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春秋花壇

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千代田区の都市伝説

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千代田区の都市伝説

東京の中心、千代田区。日本の政治と経済の中心地であり、賑やかな街並みと豪華なビル群が並ぶこの場所には、目に見えない歴史が深く刻まれている。誰もが知っている名所や企業の本社が立ち並ぶ中、その街に潜む奇妙な都市伝説が存在すると言われている。特に、皇居の近くでよく耳にする話だ。

それは、戦後の混乱と再建の時期に、千代田区のある区域で発生した不可解な出来事に由来しているとされる。今でもこの地域には、足を踏み入れた者が二度と帰らないという噂がある場所がある。歴史の中で忘れ去られた場所、それが千代田区の地下に存在すると言われているのだ。

数年前、若いジャーナリストの吉田は、この都市伝説に興味を持った。彼は元々、都市伝説や謎に関する話題を記事にする仕事をしていたが、千代田区に関する話を聞いてから、特に興味を抱くようになった。その噂を追い求め、真相を突き止めようと決意したのだ。

吉田はまず、歴史に詳しい地元の人々に話を聞くことから始めた。最初は軽く笑い飛ばされることが多かったが、次第に何人かの老人たちが、異様な表情を浮かべながら語り始めた。

「昔、戦後すぐに地下で起きた事件があったんだ。あれは、ただの事故じゃない。誰も語りたがらない、秘密の事件だ。」

その一人、田中という老紳士は、長い沈黙の後、こう言った。

「千代田区の地下には、今でも“迷子の街”が存在すると言われている。地下鉄ができる前、戦争中に避難所として使われたその場所には、多くの人々が閉じ込められたんだ。そして、終戦後もその場所に残された人々は、時折『戻れ』と言われることがある。だが、誰も戻ることはなかった。」

吉田はその言葉に震える思いを感じつつ、さらに詳しく話を聞こうとしたが、田中氏はその話題に触れることを嫌がり、話を途中で切り上げた。だが、その後も別の老人たちから同様の話を聞いた。どうやら、戦後の混乱期に、千代田区の地下に不明な施設が存在し、その中で多くの人々が行方不明になったという噂が広がっていたのだ。

吉田はその話を信じるべきかどうか迷ったが、どうしてもその真相を確かめたくなった。彼は千代田区の地下にあるというその「迷子の街」を調査することを決意した。そして、いよいよその場所を訪れるため、地下鉄を使うことにした。

千代田区の地下は、他の地域とは異なり、古びた通路が多く存在していた。吉田はひとりでその通路を歩きながら、次第に気持ちが不安になっていった。周囲に誰もいない時間帯、駅のホームでひとり佇むと、何かが違うことに気づく。

ふと、足元に何かが落ちているのを見つけた。それは古い地図のようなものだった。ぼろぼろになったその地図には、現在の千代田区の地下に広がる迷路のような構造が描かれていた。そして、その地図の一部には赤いペンで「ここに行くな」と書かれていた。吉田は思わずその地図を手に取ったが、その瞬間、何かの気配を感じて振り向いた。

後ろには誰もいない。しかし、地下の通路が異常に静かだ。普段ならば聞こえるはずの足音や風の音が、まったく聞こえないのだ。それに気づいた瞬間、吉田は急いでその場を離れようとした。しかし、足が重く感じ、身動きが取れない。心の中で焦りが広がり、呼吸が乱れ始めた。

その時、地下の奥からぼんやりとした光が見えた。恐る恐るその方向に向かうと、光の先に古びた扉が現れた。扉の前には、誰かが座っている影が見えた。吉田はその影に向かって声をかけようとしたが、言葉が出ない。まるでその影が、自分に何かを伝えようとしているかのように、無言で指をさしていた。

その指先を追うと、扉の隙間から何かが見え隠れしていた。吉田は怖くなり、振り返って逃げようとしたが、足がまた動かない。その瞬間、背後からひとつの声が響いた。

「ここに来たのは、もう遅い。」

その言葉に、吉田は心臓が止まりそうなほどの恐怖を感じ、ただただその場から逃げ出した。気づけば、地下の通路を走り抜けて、外の世界に戻っていた。

それから数日後、吉田はあの地下通路にもう一度戻ることはなかった。だが、あの「迷子の街」の話が、本当であったことを確信した。そして、千代田区に広がる地下には、未だにその「迷子の街」が封じ込められているのだと、今も人々の口から語り継がれているのであろう。






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