婚約破棄 能力が低いとののしられたので本気でざまぁします

カトリーヌの決意

カトリーヌの決意

「お前の魔力が、ステータス画面を見ても明らかに見劣りするからだ。これでは、来るべき戦乱の世で、共に王国を守ることは不可能だと判断した。」

ベルナール・ド・ヴァロワ第4皇子の冷徹な言葉が、カトリーヌの脳裏を何度もかけめぐる。婚約破棄されたあの日、その言葉が彼女を深く傷つけたことは言うまでもない。ステータス画面に表示された魔力の数値、それだけで全てを決めつけられた。その数値が、彼女の全てを決定するのだと信じられた。

だが、その数値に囚われることが、果たして本当に正しいのだろうか？

カトリーヌは目を閉じると、思い出すのは、庭に咲いていたビオラの花だった。強い雨風が吹き荒れる日々が続き、ビオラは何度も倒れそうになった。それでも、しっかりと根を張り、葉を広げ、花を咲かせる。その姿に、カトリーヌは何度も励まされてきた。

私も、あのビオラのように強くなれるだろうか。

その夜、カトリーヌは一人、庭でビオラの鉢を見つめながら心の中で誓った。魔力の数値で決まるものだけが全てではないと、心の中で強く思った。自分には、まだ見ぬ力があるはずだ。そしてその力を、何かに役立てたいと強く願った。

翌日、カトリーヌは両親にお願いすることを決意した。魔力が低いことに悩んでいたが、それだけではない。自分が何かを成し遂げるためには、まず自分自身の限界を知り、その上でどうすべきかを学ばなければならないと感じた。無力なままでいることが一番怖いことだと、彼女は思い始めていた。

「お願い、お父様、お母様。私は冒険者ギルドに登録したい。」

父親は少し驚いたように目を見開き、母親も黙って考え込んだ。カトリーヌの心臓はドキドキと早鐘のように響く。だが、彼女の決意は揺るがなかった。自分には何ができ、何ができないのか、知りたかった。

「カトリーヌ、君が本気でそう思っているなら、私たちも考えよう。」父親が静かに言った。母親も何か言いたげな表情だったが、最終的には頷いた。

「でも、気をつけなさい。冒険の世界は甘くない。実力も、精神力も必要だ。」母親が注意深く言った。

カトリーヌはその言葉を胸に刻みながらも、心は決まっていた。冒険者としての経験を通じて、自分の力を試し、他者と共に戦い、成長していくのだ。今までの自分にできなかったことを、できるようになりたかった。

ギルドに登録するための準備が整い、カトリーヌはその日を迎えた。大きな扉を開けると、冒険者たちが集まる活気あふれる空間が広がっていた。ギルドのスタッフに案内され、カトリーヌは登録を済ませた。登録の際、彼女は自分のステータス画面を見てもらったが、その魔力の数値はやはり他の冒険者たちと比べると低かった。

「でも、これはただの数字に過ぎない。」彼女は心の中で呟いた。数値では計りきれない自分の力を証明したい。自分にしかできないことを、見つけ出したい。

最初の依頼は、近くの森で迷子になった子供を探し出すというものだった。魔力が低い自分でもできることだと考え、カトリーヌは意気込んで出発した。森の中を歩くと、足元に落ち葉が積もり、風が木々を揺らす音が響いていた。

途中、カトリーヌは道に迷いそうになりながらも、冷静に周囲の地形を観察し、迷子の子供の足跡を見つけることができた。その足跡を辿っていくと、やがて小さな子供が木の根元で震えているのを見つけた。

「大丈夫、怖くないよ。」カトリーヌは優しく声をかけ、子供を抱きしめた。その瞬間、彼女の心に温かい感情が溢れた。これは魔力ではない。純粋に他者を思いやる心、それが一番大切なのだと、カトリーヌは確信した。

無事に子供を家まで送ると、ギルドに戻ったカトリーヌは、自分が思っていた以上に大きな達成感を感じていた。魔力が低い自分でも、他者を助けるためにできることがある。それが何よりも大切だと実感した。

次の冒険へと向かうカトリーヌの心は、以前よりもずっと軽く、力強く感じられた。魔力の数値が全てではない。大切なのは、どれだけ他者を思い、どれだけ自分を信じて成長できるかだ。

ビオラの花が雨風に耐えながら咲き誇るように、カトリーヌもまた、これからの人生でどんな困難にも立ち向かっていけると信じていた。