徒然草

徒然草 第三十八段：解説と考察

徒然草 第三十八段：解説と考察
原文

名利に使はれて、閑かなる暇なく、一生を苦しむるこそ、愚かなれ。財多ければ、身を守るにまどし。害を賈ひ、累ひを招く媒なり。身の後には、金をして北斗を拄ふとも、人のためにぞわづらはるべき。まことの人は、智もなく、徳もなく、功もなく、名もなし。誰か知り、誰か伝へん。これ、徳を隠し、愚を守るにはあらず。本より、賢愚・得失の境にをらざればなり。迷ひの心をもちて名利の要を求むるに、かくの如し。

現代語訳

名声や利益に振り回されて、ゆっくりと過ごす時間もなく、一生を苦しむのは愚かなことだ。財産が多いと、身を守るために煩わされる。害を招き、災いを招く元凶となる。死んだ後には、金で北極星を支えても、人のために苦労するだけだ。真の優れた人は、知性も徳も功績も名声もない。誰が知り、誰が伝えよう。これは、徳を隠し、愚かさを守るためではない。そもそも、賢愚や得失の区別がないからである。迷いの心を持って、名利の頂点を求めるから、こうなるのだ。

解釈

この段落で、兼好法師は、名利を求めることの愚かさを説いています。彼は、名利に執着することで、人は真の幸福や充実感を得ることができず、かえって苦しみや悩みを増やすだけだと考えています。

ポイント

名利の虚しさ: 兼好法師は、名利は一時的なものであり、真の価値を持たないと考えています。人は名利に惑わされ、本来の自分を見失ってしまうことがあるのです。
心の平安の大切さ: 兼好法師にとって、真の幸福とは、心の平安にあるとされています。名利にとらわれず、ありのままの自分を受け入れることが大切なのです。
自然体であることの重要性: 兼好法師は、無理に飾ったり、虚飾を張ったりすることよりも、自然体でいることが大切であると考えています。それは、自分自身と真正に向き合い、真の価値を見出すためでもあるのです。
考察

この段落は、現代社会にも通じる普遍的なメッセージを持っていると思います。現代社会では、物質的な豊かさや社会的な成功が重視される傾向があります。しかし、真の幸福は、外側ではなく、内側にあることを忘れてはなりません。

現代への示唆

名利に惑わされず、自分の心に正直に生きましょう。
物質的な豊かさよりも、心の平安を大切にしましょう。
ありのままの自分を受け入れ、自然体で生きましょう。
まとめ

徒然草 第三十八段は、名利を求めることの愚かさを説き、心の平安の大切さを訴えた内容です。現代社会においても、このメッセージを忘れずに、自分自身と向き合い、真の幸福を追求していきたいものです。