都市伝説 短編集

春秋花壇

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新宿の都市伝説

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新宿の都市伝説

新宿。東京の中心に位置する、この繁華街は昼夜を問わず、数えきれないほどの人々で賑わう。繁忙期ともなれば、道路を埋め尽くす人々の流れ、煌びやかなネオン、賑やかな雑踏――だが、その華やかな表面の背後には、恐ろしい都市伝説が潜んでいるという噂が絶えない。

その噂の中心となるのが、新宿の「地下道」にまつわる話だ。多くの人々が利用する新宿駅は、その地下道が広がる迷宮のような空間で、常に人々の行き交う場所だ。しかし、誰もが気にすることなく通り過ぎるその地下道には、ある恐ろしい秘密が隠されていると言われている。

それは、古くから語り継がれてきた「地下道の女」の話だ。

地下道の女

ある夜、新宿駅を通り過ぎる若い女性、彩(あや)は、いつものように帰宅の途中だった。駅の出口から地下道を抜け、いつも通りに通りを歩いていたが、その日は何かが違った。普段は人通りの多い地下道も、その夜は異様に静かで、人影がまばらだった。辺りは暗く、照明がちらちらと瞬いているだけ。ほんの一瞬、彩は不安を覚えたが、疲れた足を引きずりながら、無意識にその空間に足を踏み入れていた。

そのとき、足元に何かが引っかかる感覚があった。彩は驚いて足元を見ると、そこには見慣れない黒い布のようなものが転がっていた。それはただの汚れた布切れではなく、何か異様な気配を放っていた。

「誰かの荷物?」

彩は周りを見渡すが、誰もいない。そのまま無視して進もうとしたとき、突然、背後から低い声が聞こえた。

「……行かないで。」

振り返ると、そこには何もないはずの空間に、一人の女性が立っていた。その女性は、白いワンピースを着ており、長い髪が肩を覆うように垂れていた。しかし、その顔は異常に青白く、目が異常に大きく、まるで顔が引きつったような表情をしていた。最初は、彩はそれが誰かのイタズラだと思った。しかし、その女性の目がじっと彼女を見つめると、彩の体は動かなくなった。

「お前も、来たのか……」

その女性が口を開くと、彩は震えが止まらなくなった。何か言葉にならない恐怖が、彼女の胸を締め付ける。

「お前も、迷い込んだのか。」

その言葉が繰り返されるたびに、彩の体は震えが増していった。女性は一歩、また一歩と近づいてきて、彼女に向かって手を差し伸べてきた。その手は冷たく、異様に長い指が伸びて、彩を掴もうとする。彩は本能的に後退り、すぐにその場を離れようとしたが、足がすくんで動けなかった。

そのとき、耳元で再び聞こえた。

「もう遅い……」

その声は、まるで彼女の背後から発せられたかのように聞こえた。振り向くと、そこには、先ほどの女性の顔がすぐ近くにあり、その目がどんどん大きくなっていくのが見えた。そこからは目が離せなかった。

「地下道の女」と呼ばれるその存在は、昔から新宿駅の地下道で目撃されると言われている。彼女は、かつて新宿の繁華街で行方不明になった女性だという。何年も前に、ある事件で姿を消し、以来、彼女の魂がその地下道に囚われ、永遠にさまよっているというのだ。

伝説によれば、地下道の中で迷子になった人々は、必ず彼女と遭遇し、引き寄せられていくと言われている。彼女は、過去に自ら命を絶ったため、その魂が果たすべき業を持ちながらも、永遠に抜け出せずにいるという。だからこそ、地下道に迷い込んだ者は、決して帰れなくなるのだと。

その後、彩は必死に地下道を抜け出そうと走り出した。足元がもつれ、振り返ることなくただひたすらに走り続けた。だが、どうしても出口が見当たらず、まるで地下道が広がっているかのように感じられた。さらに彼女は、何度も振り返ってはその女の姿が後ろに見えるような錯覚を覚えた。

最終的に、彩は恐怖で動けなくなり、倒れ込んでしまった。次に目を覚ましたとき、彼女は地下道の出口近くに転がっていたが、周りには誰もいなかった。夜の街の喧騒も、どこか遠くから聞こえてくるだけだった。

その後、彩はその地下道を二度と通ることはなかった。彼女の目に浮かぶのは、あの女の顔だ。それが本当にただの幻だったのか、それとも都市伝説が実在したのか――彼女には分からない。しかし、一つだけ確かなことがある。それは、新宿駅の地下道に足を踏み入れることが、二度とないように決めたことだ。

「地下道の女」の都市伝説は、今日も新宿の闇の中にひっそりと息づいている。






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