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春秋花壇

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どんだけー

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「どんだけー」

アヤはソファに腰をかけ、スマホの画面をじっと見つめていた。X(旧Twitter)のフィードをスクロールする指の動きは無意識のうちに速くなり、目に入るのは、流れてくる無数のポストと「👍」マークばかりだった。

「またか…」

彼女は軽くため息をつき、手のひらでスマホを回転させる。目の前に表示されているのは、フォロワーたちのポストだ。たくさんの「👍」や「リツイート」、時折見かける心温まるコメント。だが、彼女はどれも深く考えずに流してしまう。すべてが同じように見え、無意識のうちに自分の「いいね」を押すだけで、心からその投稿に触れたわけではなかった。

ふと、彼女の心に疑問が湧いた。

「私、本当に誰かに関心を持てているのかな?」

アヤはその思考に浸ることなく、次のポストに手を滑らせた。スクリーンに映るのは友達の投稿。最近見かける、カフェで過ごす幸せそうな写真。その下には、「いいね!」が並んでいる。

「こんな風に、自分だけがどんどん流れていく日々の中で、誰かと繋がっている気がしているのかな。」

だが、心のどこかでアヤは感じていた。関心を示せない自分が、どこかで虚しさを感じていることに。彼女が受け取る「👍」は、まるで自分の存在を証明するかのように感じられる。でも、他人のポストには目を向けず、自己満足の「いいね」を押すだけで、どこか満たされない気持ちが残っていた。

「どうして、私はこうなんだろう。」

それでも、アヤは次のポストに手を伸ばし、指先で画面をスワイプした。「どんだけー」と、彼女は心の中で思った。まるで、ネットの世界が一瞬で目の前に広がり、誰もが自分を求めているような錯覚に陥る。でもその実、彼女が関わるのは、目の前の画面だけであり、本当に誰かと深く繋がっているわけではなかった。

「もっと愛して…なんて思っても、どうしてこんなにも心が空っぽなんだろう。」

アヤはふと、これまで自分がどれだけ自分本位で過ごしてきたのかを考えた。いつも、自分が受け取ることばかりを求め、他の人にどれだけ心を開いてきたのか、その事実に気づかなかった。愛されることを求めては、無意識に相手には何も返さず、ただ反応を求めていただけだった。

「私、どうしてこんなにも他の人を大切にできなかったんだろう。」

スマホを置くと、アヤはそのまま目を閉じた。頭の中で浮かぶのは、いつも与えられる「いいね」と、見知らぬ人々からの反応。だが、それだけでは満たされることはない。どこかで、何かが足りない。それは、他人への本当の関心であり、心からの思いやりだった。

「もっと愛して、って、何を求めてるんだろう。」

彼女はその問いに答えることができなかった。それでも、心の中に芽生えた小さな変化に気づいた。次に何かを投稿するとき、今度は誰かのことを少しでも気にかけてみようと思った。自分のポストをするだけでなく、相手の気持ちに寄り添うこと。それが今のアヤにできることだった。

アヤは画面を再び開き、何気なく流れてきたポストに目を留めた。そこには、誰かが愛犬との散歩の写真を投稿していた。その投稿には、数人の「👍」とともに、「本当にかわいい!」というコメントが並んでいる。

アヤはそのコメントを見て、ふと思った。もし自分がその人に「本当にかわいいね」と、心からの言葉を送ったら、どんな気持ちになるのだろうか。今まで、自分が与えることなく、ただ反応を求めていたことを思い返し、少しだけ恥ずかしくなった。

「もっと愛して…でも、まずは自分から与えないと。」

その瞬間、アヤは心の中で小さな決意を固めた。他人のポストに反応するだけでなく、自分からも心を込めて言葉を送ろう。そして、その言葉が相手の心に少しでも温かさを届けることができるなら、それが一番の幸せだと感じた。

スマホを手に取ったアヤは、誰かのポストにコメントを入力した。

「本当にかわいいね!いつも素敵な写真をありがとう。」

その瞬間、アヤの心に少しだけ温かい気持ちが広がった。それが、最初の一歩であり、今後の自分を変えていくための小さなスタートだった。

「どんだけー」と自嘲していた自分が、少しずつ変わり始める。ほんの少しの心の変化が、少しずつ大きな違いを生み出していくのかもしれないと思いながら、アヤは再びスマホを手に取った。






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