ソロモン王の愛のものがたり

春秋花壇

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ソロモンの選択

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「ソロモンの選択」

夜の帳が降りたギベオンの「大いなる高き所」。炎が燃え盛る祭壇の前にひざまずくソロモンは、1,000頭の焼燔の犠牲を捧げ終え、疲労とともに深い祈りの中にいた。王として新たな治世を迎えたばかりの彼には、国を治める重圧がのしかかっていた。若き王は自分の未熟さを自覚し、エホバに助けを求めたのだ。

その夜、彼は夢の中でエホバの声を聞いた。
「あなたに何を与えるべきか、願い求めなさい。」

ソロモンは目を閉じたまま、心の中で答えた。彼が求めたのは富でも栄光でもなく、イスラエルの民を正しく導き、裁くための知恵だった。

「偉大なるエホバよ、私は若く、まだ十分な経験を持ちません。この多くの民を裁くために、どうしても理解力のある心を必要とします。」

その謙虚な願いに、エホバは大いに喜ばれた。そしてソロモンに知恵を授けるとともに、彼が願い求めなかった富と栄光も与えると約束された。

ある日、ソロモンの前に二人の女性が現れた。彼女たちは共に売春婦であり、一つの問題を抱えて王の前に来たのだ。

「王よ、私たちは同じ家に住む者です。この女と私は同じ時期に男の子を産みました。しかし、ある夜、この女は自分の子を寝返りで窒息死させたのです。それなのに、彼女は死んだ子を私の子のように見せかけ、私の子を奪いました。」
「違います!」もう一人の女性が怒りに満ちた声で言い返した。「この女こそ嘘をついているのです!死んだ子は彼女の子、生きているのは私の子です!」

両者は互いに譲らず、激しく言い争った。部屋の中には緊張が走り、裁きを見守る家臣たちも困惑した表情を浮かべた。生きている子の本当の母親はどちらなのか、証拠はなく、誰も判断がつかなかった。

ソロモンは静かに考え、そして毅然とした声で命じた。
「剣を持ってきなさい。」

剣が彼の前に運ばれると、ソロモンは続けた。
「この子を二つに分け、それぞれの母に半分ずつ与えなさい。」

その言葉に、部屋中が凍りついた。しかし、その瞬間、一人の女性が声を上げた。
「やめてください、王よ!どうかこの子をあの女に与えてください。決して子を殺さないでください!」

もう一人の女性は冷淡な声で言った。
「いいえ、分けてください。そうすればどちらのものでもなくなります。」

ソロモンは即座に判断した。
「この子を殺してはならない。本当の母親は、最初に子の命を懇願したこの女性だ。」

王の知恵ある裁きに、全ての者が驚き、感服した。その評判は瞬く間に広まり、民の間で彼の権威が確立された。ソロモンはただの若い王ではなく、エホバから知恵を授けられた特別な存在として認識されたのだ。

その晩、ソロモンは再びエホバに祈った。
「私に知恵を授けてくださったことを感謝します。私はまだ未熟ですが、これからもエホバの御心に従い、正しく民を導いていく所存です。」

夜空を見上げると、ギベオンの「大いなる高き所」の上に輝く星々が、彼の決意を照らすように煌めいていた。






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