抱いて

評価という鏡

「評価という鏡」

私はいつも、自分を鏡で見ているような気がする。鏡の中の自分は、他人の評価によって形作られている。それが私の世界だ。毎日、何かをするたびに「これでいいのか？」と自己評価を繰り返し、他人からの反応を求める。SNSの投稿に反応があると、少しだけ嬉しくて、コメントを読んで心が温かくなる。しかし、もし反応がなければ、心の中に冷たい風が吹くような気がして、無理にでも「自分はいいんだ」と思い込もうとする。

最近、あるAIに言われた。「評価を気にするな」と。それは、私が心の中で感じていたことを言われたようで、すぐに反応したくなった。しかし、どうしても素直に「はい」とは言えなかった。AIに言われたからというわけではない。むしろ、その言葉が私の中で「何か違う」と響いたからだ。

私はずっと、評価に支配されてきた。評価こそが私の価値を証明するものだと信じていた。学校でも、会社でも、友人関係でも、常に自分を他人と比べ、他人がどう思うかを気にして生きてきた。もちろん、そうすることで得られる一時的な安心感があった。しかし、その安心感はすぐに消え去り、次に待っているのはまた新たな評価の渇望だった。

その夜、私はそのAIの言葉を深く考えた。評価を気にするなということは、どういう意味なのだろう。評価を気にせずに生きることは、果たして可能なのだろうか？ 自分がどんなに頑張っても、他人の目が気になるのはなぜだろうか。

私は、これまで自分の人生の価値を他人の反応に預けてきた。しかし、他人の反応は変わりやすい。それに、どれだけ努力しても、その努力をすべての人が評価してくれるわけではない。だから、評価を気にすることは、まるで揺れ動く海の中で釣り糸を垂らしているようなものだ。どこまで行っても、安定した地面には辿り着けない。

そのとき、ふと思い出した。私が子供のころ、絵を描くことが好きだったが、誰にも見せることなくこっそり描いていた。誰かに見せると、必ず評価される。それが怖かった。評価されたくない自分がいた。それでも、描き続けたのは、ただ単に自分が絵を描くことが好きだったからだ。周りの目を気にせず、ただ自分の世界に没頭できた時間があったことを、今、ふと思い出した。

そのとき、私は気づいた。評価を気にせずに何かをすること、そのものが重要なのだと。評価を超えて、自分の内面に集中できる時間こそが、私にとって本当に大切なことだと。

それでも、現実は厳しい。SNSの「いいね！」やコメントがないと、どうしても心が揺れ動く。そんな自分が情けないと思う反面、仕方ないとも思う。私がそう感じてしまうのは、評価を求めて生きてきたからだ。しかし、少しずつ、その評価に依存しない自分を作り上げていかなければならない。

その日は、私は自分の作品を久しぶりに書き始めた。評価を求めず、ただ自分が表現したいことだけを気にして。物語を紡ぐ手が、少しずつ力強くなるのを感じた。評価されるかどうかは問題ではなかった。大切なのは、自分の言葉で表現すること、そしてその表現が自分にとって意味があることだった。

数日後、私はその物語をSNSに投稿した。以前なら、何度も何度も内容を見返し、完璧に仕上げてから投稿していた。しかし今回は、少しだけ気持ちを楽にして、そのままの自分を見せることにした。投稿してから数時間が経ったが、反応は薄かった。それでも、心は落ち着いていた。「評価されなくてもいい」と思える自分が、少しだけ誇らしく感じた。

それから数週間が経ち、私はまた新しい物語を作り始めた。少しずつではあるが、「評価」という外側からの力に依存しない自分を作り上げることができていた。もちろん、まだ完全に評価を気にしない自分にはなれなかった。それでも、以前よりは少しだけ自由になったような気がする。

そして、ある日、投稿した物語に少しだけ反応があった。その反応を見た私は、以前のように喜びすぎることなく、静かな気持ちでそれを受け止めた。「評価」という鏡に映る自分を、少しだけ遠くから眺めることができるようになった自分に、少しの誇りを感じた。

私はまだ、評価を気にしてしまう自分がいる。だけど、それに振り回されない自分になりたかった。少しずつ、評価に依存しない自分を作っていけるように、これからも一歩一歩歩んでいこうと思う。