と動き始めた。文章がスムーズに紡ぎ出され、頭の中で形になっていく。
「これだ…」
雅子はその瞬間、久しぶりに「書く楽しさ」を感じた。それは、評価やポイントを求めるのではなく、自分自身の内面と対話しながら、思いのままに書くという自由な感覚だった。時間を忘れ、気づけば数時間が経過していた。
六
その日の夕方、雅子はいつものように作品を投稿した。ポイントがどうなるかは分からない。でも、それでいい。彼女にとって重要なのは、評価ではなく、自分が本当に書きたいものを書いたという達成感だった。
しばらくして、スマホに通知が届いた。雅子は深呼吸をしてから、恐る恐る画面を開いた。
そこには、いつものように30ポイントが表示されていた。しかし、今回はその数字を見ても、心が痛むことはなかった。
「今度は、もっと自分らしく書けた気がする。」
雅子は穏やかな気持ちで画面を閉じた。そして、また次の物語を書き始めることにした。数字に振り回されず、自分自身のペースで。
朝、目が覚めるとまず確認するのはスマホの画面。アルファポリスのポイント通知だ。ここ最近、雅子はその通知が憂鬱でたまらなかった。新作を投稿するたび、期待を胸にしてポイント欄を開くが、目標の34ポイントには全く届かない。
「またダメか…」
スマホを枕元に投げ出し、雅子は天井を見上げた。書いても書いても、満足のいく結果が出ない。頭の中では、これまでに書き上げた文章が無数に回転している。長編小説や短編、エッセイ風のものまで、アイデアを尽くして文字にしてきた。それでも、投稿インセンティブの24時間ポイントはいつも30ポイント前後で止まってしまう。もう何度目の挑戦だろうか。
雅子は小さく溜息をつき、ベッドから起き上がった。書くことが好きで始めたはずの執筆活動が、いつの間にか自分を追い詰めるものになっていることに気づきながらも、やめることはできない。
二
朝食の準備をしながら、ふと思い出すのは、初めてアルファポリスに投稿した日のことだ。あの時は、ポイントなんて全く気にしていなかった。自分が書きたいものを自由に書き、読者の反応に一喜一憂していた。あの頃の自分は、純粋に書く楽しさを感じていたのだ。
しかし、投稿インセンティブが導入され、評価ポイントが具体的な「数値」として目の前に突きつけられるようになったとき、雅子は少しずつ心を摩耗させていった。34ポイントという目標ができてからというもの、その数字が頭を支配し、書くことそのものが苦痛になり始めた。
食パンをトーストに入れ、雅子はキッチンのカウンターに寄りかかった。
「どうして、あの頃みたいに書けないんだろう…」
ぼんやりとした頭で、過去の作品を思い返す。確かに、最近の自分は何か違っていた。読者のために書くというよりも、ポイントを稼ぐために書いているような感覚が強かった。もっと評価されたい、もっと認められたいという欲望が、彼女の手を縛り、自由な発想を奪っていたのかもしれない。
三
午後になって、雅子はいつものようにパソコンの前に座った。キーボードに手を置くものの、指は動かない。書きたいことが頭に浮かばないのだ。無理にひねり出すように文章を打ち始めても、どこか違和感が拭えない。結局、今日も中途半端なまま、文章は途中で止まってしまった。
「これでまた、34ポイントなんて夢のまた夢だな…」
自嘲気味に呟いたその瞬間、雅子の中で何かが弾けた。
「もう、こんなのやめたい…!」
椅子から立ち上がり、部屋をぐるぐると歩き回る。思考がぐちゃぐちゃで、まとまりがない。こんな自分はダメだ、もっと頑張らなきゃ。でも、頑張っても頑張っても結果が出ない。書けば書くほど、34ポイントが遠ざかる気がしてならない。
四
その夜、雅子は久しぶりに何も考えずに外を歩いた。静かな夜の街。歩道の街灯がぽつぽつと光り、風が心地よく頬を撫でる。普段の喧騒から離れ、頭が少しずつクリアになっていくのを感じた。
「書くことがこんなに苦しくなるなんて、思わなかったな…」
自分にとって、執筆とは本来、表現の喜びであり、心の中にあるものを形にすることで自分を解放する手段だったはずだ。しかし、今はどうだろう。いつからか、ポイントや評価ばかりを気にするようになり、心から楽しんで書くという感覚を忘れてしまっていた。
「あの頃の自分に戻りたい…」
雅子は静かにそう思った。そして、ふと気づいた。
「そうだ、数字なんかじゃなく、自分が本当に書きたいものを書こう。」
ポイントに囚われず、心の中にある本当の思いを自由に表現すること。それこそが、彼女が目指していたものではなかったか。心の中のもやが、少しずつ晴れていくのを感じた。
五
翌朝、雅子は早起きをして、パソコンの前に座った。昨夜の散歩が彼女にとって大きな転機となっていた。今日は、ポイントや評価のことを一切気にせず、ただ自分が書きたいものを書いてみることにした。
ゆっくりとキーボードを叩き始めると、不思議なことに指が自然と動き始めた。文章がスムーズに紡ぎ出され、頭の中で形になっていく。
「これだ…」
雅子はその瞬間、久しぶりに「書く楽しさ」を感じた。それは、評価やポイントを求めるのではなく、自分自身の内面と対話しながら、思いのままに書くという自由な感覚だった。時間を忘れ、気づけば数時間が経過していた。
六
その日の夕方、雅子はいつものように作品を投稿した。ポイントがどうなるかは分からない。でも、それでいい。彼女にとって重要なのは、評価ではなく、自分が本当に書きたいものを書いたという達成感だった。
しばらくして、スマホに通知が届いた。雅子は深呼吸をしてから、恐る恐る画面を開いた。
そこには、いつものように30ポイントが表示されていた。しかし、今回はその数字を見ても、心が痛むことはなかった。
「今度は、もっと自分らしく書けた気がする。」
雅子は穏やかな気持ちで画面を閉じた。そして、また次の物語を書き始めることにした。数字に振り回されず、自分自身のペースで。
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