ソロモン王の愛のものがたり

ソロモンが愛した女たち

ソロモンの愛した女たち

ソロモンの愛した女たち

古代の世界には、神々と人間の間に絶え間ない戦いが繰り広げられ、王国が栄光と滅亡を繰り返していた。その中でも最も壮麗で神々が息を呑むほどの智慧を誇る王、ソロモン王が統治する王国があった。彼は、知恵を授かれた者として名高く、神々の間でもその名は轟いていた。しかし、ソロモンの知恵の裏には、数多の女性たちの存在があった。彼女たちは、神々から授かった力を持ち、王国の中でそれぞれ異なる役割を果たしていたが、その中でも最も力を持っていたのは、彼の寵姫であり、魔女であった。

その名は、エルシア。彼女は、夜の女神ヘカテーに仕える者で、月明かりの下でさえもその姿を完全に隠すことができた。エルシアは、ソロモン王の知恵をさらに強化するために、彼の心に秘密を授け、王国を影で操っていた。彼女の眼差しは鋭く、どんな敵もその前では無力だった。神々が彼女に与えた力は、単なる魔法にとどまらず、人々の心を操る力までも含んでいた。だが、エルシアには一つの約束があった。それは、王国を滅ぼすことなく、ただ一つの目的を果たすことだけだった。

一方、ソロモンの最愛の妻、リディアは、愛と美を司るアフロディーテの子であった。彼女の美しさは、神々がその姿を見守るほどで、王国のどこに行っても彼女の名は耳にした者がいた。リディアの力は、誰もが認めるほどだった。彼女の手のひらに触れるだけで、戦士たちは戦いに勝つことができ、どんな病も癒されると信じられていた。その美しさはただの外見にとどまらず、心にも深い愛を抱き、ソロモン王を心から愛していた。しかし、リディアの心には不安があった。エルシアとの間に何かがあることに気づいていたからだ。彼女は自分の地位が脅かされることを恐れ、王国を守るために動かなければならないという責任感から、毎晩王の夢に現れ、彼に警告を与えるようになった。

「ソロモン、心の中に隠された者に注意を払いなさい。」リディアは一度夢の中で彼に告げた。「あなたの知恵だけでは、すべての危険を回避できるわけではない。」

リディアの忠告は、最初はソロモンの心に留まらなかった。しかし、やがて王の中で一つの不安が芽生え、エルシアの姿が夜の王宮に現れるたびに、その不安が強くなっていった。エルシアの美しさと魅力には抗えないものがあり、ソロモンは次第に彼女に心を奪われていった。その頃、王国では災いが訪れ始め、作物は枯れ、戦士たちは次々と戦場で命を落としていった。ソロモンはその原因を解明しようとしたが、答えは見つからなかった。

その夜、王宮の中で最も豪華な部屋にて、ソロモンとエルシアがひとときを過ごしていた。エルシアは王の隣に座り、その美しい黒髪を月明かりに照らしながら静かに話し始めた。

「あなたの知恵は素晴らしい。しかし、知恵だけではすべての問題を解決することはできない。私の力を借りるべきではないかしら？」

ソロモンはその言葉に心を動かされつつあった。エルシアの力がどれほど強大であるかを理解していたからこそ、彼は迷った。リディアとの結びつきが深ければ深いほど、エルシアの言葉に従うことが罪であると感じていた。

「だが、リディアがいる。彼女は私のすべてを捧げてくれている。」ソロモンは胸の内で苦しんでいた。

その時、エルシアは静かに笑いながら言った。「リディアの愛は美しいが、あなたの知恵を永遠に保つためには、私の力が必要なのです。もしあなたが私の力を借りれば、王国は再び栄光を取り戻すでしょう。」

その言葉がソロモンの心に深く根付いた。彼は遂にエルシアの力を求め、二人は契約を結んだ。だが、その代償は思いもよらないものだった。

翌朝、王国は変わり果てていた。エルシアの魔力が世界を覆い尽くし、王国は一時の栄光を迎えた。しかし、その力が与えた影響は、王国だけでなく、ソロモン自身の魂にも深く刻まれていた。リディアの予感は的中していた。王国は短命な栄光に包まれ、ソロモンの心は次第に冷え、彼の知恵さえも神々の怒りを招く原因となった。

最後に、リディアはソロモンの元に歩み寄り、彼の手を取りながら静かに言った。「あなたが選んだ道が、私たちを破滅へと導いたのよ。けれど、私たちにはまだ希望が残されている。」

ソロモンはその言葉に何も答えることができなかった。ただ、彼の心には、エルシアとの契約の代償が重くのしかかっていた。神々は彼に罰を与え、王国は再び栄光を失った。そして、ソロモンの名は、後の世で「知恵の王」として語り継がれることはなく、その教訓として語られることとなった。

エルシアは姿を消し、リディアだけが王国の未来を守るために戦い続けた。