都市伝説 短編集

春秋花壇

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禁断のシグナル

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禁断のシグナル

夜の街が静まりかえった深夜、都市伝説に興味を持つ若者たちが集まる場所があった。彼らの目的はただ一つ、都市伝説の真偽を確かめること。今宵のテーマは「禁断のシグナル」と呼ばれる、ちょっとHな内容の伝説だった。伝説によれば、特定の条件を満たすことで、深夜にのみ現れるという。

ある晩、好奇心旺盛な女子大生、まゆみは友人のケンジと一緒にその伝説を確かめに出かけた。まゆみはいつもおっとりした性格で、夜の街を歩くのは少し怖かったが、ケンジと一緒なら大丈夫だろうと考えていた。

「ここがその場所だよ」とケンジが指差したのは、古びたビルの前だった。ビルは長い間放置されているようで、外壁には落書きが目立ち、窓ガラスは割れていた。

「本当にこんなところに行くの?」とまゆみは不安そうに尋ねたが、ケンジの熱心な説明に押されて、二人はビルの中へと進んだ。

ビルの内部は、埃まみれで薄暗かった。まゆみは後ろからついていく形で、ケンジが持っている懐中電灯の光だけが頼りだった。伝説によれば、このビルの特定の階に、指定された時間にだけ現れる「禁断のシグナル」があるという。

ケンジは階段を上りながら、伝説の詳細を語り始めた。「このビルには、かつて秘密のパーティが開催されていたんだ。伝説によれば、ここに入ってくると、古い秘密が明らかになると言われている。でも、注意しないといけない。シグナルが現れたとき、何かに気を取られると危険だって話だよ。」

「どういう意味?」とまゆみは聞いた。

「具体的には分からないんだ。ただ、シグナルが現れる瞬間、何かを触ったり、物音を立てたりすると、予期せぬことが起こるらしい。」

二人は階段を上り、最上階に近づくにつれて、空気が冷たくなっていくのを感じた。深夜12時が近づくと、まゆみの心臓は高鳴り始め、ケンジの手のひらも汗ばんでいた。

最上階に到着すると、ケンジは一つのドアの前で立ち止まった。「ここだよ。伝説によれば、このドアの前で待つことになっている。」

まゆみはドアの前に立ち、心の中で少しでも怖さを和らげようと深呼吸した。ケンジは時計を確認しながら、「まゆみ、シグナルが現れるまで静かに待っていて。何か異変があったらすぐに教えてね。」と言った。

時計の針が12時を指した瞬間、周囲の空気が微妙に変わった。まゆみは息を呑み、ドアの向こうから聞こえてくるかすかな音に耳を澄ました。すると、突然ドアがひとりでに開き、中から赤い光が漏れてきた。

「これが…シグナル?」まゆみは驚きと興奮で声を震わせた。

ケンジがゆっくりとドアを押し開けると、その向こうには古いダンスホールが広がっていた。照明は淡い赤色に染まり、壁には様々なモチーフが描かれている。床には鏡のような表面があり、その上に浮かぶ幻想的なシグナルが見えた。まゆみはその光景に見入っていたが、何かが変わり始める予感がした。

突然、まゆみの目の前に一つの光の玉が現れ、その光が彼女の体を包み込んだ。彼女の身体が少しずつ浮き上がり、周囲の景色が歪んでいく。

「まゆみ!」ケンジが叫んだが、その声は遠くから聞こえるようだった。まゆみは感覚が麻痺し、ただ光の中で漂っているだけだった。

そして、まゆみは突然、異次元のような場所に立っていた。そこには、彼女の周囲に無数のシグナルが浮かんでおり、それぞれが異なる色合いで輝いていた。光の中に浮かぶそれらのシグナルは、まるで彼女の内面に潜む欲望や感情を映し出しているかのようだった。

その時、まゆみはある声が耳に届いた。「この場所は、君の心の奥底にある秘密や欲望を試す場所だ。ここでの体験を通じて、自分自身を見つめ直すことになるだろう。」

まゆみはその言葉に思わず涙がこぼれた。彼女は自分の内面に向き合い、何が本当に大切なのかを考える時間を持つことになった。その光景は、決して忘れられない体験となり、彼女の人生に深い影響を与えることになるだろうと感じた。

やがて、彼女は現実に戻り、ケンジと共にビルを後にした。ケンジは心配そうに彼女を見守りながら、「どうだった?何か感じた?」と尋ねた。

まゆみは微笑みながら、心の中の変化を感じ取りつつ、「言葉では言い表せないけれど、確かに何かを学んだ気がする」と答えた。

二人はそのままビルを後にし、夜の街を歩きながら、あの夜の体験がもたらした深い意味について語り合った。都市伝説「禁断のシグナル」は、単なる噂ではなく、自分の内面を見つめるための強力なきっかけだったのだ。




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