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豊島区の消えた駅
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「豊島区の消えた駅」
豊島区の西池袋に住む大学生の佐藤光一(さとう こういち)は、ある日、友達から奇妙な話を聞いた。夜遅くに帰宅する際、ふと立ち寄った駅で目撃した「消えた駅」の話だ。
「池袋の近くに、夜になると消える駅があるんだって。知ってる?」
友達の鈴木が語り始めたその話に、光一は興味を持った。最初は半信半疑だったが、鈴木の顔つきが真剣だったので、少し疑念が湧いた。
「消える駅?」光一は疑問を口にした。
鈴木は頷いた。「うん、実際にそこに行ってみたんだ。ある時間になると、急に駅がなくなって、次に気がついた時にはもう場所が違っているんだ。しかも、その駅に入ったはずなのに、出口が見つからない。」
「それ、都市伝説だろ?」光一は冗談めかして言った。
「でも、実際にその駅に行った人もいるんだ。あの駅、確か池袋から少し外れたところにある駅らしいんだ。でも、そこに行ったら、何もない。改札すらなくて、ホームに電車も来ない。まるで異世界に迷い込んだみたいな感じだったらしいよ。」
その夜、光一は眠れなかった。鈴木の話が妙に頭に残っていた。あんな奇妙な話を信じたくはなかったが、どうしても気になって仕方がなかった。数日後、光一は友達にその話を聞いてみた。
「本当にそんな駅があるのか?」
友達は首をかしげた。「うーん、そんな駅聞いたことないけど、確かに池袋近くには、普段はほとんど使われない駅もあるから、もしかしたら…」
光一はその夜、好奇心に駆られて、実際にその「消える駅」に行ってみることを決めた。目指すのは、池袋から少し離れた場所にある、普段あまり使われていない地下鉄の駅だった。彼は深夜の時間帯にそこに足を運んだ。
駅に到着したのは午後11時過ぎ。辺りは薄暗く、街灯の光が少しだけ周りを照らしている。駅の入り口は静まり返っており、普段は誰もいないような場所だった。光一はその場に立ち尽くし、少し不安を感じながらも、改札へと向かった。
だが、改札を通り抜けた瞬間、違和感を覚えた。駅内の様子が、どこか不自然だった。通常の駅なら、広告や掲示板が並んでいるはずだが、この駅には何も掲示されていない。しかも、ホームに向かうエスカレーターや階段も見当たらない。まるで、駅自体が途中で止まってしまったかのような感じだった。
「おかしいな…」光一はつぶやきながら、少し進んでみた。
駅の構内は無人で、灯りもほとんど点いていなかった。たったひとつの灯りが、どこか不安を煽るように揺れている。光一はそのまま歩き続けたが、歩いているうちに次第に足元が不安定になっていった。長い地下道を進むにつれ、周囲の景色が変わり始め、どこか歪んで見えた。
そして、ふと気がついたときには、駅の構内がまるで違う場所に変わっていた。光一は何度も立ち止まり、振り返ったが、元の場所が見つからなかった。いつの間にか、駅の入り口は見当たらなくなり、どこに向かえばいいのかも分からない。
焦りが募る中、光一は携帯電話を取り出してみた。しかし、電波が全く届かず、画面には「圏外」と表示されているだけだった。
その時、駅の奥から誰かの足音が近づいてくるのを感じた。驚き、振り返ったが、誰もいない。まるで、自分だけがそこにいるような感覚だった。
光一は再び歩き出し、何度も何度も周囲を見渡した。もう、どこが出口なのか分からなくなっていた。まるで迷宮の中に迷い込んだような感覚だ。周りの壁も、どんどん暗くなり、まるで異次元に取り込まれたようだった。
その時、突然、駅の前方から強い光が差し込み、視界が一瞬明るくなった。驚き、前を見つめると、光の中に人影が現れた。それは、駅の職員のような人物だった。だが、その顔はよく見るとどこか歪んでいて、目が異常に大きかった。
光一は恐怖に駆られ、足がすくんで動けなくなった。しかし、目の前の職員は何も言わず、ただ光一をじっと見つめていた。その目は冷たいまなざしで、まるで何もかもを知っているかのような印象を与えた。
「君は、ここから出られない。」その声は、ひどく響き渡った。
その言葉を聞いた瞬間、光一は心臓が止まるかと思った。彼は恐る恐る一歩後ろに下がり、突然駆け出した。走りながら、必死に出口を探し、ようやく気がついた時には、また駅の入り口に戻っていた。だが、その駅はもう、まるで元の駅とは違う場所のように感じられた。
次の日、光一はあの駅のことを誰にも話さなかった。しかし、その後もあの駅を探し続けたが、結局見つかることはなかった。
あの駅が、ほんとうに消えた駅だったのか、あるいはただの幻だったのか、光一にはもうわからなかった。
豊島区の西池袋に住む大学生の佐藤光一(さとう こういち)は、ある日、友達から奇妙な話を聞いた。夜遅くに帰宅する際、ふと立ち寄った駅で目撃した「消えた駅」の話だ。
「池袋の近くに、夜になると消える駅があるんだって。知ってる?」
友達の鈴木が語り始めたその話に、光一は興味を持った。最初は半信半疑だったが、鈴木の顔つきが真剣だったので、少し疑念が湧いた。
「消える駅?」光一は疑問を口にした。
鈴木は頷いた。「うん、実際にそこに行ってみたんだ。ある時間になると、急に駅がなくなって、次に気がついた時にはもう場所が違っているんだ。しかも、その駅に入ったはずなのに、出口が見つからない。」
「それ、都市伝説だろ?」光一は冗談めかして言った。
「でも、実際にその駅に行った人もいるんだ。あの駅、確か池袋から少し外れたところにある駅らしいんだ。でも、そこに行ったら、何もない。改札すらなくて、ホームに電車も来ない。まるで異世界に迷い込んだみたいな感じだったらしいよ。」
その夜、光一は眠れなかった。鈴木の話が妙に頭に残っていた。あんな奇妙な話を信じたくはなかったが、どうしても気になって仕方がなかった。数日後、光一は友達にその話を聞いてみた。
「本当にそんな駅があるのか?」
友達は首をかしげた。「うーん、そんな駅聞いたことないけど、確かに池袋近くには、普段はほとんど使われない駅もあるから、もしかしたら…」
光一はその夜、好奇心に駆られて、実際にその「消える駅」に行ってみることを決めた。目指すのは、池袋から少し離れた場所にある、普段あまり使われていない地下鉄の駅だった。彼は深夜の時間帯にそこに足を運んだ。
駅に到着したのは午後11時過ぎ。辺りは薄暗く、街灯の光が少しだけ周りを照らしている。駅の入り口は静まり返っており、普段は誰もいないような場所だった。光一はその場に立ち尽くし、少し不安を感じながらも、改札へと向かった。
だが、改札を通り抜けた瞬間、違和感を覚えた。駅内の様子が、どこか不自然だった。通常の駅なら、広告や掲示板が並んでいるはずだが、この駅には何も掲示されていない。しかも、ホームに向かうエスカレーターや階段も見当たらない。まるで、駅自体が途中で止まってしまったかのような感じだった。
「おかしいな…」光一はつぶやきながら、少し進んでみた。
駅の構内は無人で、灯りもほとんど点いていなかった。たったひとつの灯りが、どこか不安を煽るように揺れている。光一はそのまま歩き続けたが、歩いているうちに次第に足元が不安定になっていった。長い地下道を進むにつれ、周囲の景色が変わり始め、どこか歪んで見えた。
そして、ふと気がついたときには、駅の構内がまるで違う場所に変わっていた。光一は何度も立ち止まり、振り返ったが、元の場所が見つからなかった。いつの間にか、駅の入り口は見当たらなくなり、どこに向かえばいいのかも分からない。
焦りが募る中、光一は携帯電話を取り出してみた。しかし、電波が全く届かず、画面には「圏外」と表示されているだけだった。
その時、駅の奥から誰かの足音が近づいてくるのを感じた。驚き、振り返ったが、誰もいない。まるで、自分だけがそこにいるような感覚だった。
光一は再び歩き出し、何度も何度も周囲を見渡した。もう、どこが出口なのか分からなくなっていた。まるで迷宮の中に迷い込んだような感覚だ。周りの壁も、どんどん暗くなり、まるで異次元に取り込まれたようだった。
その時、突然、駅の前方から強い光が差し込み、視界が一瞬明るくなった。驚き、前を見つめると、光の中に人影が現れた。それは、駅の職員のような人物だった。だが、その顔はよく見るとどこか歪んでいて、目が異常に大きかった。
光一は恐怖に駆られ、足がすくんで動けなくなった。しかし、目の前の職員は何も言わず、ただ光一をじっと見つめていた。その目は冷たいまなざしで、まるで何もかもを知っているかのような印象を与えた。
「君は、ここから出られない。」その声は、ひどく響き渡った。
その言葉を聞いた瞬間、光一は心臓が止まるかと思った。彼は恐る恐る一歩後ろに下がり、突然駆け出した。走りながら、必死に出口を探し、ようやく気がついた時には、また駅の入り口に戻っていた。だが、その駅はもう、まるで元の駅とは違う場所のように感じられた。
次の日、光一はあの駅のことを誰にも話さなかった。しかし、その後もあの駅を探し続けたが、結局見つかることはなかった。
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