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春秋花壇

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小さな幸せの積み重ね

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「小さな幸せの積み重ね」

サクラは、スーパーの入り口で一瞬足を止めた。冷たい空気が肌を刺し、冷蔵庫の前を通ると、思わずその冷たい風に身を縮めた。それでも、目の前に広がる商品の棚を見つめると、何もかもが手に取られそうになる。必要なものをリストに書いてきたのに、心の中ではあれもこれもと欲しくなってしまう。紙に書いてきた「お米、ポン酢、野菜…」それらの品を確認して、サクラは目を閉じる。

「お願いです、力を貸してください。」

サクラはそっと心の中で呟いた。いつもなら、もう一度リストを見直し、他の物を買わないように心を決めるのだが、今日はそれがどうしてもできない。毎月の支払い、家族の入院費、生活費、すべてが彼女の背中に重くのしかかっていた。金銭面での不安は毎日彼女を脅かしていた。心の中では、何度も自分を責めた。

「どうして私だけがこんなに…」

彼女は、無意識にため息をつきながら、買い物かごを押し始めた。いつものように、足取りは重く、リストに従うことすらできないような気がしてきた。しかし、それでもリストを無視して買ってしまうことは、もうやめなければならないと思っている。スーパーの広い通路の先には、無数の商品が並んでいる。そのすべてが手に取られて、財布の中の金額をすぐに空にしてしまう。

サクラは思い切って、心を落ち着けようとした。集会のことを思い出す。毎週、彼女はクリスチャンの集会に参加していた。ZOOMで繋がるその場では、祈りと感謝の時間が待っている。困った時だけ神様に頼るのは、確かに申し訳ないことだ。でも、今はどうしても手を貸してほしかった。彼女は祈るように心の中で言葉を紡いだ。

「神様、助けてください。」

その瞬間、ふと視線を上げると、サクラの目に映ったのは、棚の上に並んだ赤いリンゴだった。まるで彼女を呼んでいるかのように、その鮮やかな色が目に飛び込んできた。サクラは思わずそのリンゴを手に取る。その瞬間、何かが心の中で変わったように感じた。

「これも…大切なことなんだ。」

サクラはゆっくりとそのリンゴをかごに入れながら、思った。小さなことでも、何かを大切にすることが、自分の心を少しずつ癒してくれると感じたのだ。スーパーの中にいるとき、サクラは他の商品の誘惑に負けそうになることが多い。でも今、このリンゴを手にした瞬間、少しだけ自分を信じる気持ちが戻った。

「よし、買い物を終わらせよう。」

サクラは再びリストに目を通す。そして、必要なものだけを購入し、レジに向かうことを決めた。買い物を終えたサクラは、何もかもが簡単にうまくいくわけではないと分かっている。でも、今は少しだけ自分を許すことができた。そして、これから先、何があっても自分を責めないようにしようと思った。

帰り道、サクラは小さく呟いた。「ありがとう、神様。」

家に帰ると、彼女はキッチンに立ち、リンゴを使って簡単なデザートを作った。子供たちが帰る前に、温かいお茶と一緒に、心を込めて作ったものをテーブルに並べる。サクラはその瞬間、静かに思った。

「小さなことが、こんなに大切なんだ。」

スーパーでの一瞬、一つのリンゴを手に取ったことが、彼女にとっては大きな意味を持っていた。それは、ただの買い物の一部ではなく、彼女が自分を信じ、前に進む力を見つけた瞬間だった。小さな喜びや希望を見つけ、それを誰かに伝えたり、物語にしたりすることで、自分の心を少しずつ豊かにしていく。その積み重ねが、やがて大きな喜びに変わっていくのだとサクラは信じていた。

「私は私を見捨てない。」サクラは静かにその言葉を心の中で繰り返す。生きていく中で、苦しいことも、悲しいこともあるけれど、希望を持ち続け、笑顔を忘れずにいようと誓った。

そして、彼女はテーブルに座り、子供たちの帰りを待ちながら、小さな幸せを感じていた。







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