抱いて

未読9999

「未読9999」

「未読9999」

画面に表示されたその文字を見つめながら、私は深いため息をつく。メールボックスの数字は、私の目を痛める。視界の中でそれが大きく、そしてどこかで冷たい印象を与えてくる。それはただの数字の羅列ではない。私にとって、それは重荷のようなものだった。

未読メールが溜まる一方、私は何度もそれらを開かずに閉じた。なぜか、開こうという気力が湧いてこない。返事をしなければならないというプレッシャー、受け取ったメッセージの内容を理解する自信のなさ、そして何より、メールという手段そのものに対する恐れがあった。

画面に映る未読の数は、まるで私の障害を象徴しているようだった。それがあまりにも大きくて、時折心の中で「この数字が消えたら、何かが変わるんだろうか」と考えることもあったけれど、結局その数字は増え続けるだけで、何も変わらなかった。

私はADHD（注意欠陥・多動性障害）と識字障害を抱えている。物事を順番に整理することができなかったり、長い文章を読んで理解するのが難しかったりする。それが日常生活に大きな影響を与えている。学校の勉強や仕事では何度も壁にぶつかり、自分が周りにどう思われているのか、考えるだけで不安になる。

でも、今日、初めてその未読の数字をじっと見つめたとき、ふと気づいたことがある。それは、このメールボックスの中にあるのは、単なる「未読」の数ではなく、私の「障害」そのものだということだった。それは、私の限界を示すものではなく、私のありのままを示すものなのだと。

私がメールを一度に開けないのは、目の前に並べられた文字がどこから手をつけていいのか分からないからだ。ひとつひとつ、意味を掴んでいくのに時間がかかる。目の前に無限に広がるメッセージを前にして、どうしても力が抜けてしまう。時間の感覚も、どんどん失われていく。それが私にとっては「普通」のことだった。

でも、ある瞬間に気づいた。これが私なんだ、と。

未読の数が増え続けるのを見ていると、心のどこかで、押し寄せる焦燥感が生まれる。それを感じるたびに、また一つ心が萎んでいくのだと思う。でも、それを無理に消そうとすることに意味はないのだ。これが私の現実。これが私のありのままであり、そして、それを受け入れなければ、何も前に進まないのだということに気づいた。

「未読9999」と表示された数字をもう一度見る。

それは、私の人生の一部だと思うようにした。すべてを整理することができなくてもいい。すべてのメールに即座に対応できなくても、それは私のペースで生きている証なのだ。焦ることはない。もっと自分に優しくなってもいいんだ。

思えば、私はずっと自分を責め続けていた。周りと同じペースでできない自分を、どこかで恥じていた。できないことをできるようにしなければ、ならないと思い込んでいた。でも、それはただの社会の基準に縛られた考え方だった。

私は私のままでいいのだ、と。

「未読9999」——それが私のメールボックス。誰かが送ったメッセージを受け止めるのには時間がかかるし、時には受け取らずに放置してしまうことだってある。でも、それも私の生き方の一部。これを私の障害だとは思わない。むしろ、それが私を形作っている大切な部分だと、今は理解できる。

メールを開くことができたら、それでいい。開けなかったら、それも私のペースだ。

どんなに未読の数が増えていこうと、それが私を定義するものではない。私は私のままでいい。そして、それを受け入れて、前に進んでいこうと思う。ゆっくり、焦らず、私のペースで。