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作品が消えてしまった夜
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作品が消えてしまった夜
「いつもお世話になっております。」
私は、手元のスマートフォンにそう書き始めた。画面には、アルファポリス運営の問い合わせフォームが表示されている。
深夜の静けさが部屋を包む中、打ち込む手はどこか震えていた。
「私の婚約者様は王女殿下の騎士をしている」――自分の作品のタイトル。ここ数か月、一生懸命書き続けてきた物語だ。更新するたびに少しずつ読者が増え、応援コメントも増えていった。そのたびに、私は確かに誰かと繋がっている実感を得た。
だが、今、そのページがどこにも見当たらない。アルファポリスのマイページを何度更新しても、作品一覧から消えてしまっているのだ。
「これは……不具合だよね?」
自分に言い聞かせるように呟いた。しかし、心のどこかでは違う可能性が頭をよぎる。もしかして、何か規約違反をしてしまったのではないか。だが、心当たりはない。それでも、不安が胸を締めつけてくる。
問い合わせフォームに再び視線を戻し、続けて文章を入力する。
「作品URL:https://www.alphapolis.co.jp/novel/577614093/576921735 が消えてしまったのですが、不具合ですか? 調べていただけたら嬉しいです。」
書き終えた文章を何度も見直し、言葉が足りないのではないかと考える。しかし、どれだけ直しても、この状況に合った完璧な言葉が見つからない。ただ、私の中にあるのは、必死な気持ちだけだった。
送信ボタンを押すと、スマートフォンを机に置き、椅子にもたれかかった。
「お願い……本当にただの不具合であってほしい。」
そう祈るように呟いた。
過去のことが頭をよぎる。5年前、小説家になろうで一度、自分の作品が削除される経験をした。そのときも規約違反が原因だったが、気づいたときにはすべてが手遅れだった。今度こそ、同じ過ちは繰り返したくないと誓っていたのに。
ふと、机の隅に置かれた一冊のノートが目に入った。それは、今回の作品を書き始める前にアイデアをまとめていたものだ。ページをめくると、そこには今の気持ちを思い出させる一文があった。
「どんな困難があっても、物語を書くことをやめない。」
そうだ。物語を書くことが、私にとって唯一の生きる意味だった。たとえ結果がどうなろうとも、この想いだけは誰にも奪えない。もしこの作品が戻ってこなくても、新しい物語を生み出すことはできる。
そのとき、スマートフォンが振動した。運営からの返信かと思い、慌てて画面を確認する。だが、そこに表示されていたのは読者からのメッセージだった。
「更新楽しみにしています!お体には気をつけてくださいね。」
その一文に涙が滲んだ。たとえ一人でも、自分の作品を待ってくれる人がいる。その事実だけで、私はもう一度立ち上がれる気がした。
「よし……もう少し頑張ろう。」
消えた作品の行方がどうなるかは分からない。でも、私の物語は、まだ終わりじゃない。そう信じて、明日の一歩を踏み出すことにした。
「いつもお世話になっております。」
私は、手元のスマートフォンにそう書き始めた。画面には、アルファポリス運営の問い合わせフォームが表示されている。
深夜の静けさが部屋を包む中、打ち込む手はどこか震えていた。
「私の婚約者様は王女殿下の騎士をしている」――自分の作品のタイトル。ここ数か月、一生懸命書き続けてきた物語だ。更新するたびに少しずつ読者が増え、応援コメントも増えていった。そのたびに、私は確かに誰かと繋がっている実感を得た。
だが、今、そのページがどこにも見当たらない。アルファポリスのマイページを何度更新しても、作品一覧から消えてしまっているのだ。
「これは……不具合だよね?」
自分に言い聞かせるように呟いた。しかし、心のどこかでは違う可能性が頭をよぎる。もしかして、何か規約違反をしてしまったのではないか。だが、心当たりはない。それでも、不安が胸を締めつけてくる。
問い合わせフォームに再び視線を戻し、続けて文章を入力する。
「作品URL:https://www.alphapolis.co.jp/novel/577614093/576921735 が消えてしまったのですが、不具合ですか? 調べていただけたら嬉しいです。」
書き終えた文章を何度も見直し、言葉が足りないのではないかと考える。しかし、どれだけ直しても、この状況に合った完璧な言葉が見つからない。ただ、私の中にあるのは、必死な気持ちだけだった。
送信ボタンを押すと、スマートフォンを机に置き、椅子にもたれかかった。
「お願い……本当にただの不具合であってほしい。」
そう祈るように呟いた。
過去のことが頭をよぎる。5年前、小説家になろうで一度、自分の作品が削除される経験をした。そのときも規約違反が原因だったが、気づいたときにはすべてが手遅れだった。今度こそ、同じ過ちは繰り返したくないと誓っていたのに。
ふと、机の隅に置かれた一冊のノートが目に入った。それは、今回の作品を書き始める前にアイデアをまとめていたものだ。ページをめくると、そこには今の気持ちを思い出させる一文があった。
「どんな困難があっても、物語を書くことをやめない。」
そうだ。物語を書くことが、私にとって唯一の生きる意味だった。たとえ結果がどうなろうとも、この想いだけは誰にも奪えない。もしこの作品が戻ってこなくても、新しい物語を生み出すことはできる。
そのとき、スマートフォンが振動した。運営からの返信かと思い、慌てて画面を確認する。だが、そこに表示されていたのは読者からのメッセージだった。
「更新楽しみにしています!お体には気をつけてくださいね。」
その一文に涙が滲んだ。たとえ一人でも、自分の作品を待ってくれる人がいる。その事実だけで、私はもう一度立ち上がれる気がした。
「よし……もう少し頑張ろう。」
消えた作品の行方がどうなるかは分からない。でも、私の物語は、まだ終わりじゃない。そう信じて、明日の一歩を踏み出すことにした。
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