125 / 251
徒然草 第百二十一段
しおりを挟む
徒然草 第百二十一段
原文
養ひ飼ふものには、馬・牛。
繋ぎ苦しむるこそいたましけれど、なくてかなはぬものなれば、いかがはせん。
犬は、守り防くつとめ、人にもまさりたれば、必ずあるべし。
されど、家ごとにあるものなれば、ことさらに求め飼はずともありなん。
その外の鳥、獣、すべて用なきものなり。
走る獣は、檻にこめ、鎖をさされ、飛ぶ鳥はつばさを切り、籠(こ)に入れられて、雲を恋ひ、野山を思ふ愁へ、止む時なし。
その思ひ、わが身にあたりて忍びがたくは、心あらん人、これを楽しまんや。
生(しやう)を苦しめて目を喜ばしむるは、桀・紂(けつ・ちう)が心なり。
王子猷(わうしいう)が鳥を愛せし、林に楽しぶを見て、逍遥(せうえう)の友としき。
捕へ苦しめたるにあらず。
「およそ、珍しき禽(とり)、あやしき獣、国に育(やしな)はず」
とこそ、文にも侍るなれ。
現代語訳
ペットとして飼うべき動物と言えば、牛と馬である。
牛や馬を繋ぎ苦しめるのは忍びないことだが、牛や馬は私たちの生活に欠かせないものであるから、仕方がない。
犬は、家を守る仕事において人よりも優れているので、必ず飼うべきである。
しかし、犬はどの家にもいるものなので、わざわざ求めて飼う必要はないだろう。
それ以外の鳥や獣は、すべて私たちの生活に必要のないものである。
走る獣は檻に閉じ込められ、鎖につながれ、飛ぶ鳥は翼の腱を切られ、籠に入れられて、自由に飛べる空の雲を恋い、思うままに駆け巡った野や山を思い、常に憂愁に沈んでいる。
その動物たちの思いを、自分の身に置き換えて考えると、心が痛むほど辛い。心ある人が、そのような動物たちの自由を奪って、それを楽しむことができるだろうか。
生き物を苦しめて目を喜ばせるのは、暴君として知られる桀王や紂王のような心である。
王子猷という人が鳥を愛していた方法は、鳥たちが林の中で楽しそうにしているのを、散歩の友としたのである。
捕まえて、籠に入れて苦しめたのではない。
「およそ、珍しい鳥や、見慣れない獣は、国で養うべきではない」
と、書経にも書かれている。
ポイント
野生動物をペットとして飼うことは残酷であり、不要である。
檻に入れられた動物は自由を奪われ、苦しんでいる。
動物に苦しみを与えて自分の楽しみとするのは、暴君と同じ心である。
王子猷のように、動物を自然な姿で愛でることが大切である。
珍しい動物や外来種をペットとして飼うべきではない。
解説
この段では、著者は野生動物をペットとして飼うことを批判しています。著者は、動物を檻に入れ、自由を奪うことは残酷であり、そのような動物たちの苦しみを自分の楽しみとするのは暴君と同じ心であると主張しています。
著者は、牛や馬などの家畜は生活に必要不可欠なものであるため、飼うことは仕方ないとしています。しかし、犬以外のペットは必要ないと考え、特に鳥や獣を捕まえて籠に入れることを強く批判しています。
王子猷という人物の鳥を愛する方法は、著者の理想とする動物との関わり方として紹介されています。王子猷は、鳥を捕まえて籠に入れるのではなく、林の中で自由に飛び回る鳥たちを眺め、その姿を楽しんでいたのです。
この段は、動物福祉の重要性を訴える内容となっています。現代においても、ペットショップで販売される動物の中には、劣悪な環境で飼育されたものも多くいます。動物を飼う際には、その動物たちの幸せを第一に考え、責任を持って飼育することが大切です。
原文
養ひ飼ふものには、馬・牛。
繋ぎ苦しむるこそいたましけれど、なくてかなはぬものなれば、いかがはせん。
犬は、守り防くつとめ、人にもまさりたれば、必ずあるべし。
されど、家ごとにあるものなれば、ことさらに求め飼はずともありなん。
その外の鳥、獣、すべて用なきものなり。
走る獣は、檻にこめ、鎖をさされ、飛ぶ鳥はつばさを切り、籠(こ)に入れられて、雲を恋ひ、野山を思ふ愁へ、止む時なし。
その思ひ、わが身にあたりて忍びがたくは、心あらん人、これを楽しまんや。
生(しやう)を苦しめて目を喜ばしむるは、桀・紂(けつ・ちう)が心なり。
王子猷(わうしいう)が鳥を愛せし、林に楽しぶを見て、逍遥(せうえう)の友としき。
捕へ苦しめたるにあらず。
「およそ、珍しき禽(とり)、あやしき獣、国に育(やしな)はず」
とこそ、文にも侍るなれ。
現代語訳
ペットとして飼うべき動物と言えば、牛と馬である。
牛や馬を繋ぎ苦しめるのは忍びないことだが、牛や馬は私たちの生活に欠かせないものであるから、仕方がない。
犬は、家を守る仕事において人よりも優れているので、必ず飼うべきである。
しかし、犬はどの家にもいるものなので、わざわざ求めて飼う必要はないだろう。
それ以外の鳥や獣は、すべて私たちの生活に必要のないものである。
走る獣は檻に閉じ込められ、鎖につながれ、飛ぶ鳥は翼の腱を切られ、籠に入れられて、自由に飛べる空の雲を恋い、思うままに駆け巡った野や山を思い、常に憂愁に沈んでいる。
その動物たちの思いを、自分の身に置き換えて考えると、心が痛むほど辛い。心ある人が、そのような動物たちの自由を奪って、それを楽しむことができるだろうか。
生き物を苦しめて目を喜ばせるのは、暴君として知られる桀王や紂王のような心である。
王子猷という人が鳥を愛していた方法は、鳥たちが林の中で楽しそうにしているのを、散歩の友としたのである。
捕まえて、籠に入れて苦しめたのではない。
「およそ、珍しい鳥や、見慣れない獣は、国で養うべきではない」
と、書経にも書かれている。
ポイント
野生動物をペットとして飼うことは残酷であり、不要である。
檻に入れられた動物は自由を奪われ、苦しんでいる。
動物に苦しみを与えて自分の楽しみとするのは、暴君と同じ心である。
王子猷のように、動物を自然な姿で愛でることが大切である。
珍しい動物や外来種をペットとして飼うべきではない。
解説
この段では、著者は野生動物をペットとして飼うことを批判しています。著者は、動物を檻に入れ、自由を奪うことは残酷であり、そのような動物たちの苦しみを自分の楽しみとするのは暴君と同じ心であると主張しています。
著者は、牛や馬などの家畜は生活に必要不可欠なものであるため、飼うことは仕方ないとしています。しかし、犬以外のペットは必要ないと考え、特に鳥や獣を捕まえて籠に入れることを強く批判しています。
王子猷という人物の鳥を愛する方法は、著者の理想とする動物との関わり方として紹介されています。王子猷は、鳥を捕まえて籠に入れるのではなく、林の中で自由に飛び回る鳥たちを眺め、その姿を楽しんでいたのです。
この段は、動物福祉の重要性を訴える内容となっています。現代においても、ペットショップで販売される動物の中には、劣悪な環境で飼育されたものも多くいます。動物を飼う際には、その動物たちの幸せを第一に考え、責任を持って飼育することが大切です。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる